リングヂャケットのスーツ「286/178」と共に「ピアチェンツァ」という名門ミルの魅力をご紹介します。
素晴らしいスーツやスーツ生地はもちろん、マフラーやカシミアコートなどが気になる方必見の内容です。
こんにちは、しょる(@SHOLLWORKS)です。本日はリングヂャケットマイスター「286/178」のスーツをご紹介します。併せて、今回のスーツの生地を手掛ける「ピアツェンツァ」という、現存する世界最古のミル(毛織物メーカー)についてもお話します。
今回ご紹介するスーツに使用されているピアツェンツァの生地「サブライム」は、Super140’s相当のスーパーエクストラファインメリノウールを使用した生地。高級感と耐久性を両立させた、素晴らしいテキスタイルです。
そして、ピアツェンツァは、カシミアやウールといった毛織物のクオリティが際立つミル。メンズ・レディース問わずストールやマフラー、コートなどが日本では知られています。
ピアツェンツァは知る人ぞ知る名門ミル。まずはスーツをご紹介した後に、「ピアツェンツァについて」も解説します。
リングヂャケットのスーツ「286/178」×ピアツェンツァ「サブライム」をレビュー
今回ご紹介するのは、ピアツェンツァの「サブライム」という生地を使用したリングヂャケットマイスターのスーツ。実際に購入してみました。
定価209,000円(税込)。リングヂャケットについてはこちらで紹介させていただきましたが、本当に素晴らしい既成スーツを展開しています。
また、合わせているシャツはリングヂャケットナポリ、タイはタイユアタイのセッテピエゲ。サブライムは中厚地の生地なので、同様の特性を持つシャツやタイの生地感が調和しやすいと思います。
RING JACKET 公式HPより引用
今回ご紹介するリングヂャケットのスーツに採用されている「286」ジャケットは、「253」と並ぶマイスターラインの主力モデル。
「286」の特徴は、主に以下の3点。
- ラペルが大きく、ゴージラインが下り目
- 上襟の「殺し襟」が他のモデルより強め
- 「253」のように大胆なメリハリは抑えめなサイズ感
全体的にクラシックなディテール×無理のないシルエットでありつつ、非常に優れた首周りのフィット感が特徴です。
ピアツェンツァ「サブライム」は、Super140’sのウール100%生地
BEAMS 公式HPより引用
サブライム(sublime)とは「荘厳な」「気高い」という意味。Super140’sのウール100%生地で、目がぎゅっと詰まった&起毛感がないオールシーズン用生地。目付は280g/㎡(他のバンチは250・270g/㎡なども)。
「サブライム」は上質感あふれる生地ながら、コシのある質感による耐久性の高さが魅力。「スーパーエクストラファインメリノウール」という、メリノウールの中でも最も等級の高いウールを使用しつつ、ぎゅっと密に織り込んだ贅沢な生地です。
同社の誇る最高級のカシミアのような“ぬめり感”には及ばないものの、その分、ウールという扱いやすく高耐久な万能生地×心地良い肌触が得られます。
ラペルが大きく、ゴージラインが下り目
RING JACKET 公式HPより引用
「286」モデルは何よりも、ラペルの大きさとゴージラインの角度が印象的。リングヂャケットは(デザイナーズブランドなどと比べると)全体的にラペル幅が大きめですが、中でも「286」は特に大きめ。
ラペル幅が細いジャケットを、しっかりした体型や顔つきの人が着用すると“ちぐはぐ感”があります。「286」モデルは(私のように)がっちりめの顔つきの人にも合いやすいジャケットです。
上襟の「殺し襟」が他のモデルより強め、抜群のフィット感
また、首のフィット感に大きく関わる「のぼり」も「286」モデルは強め。並の既製品やオーダーメイドでは実現できないリングヂャケットマイスターの“のぼり”ですが、中でも「286」モデルは一段とフィット感が良好です。
これは「殺し襟」という、上襟をアイロンの熱で曲げて人体の曲線に合わせる仕立て技法によるもの。近年は(生産効率の面から)殺し襟を行えるブランドは(ほぼ)皆無となりましたが、リングヂャケットは非常に優れた技術を持っています。
結果として、首周りが吸いつくようなフィット感が得られます。首周りの崩れにくさと合わせて、既製服と思えないクオリティの部分。
リングヂャケット「286/178」モデルのサイズ感は?
