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あなたはなぜスーツを着るのか?歴史と変遷、その理由

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こんにちは、しょる(@SHOLLWORKS)です。今日は、「あなたがスーツを着ている理由」について。

私たちは、なぜスーツを着るのでしょう?

昨今はスーツを着ない人も増えましたが、大多数のビジネスマンは未だにスーツを着ています。

考えてみれば、とても不思議ではありませんか。皆、なんとなく「そういうものだ」と捉え、入学式や卒業式、成人式、冠婚葬祭と、スーツを着る機会を得ていきます。

「洋服だから?」「ちゃんとしてそうだから?」「カッコいい(とされている)から?」

一応、どれも正解です。

しかし、それ以上に、私たちは歴史に培われた社会的価値観に囚われて生きているからです。

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理由を紐解くに、まずはスーツの歴史から見ていきましょう。

「スーツの神話」 中野香織 著(文春新書)
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目次

あなたはなぜスーツを着るのか?歴史と変遷、その理由

スーツの成立|貴族装いと変化

 

スーツは1850年代、英国で誕生したと言われています。

服装の変化は有史以来連続したものだからこそ「厳密にいつから」と言うことは難しいです。しかし、現代スーツの始まりとしてはこの時期から、という説が有力です。

歴史が近世に突入する17世紀頃まで、貴族の服装は豪華絢爛さが身分そのものを表していました。当時の男性貴族は女性よりも華やかな装いをしていた人もいたそうです。

モーニングを着用した昭和天皇(写真右)と、
ロナルド・レーガン元米大統領(写真中央)

豪華絢爛な貴族の装いが質素な見た目へと変わったのは、16世紀頃。

この時期に、上流階級の装いとなっていたフロック(コート)が発明されたことが、現代の服装への系譜となっていると言われています。

やがて、フロックは現在の正装であるモーニングコートの原型にもなりました。

さらに、そこから動きやすいように丈を短くしたのがテーラードジャケットです。テーラードジャケットの誕生&上着とパンツが共布(ともぬの)になったことで、いわゆるスーツが誕生したと言われています

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では、どのような時系列で今のテーラードジャケットやパンツ、そしてベストが誕生したのでしょうか。

もう少し掘り下げてみようと思います。

時の英国王、チャールズ2世

1666年、時の英国王であるチャールズ2世が「衣服改革宣言」を打ち出しました。男性の服装はさらに質素でシンプルな方向へと向かい、質素なものの象徴としてベストが誕生しました。

衣服改革宣言の背景には、戴冠して間もなく起こったペスト(黒死病)やロンドン大火災によって倹約を迫られたという事情もあったそうです。

また、チャールズ2世が清教徒革命からの「王政復古」によって王位に就いたことから、平民からの目を気にしていたこともあったそうです。

いずれにせよ、英国の貴族階級は(他国に先立って)シンプルな服装になっていきました。

これが、他のヨーロッパ諸国に先んじて、英国がスーツを誕生させた土壌になったと言われています。

さらに、18世紀末になると、貴族は長丈のパンツとネクタイを身につけるようになります。

それまで、フランスの貴族は半ズボン(キュロット)を穿いていました。しかし、(フランス革命時に大きな原動力となった)長ズボンを穿く労働者階級のサン・キュロット(=キュロットを穿かない人)が誕生します。

フランス革命の原動力となった
サン・キュロット

「サン・キュロット」たちは、半ズボンを穿いた貴族達を次々と処刑していきました。

そのため、長ズボンは貴族側が市民に迎合するかたちで定着したようです。

貴族は労働者階級となる“平民”に迎合し、また、社会の合理化に並行してシンプルな服装を心掛けるようになります。革命の余波を受けて、英国でも貴族が長ズボンやブーツを着用するようになりました。

一方、上着にメスが入ったのは、19世紀の前半~中頃と言われています。

この時代にモーニングコートから動きやすいように丈が短くなり、シャツや長ズボンと併せて平服化したラウンジスーツ(ラウンジでくつろげるスーツ)が誕生しました。

この時代にはスモーキングジャケットも誕生しましたが、こちらは“くつろぎながらタバコを吸う(smoking)ためのジャケット”という意味です。

「正装に対する楽なウェア」としての位置付けが、ラウンジスーツやスモーキングジャケット本来の役割でした。

いずれにせよ、シンプルなフロックやベスト、長ズボン、そしてテーラードジャケット。これらが、19世紀の英国やフランスにおける貴族の装いとなり、現代のスーツが(ぼぼ)完成しました。

