リーガルの靴は本当に「恥ずかしい」のか?プロが語る“評価ギャップ”の正体
こんにちは、しょる(@SHOLLWORKS)です。
本日は、「リーガルの靴は恥ずかしいか否か」という点について。
実際に恥ずかしいと思う方や、愛用している方に向けてお話しさせていただければと思います。
まず結論から言えば、プロの視点でリーガルは決して恥ずかしいブランドではありません。
リーガルは日本を代表する革靴メーカーであり、本気を出した上級ラインの完成度は非常に高いものがあります。
ただし、価値観は人それぞれ。「リーガルの靴は恥ずかしい」と感じる人の心理は、たとえるなら「俺はトヨタ車なんて買わない!」という感覚に近いかもしれません。

以下では、その背景にある時代や消費意識、競合ブランドとの比較、品質やシリーズの違い、代替ブランド提案、そして最後に自分の価値観で判断することの大切さについて、Q&Aも交えて詳しく解説します。
国内ブランドとラグジュアリーブランド、双方のデザインチームでデザイナーを経験した私が、リーガルや日本のブランドの多くが抱える問題にもフォーカスします。
それでは行きましょう。
リーガルの靴は恥ずかしい?ブランドの実力と評価
リーガル(REGAL)は、日本の革靴ブランドの中で最も知名度が高い存在です。
靴に詳しくない人でも名前を聞いたことがあるほどで、就職してスーツを着るようになるとリーガルの靴を履く人も少なくありません。
実際、40~50代男性を対象にした2024年のアンケート調査でも、「一番憧れる革靴ブランド」第1位にリーガルが選ばれており(得票率10.8%で2位のフェラガモに倍差)、国産ブランドとして根強い支持があります。
ただ、そうした「日本人の足を50年以上支え続けてきた」安心感のあるブランドだけに、逆に「当たり前すぎて欧米の靴メーカーと比べ軽んじられている」のも事実です。
一部には「リーガルの靴を選ぶこと自体が恥ずかしい」という声すらありますが、プロの視点で見れば、リーガルは技術力の高い実力派メーカーです。
1970年にオープンした東京・八重洲の直営一号店
引用:https://timeandeffort.jlia.or.jp/
リーガルは元々、1880年創業の米国ブランドです。
これを1961年に日本製靴(にほんせいか/現リーガルコーポレーション)がライセンス生産を開始し、日本の標準的なビジネスシューズとして定着しました。
引用:https://timeandeffort.jlia.or.jp/
1990年には商標権そのものを取得し完全に日本のブランドとし、日本製靴もリーガルコーポレーションへ改称。
現在は国内約140店舗を展開するなど圧倒的な流通網を持っています。
リーガルの靴作りのレベルは非常に高いです。例えば、同社の最高級ラインである「The MASTER REGAL」(2021年デビュー)は熟練の技術とこだわりが詰まり、5万円台(高級ですが)として破格のスペックを誇ります。
また、銀座の工房で職人が手がけるオーダーメイドライン「REGAL TOKYO」もあり、その出来栄えは欧米の高級靴ブランドに比肩するほどです。
リーガルのフルオーダー靴ともなれば価格は40万円を超えますが、それだけ本格的な靴作りが可能なブランドなのです。
要するに「安価な量産靴から最高級オーダー靴まで作れる」のがリーガルであり、「本当は凄いことができるブランド」であるにもかかわらず、一部の人が抱くネガティブなイメージとのギャップが存在しています。
ではなぜ「リーガルは恥ずかしい」などという評価ギャップが生まれるのでしょうか。その背景には、日本の市場環境や消費者意識の変化が関係しています。
以下では、リーガルの靴が恥ずかしいと思われる主な理由を掘り下げてみましょう。
なぜリーガルの靴は恥ずかしいと思われるのか?【3つの理由】
Image Photo by REGAL
リーガルに対して「ダサい」「恥ずかしい」といった価値観を抱く人が存在するのは事実です。
その理由として、大きく3つの要因が考えられます。
- 昔に比べて「安くて良い靴」が増え、リーガルが相対的に中途半端に見えること
- 「皆と同じものを避けたい」という心理がSNS時代に強まり、リーガル=みんな履いてる靴というイメージへの反発があること
- 経済格差の拡大によって中価格帯ブランドへの関心が薄れ、「中途半端はいらない」という消費傾向が強まったこと
もちろん、「皆と同じは嫌だ」という指摘は、昭和や平成の時代から存在していました。
ファッションというジャンルは本質的に「他者との相対性」を意識するものなので、当時から「周りと同じリーガルを履くのは嫌だ」という価値観を持つ人はいたのです。
しかし、近年は経済状況や情報環境の変化により、そうした声が以前にも増して表面化しているのは間違いありません。
それぞれの理由をもう少し具体的に見ていきましょう。
① 安くて良い靴が増えた|リーガルより賢い選択肢が存在?