「286」モデルのサイズ感|大胆なメリハリは抑えめ
サイズ | 42 | 44 | 46 | 48 | 50 | 52 | 54 |
肩幅 | 42.8 | 43.8 | 44.5 | 45.2 | 46.2 | 47.8 | 49.3 |
胸囲 | 102.5 | 105.5 | 107.5 | 109.5 | 112.5 | 116.5 | 120.5 |
ウエスト | 87.5 | 90.5 | 92.5 | 94.5 | 97.5 | 101.5 | 105.5 |
着丈 | 69.7 | 72.2 | 73.2 | 74.7 | 76.2 | 77.2 | 78.2 |
袖丈 | 58.0 | 60.5 | 61.5 | 62.0 | 62.5 | 63.5 | 64.5 |
ラペル幅 | 9.4 | 9.4 | 9.4 | 9.4 | 9.9 | 9.9 | 9.9 |
「286」モデルのサイズ感&特徴は、
- 肩幅・着丈は「253」の方が約5㎜程度長め
- ウエストの差「286」の方が2cmほどゆとりがある
- 着丈はやや短め(「269」と同様)
など。デスクワーカーや身体のメリハリが抑え目な人、クラシック好きの人向きといえます。ピアツェンツァ「サブライム」との相性も非常に良く、素晴らしい雰囲気に仕上がっています。
RING JACKET 公式HPより引用
ちなみに、肩幅は「286」の方が「253」より狭い分、袖丈は長めになっていることも特徴。裄丈そのものは同程度になっているので、体型との相性やお好みで選ぶと◎。
また、先述の通り「殺し襟」の具合も強いことから、「286」は首回りの気持ちの良い着用感が得られます。「253」や「269」、「184」モデルと比べても、手の込んだジャケットであることは間違いありません。
「178」モデルのサイズ感|2タックながらメリハリの効いてる「カッコいいパンツ」
サイズ | 42 | 44 | 46 | 48 | 50 | 52 | 54 |
ウエスト | 77.0 | 80.0 | 83.0 | 86.0 | 89.0 | 92.0 | 96.0 |
ヒップ | 101.5 | 104.5 | 107.6 | 110.3 | 112.9 | 115.5 | 119.5 |
ワタリ | 31.9 | 32.8 | 33.8 | 34.4 | 35.0 | 35.6 | 36.8 |
膝幅 | 21.5 | 22.3 | 22.9 | 23.6 | 23.6 | 24.3 | 25.2 |
裾幅 | 18.8 | 19.3 | 19.3 | 19.8 | 19.8 | 20.3 | 21.0 |
股上 | 22.5 | 23.0 | 23.5 | 24.0 | 24.5 | 25.0 | 25.5 |
一方、「178」モデルのサイズ感&特徴は、
- ヒップ~ワタリにかけてはゆとりあり
- 膝~裾に掛けてテーパードが効いている
- 4~4.5cmのダブル幅がオススメ
といった点が挙げられます。
RING JACKET 公式HPより引用
「178」モデルは、ワンタックの「172」モデルよりも腰周りにゆとりがあります。一方、膝から裾幅にかけて細くなっているテーパードパンツであることも特徴(とはいっても、標準的な部類の裾幅ですが)。
また、ジャケットのクラシカルな雰囲気を尊重して、標準~やや太めのダブル幅がオススメです。
【ちなみに】お直しを依頼する場合、オンラインと実店舗のどちらも可能
リングヂャケットは実店舗と公式オンラインストア、楽天市場にて発売されています。
実店舗で購入した際はもちろん、オンライン(例えば楽天市場の公式オンラインストア)で購入した場合、同じく股下や袖の修理が可能。
また、ハンド切羽のボタンホールにしたい場合は、実店舗に持ち込んで修理依頼が可能です。公式および公式の楽天オンラインストアでスーツを購入した場合、専用の修理券も同封されて送られてきます。
今回のスーツの場合、実店舗に持ち込んでハンド切羽を依頼しました。私は「286」モデルの場合、3cmくらい袖を出せたことでピッタリのサイズ感。
前回記事のスーツは自分で修理&開けましたが、当然、公式の修理も素晴らしいハンドホールの技術です。
ピアツェンツァ(PIACENZA)とはどんなメーカー?