さらに、「くつろぐための服」だったジャケットが、動きやすさから仕事着へと転用されるようになりました。現在の「仕事着としてのスーツ」の確立です。

そして、先述の“新たな貴族の服装”として確立されたスーツを纏うことで、「上流階級の意識やステータス」を得ようとするマインドが生まれました。

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これこそが、私たちが今日まで「スーツを着用し続けている理由」でもあります。

(上流階級と装いを近づけることで)身分を誇示して「強さ」を示してきた

スーツは時代と共に簡略化され、仕事着(ビジネスウェア)としてのポジションを確立した服装。

歴史的変遷の中で誕生したスーツは、平民に迎合したルーツを持ちつつも上流階級の装いでした。

しかし、時代と共に「スーツとなったタイミング」と併せて、有史以来の服装における“封建制度”に例外が生まれました。近代の市民革命、産業革命、そして資本主義経済の広まり。これらはブルジョアジーを生み出し、彼らによってスーツは“市民権”を得るようになりました。

 

資本主義が社会に浸透し、中流階級からも「資本家」という存在が生まれた近現代。

日本よりも遥かに階級意識が社会に根付いている英国において、家柄とは違う資本主義社会でのパワーである「富の力」を持った彼らが、次に目指したものが社会的権威でした。

そんな資本家たちに着用されたスーツには、社会階級制度からの脱却というテーマが与えられるようになった。

だからこそ、スーツは「ちゃんとしている」「身分が高い」「信頼がおける」服装の象徴となりました。

日本でも第一次世界大戦後に誕生した「成金」
この風刺画の人もスーツを着ています

長い人類の歴史において、常に服装は身分を表すツールでもありました。貴族は貴族の格好をして、平民は平民の格好をする。

見た目そのものが、その人のステータスを表していました。

だからこそ、経済的な力を持った資本家にとって上流階級と装いを近づけられることは悲願でもありました。いくら経済的な自由を得たとしても手に入らない「生まれながらの身分」というステータス。

そのギャップを埋めるための画一化された服装こそが、「スーツを着ること」だったのです。

階級という社会に深く根差した障壁に対し、(ぱっと見だけでも)同一化することを目的にジェントルマンという概念が作り出されました。そして、彼らの服装にスーツが選ばれたことが今日、スーツがここまで普及した理由です。

狩猟の時代における保証であった肉体的な強さに代わり、スーツを着るということは、資本主義社会下における強さの象徴となりました。

今の私たちにどれほどの階層意識があるのかは分かりません。しかし、この意識こそ、スーツが普及した理由であることは間違いありません。

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そして、結局はまだ有史以来の「身分を表す」という服装の使命は、本質的に変わっていないということでもありました。

日本の洋装の伝来と、スーツの普及

19世紀、世界の覇権国であった英国の価値観は世界の諸地域に波及しました。

英国と比して階層意識が希薄といえる日本においても、急速な文明開化と“列強国”としての立ち振る舞いが求められた時代です。是非はさておき、それが当時の倣うべき価値観だったことは間違いないでしょう。

日本では1872年(明治5年)、明治天皇の勅諭(ちょくゆ)によって、洋服が礼装として採用されることになりました。

国民全体にまで洋装が普及するのは戦後の話ですが、「食肉や洋装が列強国の証である」という当時の価値観に倣ったものです。

(神道行事を除き)皇族が現在も公務でスーツを身に纏うのは、この頃の規範を現在も踏襲しているからです。

日本にも素晴らしいメーカーやテーラーが存在しますが、公平意識の強さが産業を支えました。高度経済成長期に皆が買えるよう、全国の国道バイパス沿いに洋服の青山紳士服のコナカなどが計画的に構えられました。

こういった国民性や普及の仕方は「一億総中流」的なスーツの普及に貢献しました。

英国のサヴィルロウやイタリアのナポリような都市や地域単位のブランド化よりも、「皆が廉価でそこそこの物を」という階層意識の低さは日本らしさの一端と言えるのでしょう。