まず一つ目は、現代では低価格でも品質の良い靴が作れるようになったことです。
一昔前と比べ、製造技術のグローバル化・効率化が進んだ結果、「安くて良いライバル商品」が世界中から登場し、リーガルの前に立ちはだかるようになりました。
実際、2020年代のファッション市場では海外生産が当たり前で、日本製品の比率はわずか1.5%程度にまで低下しています。
人件費や流通コストを徹底的に削減し、ネット通販専業で価格を下げる海外ブランドも増え、日本の消費者は「安くて良いもの」が簡単に手に入る時代です。
例えば、アシックス商事のテクシーリュクスはスニーカーのような履き心地の革靴を7千円台という低価格で提供し、「ビジネスシューズは高価」という常識を打ち破っています。
中国発のフォクスセンスなど手頃な革靴ブランドも登場し、定価1万円台で買えるリーガルの廉価モデルはこれらの強烈な競合に晒されている状況です。
事実、私自身も「今の時代にセメンテッド製法やマッケイ製法で作られたリーガルの一万円台の靴を敢えて選ぶ必要性は低い」と感じます。
予算が同じかそれ以下でも、リーガルの廉価ラインより見た目の良い革靴を見つけることは十分可能だからです。
その結果、ファッションに詳しい層ほど「リーガルしか知らずに安易に選んでいるのでは?」「コスパが悪いのでは?」といった目で見る向きがあります。
要は、安くて良い靴が他にあるのにリーガルを履いている=情弱で恥ずかしい、というイメージを持たれやすくなったのです。
この傾向は、リーガルのように有名かつ価格が中くらいのブランドにとって不利に働いています。
② 「みんなと同じ」は嫌だ|情報化で顕在化した差別化志向
二つ目の理由は、他人と違う自分を演出したい心理です。
昨今はネットやSNSで「周りの人が何を考えているか」「お洒落な人たちは何と言っているか」が手に取るように分かる時代です。
その中で、リーガルのような「みんな履いている定番靴」に対し、「実は玄人からの評価は高くないらしい」といった情報も可視化されてしまった。
結果、「周りと同じ無難なリーガルを履くのは個性がないし、通ぶった人にはダサいと思われるのでは?」という不安・反発が生まれています。
ファッションは自己表現の手段ですから、「他人と同じはつまらない」という思いは誰しも少なからず持つものです。
という画一的な選択へのアンチテーゼとして、リーガルに否定的な感情を抱く人もいるのでしょう。
事実、「リーガルの靴を履いている営業マンが隣にいても私は全く気にならない」が、「その光景を見るのも耐えられないし、自分が履くなんてもってのほか」という人も世の中にはいます。
こうした差別化志向は以前からありましたが、SNS時代にさらに顕在化しました。
「一般的に人気なリーガルだけど、実はそこまで高評価ではないらしい」という情報が共有されることで、「そんな靴を履いていたら恥ずかしい」という価値観が広まりやすくなった面は否めません。
実際、「身近すぎる存在ゆえ欧米靴に比べ軽んじられている」のは事実であり、「リーガルを選ぶこと自体が恥ずかしい」とする向きもあるのです。
③ 中間層ブランド離れ|格差時代の「中途半端」アレルギー
三つ目の理由は、経済格差の拡大による中価格帯ブランド離れです。
かつて日本は“一億総中流”と言われるように、国民の大多数が中流意識を持ち、中品質・中価格の商品が広く受け入れられていました。
しかし、その「一億総中流」は格差拡大によって過去のものになりつつあります。
所得格差が拡がり富裕層と貧困層が増える中で、「みんなそこそこ豊か」という時代は終わりを迎えています。
2000~2010年代にかけて、多くのファッションブランドがセカンドライン(廉価版ライン)の廃止に踏み切りました。これは偶然ではなく、上下二極化する市場において中間層向けブランドが苦戦した表れです。
事実、ハイブランド各社のセカンドライン(ディフュージョンブランド)は現在次々と姿を消しつつあり、もはや過去の遺産になりつつあるとも言われます。
富裕層向けのプレステージブランドと、大衆向けのファストファッションやコスパブランドが両極に存在し、その狭間に位置する中価格帯ブランドは「どっちつかず」で選ばれにくくなっているのです。
昨今はラグジュアリーブランドが中途半端な廉価ラインを出すと却ってブランドイメージを損ないかねないため、ハイブランドは価格帯を下げる代わりにコラボや限定品で顧客層を広げる戦略にシフトしています。
こうした傾向は、リーガルの評価ギャップにも通じます。
リーガルは国内では高級靴の入り口的存在と見なされる一方、より上の価格帯の本格靴好きからすると「安価で凡庸」なブランドに映りがちです。
消費者側も「どうせ買うなら徹底的に安いか高いか」「中途半端なものには価値を感じない」という志向が強まっています。
まとめると、リーガルが「恥ずかしい」と言われる背景には、
- 質と価格のバランスが中途半端に映ること
- みんなが履く凡庸さを嫌うこと
- そして市場の中間層縮小による風当たり
があるわけです。
これらはリーガル固有の問題ではなく、現代の日本市場で有名ブランドが共通して直面している課題とも言えます。
次の章では、そうした背景を踏まえつつ、リーガルに限らない日本ブランド全体の構造的な問題について触れてみます。
「リーガルは恥ずかしい」という価値観は日本ブランド全体にも当てはまる?