次に、今回ご紹介したスーツに使用されているピアツェンツァというミル(生地メーカー)の特徴について解説します。
創業1733年、現存する世界最古のミル(毛織物メーカー)
ピアツェンツァ(PIACENZA)は1733年創業。約300年にものぼる歴史を持つ、イタリア・ビエラを拠点とする世界最古の毛織物メーカーです。
そして、ピアツェンツァ家が毛織物商として活動した記録は、1623年の国勢調査にも記録されているそうです(カノニコは1663年創業ですが、毛織物メーカーになったのは19世紀末になってから)。
ビエラは人口わずか5万人ほど、スイスとの国境に聳えるアルプスを臨む北イタリアの小都市。水資源が豊富で、ミラノの近郊に位置します。「ピアツェンツァ」と同様に「ロロピアーナ」「ゼニア」「カノニコ」も、ビエラに本拠地を構えるミルたち。また、イタリアには「ピアツェンツァ」という同名の都市があるため、(厳密には)ブランドとしては「ピアツェンツァ 1733」として展開しています。
Piacenza 公式HPより引用
ピアツェンツァは 旧式の機械を用いた“非効率な生産”と、そこから生まれる独特の意匠性を付加価値とするメーカー。
例えば、ブランドロゴにもあるアザミの実は、織物の加工過程で乾燥させたものを敷き詰め、回転させながら生地の表面を掻くことで起毛させるもの。古くはスコットランドの伝統的な手法に由来します。
(ピアツェンツァに遅れること数十年、1797年創業の英国を代表するメーカー「ジョンストンズ」のブランドロゴにも「アザミの実」が描かれています。)
メンズ・レディース共に、最高峰の毛織生地を提供
ピアツェンツァの毛織物は、競合他社と比べても非常に高いクオリティであることも特徴。ウールはもちろん、特にお家芸であるカシミアのクオリティは有名です。
ピアチェンツァが使用するカシミアは、内モンゴル産の中でも最西部に位置するアラシャン地区のみに生息するカシミアヤギの毛。通称“アラシャンカシミア”と呼ばれます。アラシャン地区は、カシミアヤギが生息する地域の中でも最も寒冷で厳しい環境。その中を生き抜くカシミアヤギの毛は最も白く細く、希少価値が高いため最高級とされています。
同様に、南米ペルーに生息する“神の繊維”と称されるビキューナ関しても、ピアチェンツァはトップクオリティを最も安定供給されているミル。知名度こそ「ロロピアーナ」や「ゼニア」に劣るものの、クオリティ重視の毛織物を求めるならばピアツェンツァだと思います。
RING JACKET 公式HPより引用
ちなみに、今回ご紹介しているリングヂャケットで2022年秋冬シーズンに発売されたカシミア/ビキューナ混のコートは、なんと定価143万円でした。
最高級のカシミア80%とビキューナ20%が混紡されているので納得のプライスですが、ピアツェンツァはそのくらいのランクの生地を提供するメーカーです。
(私は流石に買えませんが、それでも売れているのが凄い・・・。)
ヨーロッパに初めてカシミアを持ち込んだメーカーと言われている
また、ピアツェンツァは長い歴史の中で、初めてヨーロッパにカシミアを持ち込んだ毛織物メーカーと言われています。1913年(大正2年)にカシミアをネパールから持ち帰ったことが記録されており、これがヨーロッパに高級毛素材として広まった契機になったそう。
カシミアの毛を持つカシミアヤギは、カシミール地方(今のインド・パキスタン・中国の国境周辺地域)原産のヤギの一種。カラコルム山脈一帯に連なり、現在は主に周辺国である中国、モンゴル、イラン、アフガニスタンなどが産地となっています。
中でも、中国産のカシミアが最高品質とされていますが、中には糸にする工程で“混ぜ物”をする業者などが存在します。そのため、主に中国産のカシミア生地を仕入れる日本でも「メーカー側も知らずの内に成分偽装になってしまった」という事件が起こり、問題視されてきました。
ピアツェンツァの場合、カシミアを糸にさせない原毛の状態で買い取り、さらにイタリア国内の研究機関で原毛を念入りに調べさせる徹底ぶり。その上で最高品質の糸にし、生地にした上で製品づくりを行っています。
カシミアには等級が定められており、最高級の1級から9級まで存在します。ピアツェンツァのカシミアはもちろん1級。紛れもなく、カシミアに徹底したプライドを持つメーカーです。
その他、ピアツェンツァの有名商品は?スーツと合わせるのにも最適
最後に、ピアツェンツァの中でも有名な毛織物製品について簡単にご紹介させていただきます。メンズ・レディース問わず愛用できる上に、長年愛用できる素晴らしい商品たちだからこそオススメ。
「良い物を長く」という価値観の方にチェックしていただきたいので、ぜひご覧ください。
マフラー&ストール
BEAMS 公式HPより引用
ピアツェンツァの中で、最もお手軽に上質さを試せるアイテムはマフラーやストールだと思います。価格帯によってウール100%やウール・カシミア混、カシミア100%など多種多様。
BEAMSやAmazon、楽天市場などで購入可能。一本持っていると、長年の秋冬の心強い味方になると思います。
カシミアコート
また、カシミアコートもピアツェンツァの魅力を引き出す定番の服。
コートにおいて、ピアツェンツァの用いる一級品のカシミアは“ぬめり感”の良さが活きます。もちろん、「サブライム」のスーツのオーバーコートとしても◎。
写真のようにレディースの秋冬を飾る高級なコートとしても最適。「ミル」の世界はメンズのものと思われがちですが、レディース服を着る方にもチャレンジして欲しい服です。
終わりに|ピアツェンツァは、あらゆるアイテムがおすすめの稀有なメーカー
今回は、実際に「サブライム」を使用したリングヂャケットマイスターのスーツと共に、ピアツェンツァという生地メーカについてもご紹介させていただきました。
ピアツェンツァはカシミアだけでなく、ウールも非常に高品質な生地を提供しています。仕立ての良いスーツに使用されていると、本当に素晴らしい一着に仕上がります。
ピアツェンツァの生地を見かけたら、他のミルよりも優先して考えても良いくらいのオススメ度であることは間違いありません。
ぜひ、スーツ選びはもちろん、マフラーやコートを選ぶ指標としていただければ幸いです。
おしまい!
(少しでもお役立てられたなら、TwitterやWEBページに拡散していただけると嬉しいです!)