高度経済成長期からバブル崩壊までの日本は「最も成功した社会主義モデル」とも形容されます。

これは、矛盾した「社会的階層からの脱却」に対して、最も成就させていた“スーツ的社会モデル”だったのかもしれません。

しかし、そういった“スーツ的社会モデル”は既に過去のものとなりました。

同時に、「スーツを着ない仕事はまともな仕事じゃない」という価値観や「ブルーカラー」「ホワイトカラー」といった意識も薄れたことも間違いありません。

どんなスーツを着れば良い?おすすめは?(別記事へ)

 

とはいえ、この記事を読まれている皆様の多くは(着ているにせよ、着させられているにせよ)仕事でスーツを着ている方が多いのではないでしょうか。

中には、「単純にスーツが興味がある」「好きでたまらない」といった方もいらっしゃるのではと思います。

 

着ている理由は分かったけれど、現実問題としてどんなスーツを選べば良いのか探されている方もいらっしゃるでしょう。

どうせ着るなら恥ずかしくないスーツを着たい。あるいは予算も限られるので、お得に良いものを購入したいと思う方も多いのではないでしょうか。

そこで、上記記事では私が着たことのある世界のスーツブランドから、オススメのスーツを紹介しました。新社会人の方からある程度余裕のあるビジネスマンの方まで、ぜひ参考にしてください。

最後に|スーツの役割は終わりを迎えるのか?

スーツを着ないことでブランディングする人も増えている

今回はスーツの歴史と変遷を語りつつ、「なぜ、あなたはスーツを着ているのか?」というテーマでお話しさせていただきました。

現に売り上げが低下している通り、スーツは今後も仕事での重要度を低下させるでしょう。

スーツが誕生した150年前とは異なり、今はもっと機能的で合理的な服が沢山あります。また、普及し過ぎたことで没個性的と感じられたり、労働者として「囚われている」というネガティブなイメージを抱いている人も多いのではないでしょうか。

今や、インフルエンサーをはじめ「あえてスーツを着ない人」も多い時代です。

彼らにとってスーツは権威を示すものでも、説得力を増すものでもない。むしろ着ていたら、違和感すら感じさせるような存在です。

「スーツを着ないこと」自体が自由な生き方を連想させる。だからこそ、私はスーツの役割が今後大きくなることはないと思います。

「否応なしにカッコいい」という価値観に、どう向き合うか

しかし、それでもスーツはくなりません。

なぜなら、「スーツはカッコいい」からです。

普段着にはない色気や魅力、場を作る力があることは間違いありません。

見た目が良ければ能力は高そうに見え、受ける評価は高く、人生も総じて有利に動きます。

これは、良くも悪くも事実です。「スーツが好き!カッコいい!」という人がいる限り、その需要は尽きません。

着用しているから、その歴史や階級意識も背負わねばならないというものではありません。身の引き締まる気持ちも、相手から得られる信頼感も決して侮れないものです。

 

たとえ仕事では着なくなろうとも、重要な局面でのスーツスタイルおよびその着こなしは、あなたの人生を輝かせる可能性を秘めています。

スーツ自体の着られ方が変化をしていくことすら、恐れなくて良いのだと思います。仕事で着させられる服から、勝負服に、週末のデート着に、相手を「落とす」服に。そんなスーツの未来を私は予感しています。

今私たちが生きるこの時代において、歴史としての変化も見てみたくありませんか?

「ひとはなぜ服を着るのか」 鷲田清一 著 (ちくま文庫)
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これからのスーツというもののポジション。それは個々人の選択の連続が決定します。

だから、あなたが明日クラシカルにスーツを着るのも良し、世の流れに身を任せてカジュアル化するのも良いでしょう。セットアップスタイルでTシャツにスニーカー。それもOKです!

あなたは、スーツという存在や歴史、今後にどう向き合いますか?

ご自身の価値観、そして環境を見つめ直した上で、選択してみてください。

(少しでもお役に立てられたなら、SNSに拡散していただけると嬉しいです!)

SHOLL(しょる)
1987年生まれ。国内ブランドを経て、伊ラグジュアリーブランドのデザイナーとして4年間勤務。
現在は日本の服飾産業を振興するため、マーケティング支援活動を行っています。
素材の機能性からパターンまで精通し、シンプルかつ素敵な服装の普及に努めています。
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