先述の通り、「リーガルなんて恥ずかしい」と感じるか否かは、その人の価値観や置かれた環境による部分も大きいです。
そして実はこの問題はリーガル一社に限りません。日本の多くのブランドが抱える構造的なジレンマでもあります。
日本ブランドは同じ名前で廉価版から高級版まで展開
日本では、経済格差が広がり始めた段階においても、多くのメーカーがブランド名を分けずに価格帯の異なる商品を同じ屋号で展開する戦略を採ってきました。
結果、一つのブランドの中に一万円台から数十万円台まで様々な価格帯の製品が混在することになりました。
これは、日本人の持つ「公平意識」や「いつか不況が終わるはず」という希望から、ブランド名を統一して顧客の裾野を広げようとしたためかもしれません。
例えば、一部のブランドでは、高級ラインは完全に別ブランド名で展開する場合があります。
資生堂が最高級ラインを「クレ・ド・ポー・ボーテ」として独立させたり、セイコーが「Grand Seiko(グランドセイコー)」を事実上別ブランド化したりしているのが典型です。
一方、日本の革靴業界では、リーガルは廉価版も5万円弱する商品も同じ「REGAL」ブランドのまま販売しています。
リーガルが2010年代後半から銀座に設けた高級ラインの「REGAL TOKYO」や、前述の「マスターリーガル」といった上位ラインも存在しますが、残念ながらそれらが一般に広く知られているとは言えないのが現状です。
革靴は特にパッと見で違いが分かりにくい
さらに言えば、革靴という商品の特性上、見た目だけでは価格や品質の違いが分かりにくいという事情もあります。
時計であれば「SEIKO」と「Grand Seiko」はブランドロゴからして違いますし、化粧品でもデパコスの高級ラインはブランド名を変えて販売されています。
しかし革靴の場合、リーガルのように上から下まで同じブランド名だと、ぱっと見でそれが3万円の靴か10万円の靴かは判別しづらいのです。
そのため、「リーガル=量産のそこそこ靴」という先入観を持つ人からすると、たとえ相手がリーガルの最高級シリーズを履いていても同じように映ってしまう危険があります。
「リーガルトーキョー」や「マスターリーガル」の靴は本来素晴らしい出来なのに、それらも含めて「リーガルなら結局たいしたことないでしょ?」というバイアスで見られてしまう側面があります。
実際、昭和の頃からお洒落に敏感な人々の間では「リーガルからチャーチ(英国高級靴)に履き替えたい」といった価値観が存在していたようです。
車で言えば「トヨタからメルセデスに乗り換える」のと同じで、憧れの対象は基本的に欧米ブランドでした。
現代でも「国産よりインポートブランドの方が格上」という考えは根強く、ブランド志向の人ほど「日本のリーガルより、ステータスのある海外高級靴を履きたい」と思いがちです。
ただし、ここで注意したいのは「ブランドイメージ」と「実際の物の良さ」は必ずしも一致しないということです。
確かにリーガルにはエドワードグリーンのような世界的高級ブランドほどのラグジュアリーなイメージはありません。
また「ピンからキリまであるブランド」であるがゆえに、「ピンからキリまであること自体が嫌だ」という気持ちも理解できます。
一方で、リーガルが本気で作った靴の素晴らしさはもっと評価されてもよいとも思うのです。
例えるなら、トヨタの最高級車レクサスと同様に、リーガルの上級ラインは胸を張れる品質であり、決して恥ずかしいものではありません。
「右へ倣え」の象徴=リーガルに向けられる偏見
日本の多くの有名ブランドが抱える「弱点」は確かに存在します。
特に革靴のように違いが見えにくいジャンルでは、その影響が大きいでしょう。
リーガルが「恥ずかしい」「ダサい」と言われる背景には、「皆のためのブランド」「日本の革靴といえばリーガル」という画一的な存在であることが影響しています。
以上のように、「リーガルは恥ずかしい」という見方は、日本に見られるマーケット事情や価値観のズレが生んだ副産物と言えます。
しかし、ファッションの感じ方は人それぞれです。
他人の意見に惑わされて本質を見誤るのはもったいないことでもあります。
それでも、リーガルの靴は「恥ずかしい」と思う人へ
それでも、やはりリーガルの靴は「恥ずかしい」と思うあなたへ。
異なる価値観をリスペクトする必要はあると思いますので、「自分はリーガルを選ばない!」という人のための代替案も示してみました。
個人的には、(東欧靴が好きなので)特に3番目をオススメしますが、ぜひ価値観が合うものを選んでみてくださいね。
同価格帯で探すなら、日本の革靴ブランドが◎
3~40,000円程度の予算であれば、基本的には日本ブランドから探すのが良いと思います。
革靴の場合、カッコ良さと作りのレベルは概ね比例します。
インポート物に憧れる気持ちは分からなくはないのですが、あまり安いブランドは本末転倒なチョイスになるため要注意です。
逆にこの価格の場合、インポート物においてリーガルと同レベルのものを選ぶことは難しいです。
上記記事では、3万円台~で購入可能な日本ブランドを挙げました。日本の革靴ブランドにどんなものがあるか知りたい方は、ぜひ上記記事をお読みいただければと思います。
正統派のブランド力を重視するなら英国靴
革靴における中心は英国です。確かに、リーガルの革靴にはない「イメージ力」を提供してくれます。
そこで、上記記事では、英国の有名&オススメブランドを紹介させていただきました。
「国産車より外車」派がいるように、「革靴も日本ブランドではなくインポートブランドが良い!」という方もいらっしゃいます。
もちろん、リーガルの革靴より大幅に高価なブランドが大半です。
とにかくブランドイメージが高いものを探していて、もっと「上の予算が出せる」方はご覧ください。
実用性×ニッチな世界観なら、中・東欧靴もアリ
中・東欧靴は、個人的に強く勧めたい選択肢です。
スーツ同様、革靴も西欧が中心ですが、「中・東欧靴を無視する革靴マニアはいない」といっても過言ではありません。
というのも、工業化が遅れた当該地域の革靴は、機械生産ではなくハンドメイドによる生産が中心です。
その環境が、ブランド料の嵩んだ「有名ブランド」にはないモノの価値を提供してくれます。
特に、上記記事で紹介しているヴァーシュというブランドは、個人的に最も好きな既製靴ブランドのひとつです。ぜひ注目してください。
【Q&A】リーガル(REGAL)の疑問に答える
そして、ここまでの内容やその他をまとめて、Q&A形式にしました。
終わりに|好きならば履き、嫌いなら避けても人生に全く問題ナシ
今回は、リーガルの靴が「恥ずかしい」とされる理由や背景、そして、恥ずかしいと思う方に対しての代替案を示させていただきました。
繰り返しになりますが、私はリーガルの靴を「恥ずかしい」とは思いません。
もちろん、選ぶべきと思う価格帯と、そうではないものはありますが、履いている人を馬鹿にする気持ちも起きません。
とはいえ、リーガルが抱える弱点や問題は、日本の多くの産業で「有名」とされるブランドが抱えている問題でもあります。
決して、リーガルだけのものではありません。
大事なことは、ご自身の価値観に対し、正直に判断することではないでしょうか。
「誰かが言っていたから、どうのこうの」というよりも、価値観に応じて自由に選べることこそが、ファッションの醍醐味ですから。
その上で、私としてはあらゆる出来や価格帯の革靴を見てきて、「リーガルって日本的で愛着も湧くよね、日本人だし、こういう点も含めて日本ブランドなんだ」という結論に達しました。
あなたの結論は、あなたの触れ方や価値観が決めること。
もし、リーガルを好きになれそうなら、ぜひ愛用してくださいね。
おしまい!
(少しでもお役に立てられたなら、SNSに拡散していただけると嬉しいです!)