VASS(ヴァーシュ)London3-eyelet Fをレビュー【プレーントウ】
こんにちは、しょる(@SHOLLWORKS)です。
今回は、実際に個人輸入したヴァーシュ(VASS)のプレーントウをレビューします。
(ヴァーシュって何?という方は、こちらからお読みください。)

今回、ハンガリーから個人輸入したのは3アイレットのプレーントウ。Vフロントと呼ばれる類の靴です。
Vフロントは穴飾りがなく、また外羽根ながらパンツの裾から羽根が大きく覗かないため、ドレッシーかつシンプルな着こなしに合います。
合わせるスーツやシャツは、無地やシャドーストライプ、マイクロストライプといったドレス寄りのものであれば◎。
ネクタイもソリッド、水玉、小紋柄といった柄や、繊細な生地感のものによく合います。
VASS(ヴァーシュ)London3-eyelet Fをレビュー【プレーントウ】
ノーズが長すぎず短すぎず、クラシックなラウンドトウ

モデル名はLondon 3-eyelet。ヴァーシュが2019年頃に発売し、現在も人気を博しているモデルです。
東欧靴といえば、ポッテリした外羽根フルブローグがアイデンティティです。
しかし、ヴァーシュは20年ほど前のロベルト・ウゴリーニとのコラボレーションを経て、西欧的でスタイリッシュなモデルも展開するようになりました。
こちらのLondon 3-eyeletに採用されている木型(ラスト)はFラスト。
ノーズが長すぎず短すぎずの中庸的な木型で、こちらもロベルト・ウゴリーニとのコラボレーションを経て発売されたラストです。
美しい造形&メンテナンス性も考えられた実用性

こちらの記事でも触れましたが、踵の小ささや周囲の造形の複雑度が、グッドイヤーウェルテッドの靴とは一線を画します。
シームレスヒールのカーブも美しく、手吊り込みによって木型の造形が忠実に再現されています。
パッと見の美しさと実際の履きやすさを両立している点が、ヴァーシュの素晴らしい部分です。
また、ヴァーシュはコバ側の出し縫い糸を隠しません。
ここも「靴は道具である」という実用性と、長年履けるための配慮がなされている部分です。
個人的には、出し縫いのステッチを隠すためコバにメスを入れて出し縫いを中に落とす仕様は好きではありません。
ステッチを溝に落として“消す”ことで見た目がシンプルにはなりますが、修理時に穴を追えないため新しい箇所にステッチを入れざるを得ないので、耐用年数に悪影響を及ぼします。
長年修理して履けることをメリットとする製法にも関わらず、長年の使用に耐えられないディテールにしてしまうのは本末転倒ではないでしょうか。
アッパーには、非常に細かいダブルステッチが掛けられている

アッパーの縫製は二列を縫うダブルステッチ。
非常に細かいだけでなく正確で、カーブや角でもピッチが乱れません。
私はプロダクトの品質基準として、特にカーブ部分の縫製の丁寧さは重要だと思っています(既製靴でこれは凄いです!)。
現在は、トップと言われる英国ブランドの既製靴でも難しい仕事です。
角部分のカーブのピッチが大きかったり、あるいはストレートチップに縫われるS字のピッチが直線とカーブで全然違っていたりします。
また、靴ひもは高級紐靴の定番、紗乃織靴紐(さのはたくつひも)に替えています。
3アイレットの靴の場合、65cm(オーダーで作れます)~70cmくらいが適切な長さです。

ちなみに、ヴァーシュは全周囲カールエッジ仕様。
製甲工程もあり得ない手間です。
ジョー・レンデンバッハソール採用、高密度による耐久性が◎

ソールは、ドイツ製のJR(ジョー・レンデンバッハ)ソール。
樫の樹皮から採取したタンニンによって、1年以上もの時間をかけて鞣して作られる高級レザーソールです。
ジョー・レンデンバッハソールは一般的なレザーソールと比べてコシがあって耐久性が高く、細かく毛羽立ち、ふんわりと優しい履き心地になることが特徴。
ジョー・レンデンバッハは残念ながら2021年に倒産、同じくドイツのキルガー社によって買い取られ、現在はJ.R. by Kilgerとして展開されています。
ヴァーシュも今後はキルガーやマルティンなど、他のベジタブル鞣しによる上級ソールを使用していくとのことです。

また、ソール裏は出し縫いが見えないヒドゥンチャネルになっていますが、先述のメス入れ仕様と異なり、こちらは隠れても内部を傷めることはありません。
地面と接触して切れるとソールがカパカパになることがあるので、ソール裏に関しては糸が出ていない方が◎です。
Fラストのサイズ感は?マイサイズや他ブランドと比較してみた
「1の甲」は標準的、外羽根のドレッシーな靴としてチャレンジしやすい

Fラストの特徴としては、1の甲はそこまで低くありません。
高過ぎもしませんが、いわゆる「甲高」な方にもある程度は履けるラスト。
また、アーチサポートは適度な強さで踵は小さめ。2、3の甲はやや低めです。
比較的中庸的と言えるので、「踵は小さいことは分かるけれど、あとは標準的か分からないなあ」といった方にも最適な木型だと思います。
一方、1の甲が低めの人は履きジワが深くなってしまうので、UラストやP2ラストの方が合う可能性が高くなります。

上記記事では、各ラストの特徴も解説しています。
ぜひ、参考にしてみてください。
ヴァーシュの主なラストを表にまとめた比較はこちら
| ラスト | マイサイズ | つま先 | ノーズ | 足幅 | 甲の高さ | 履き口 | アーチ サポート | ウエスト |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| Fラスト | 42.5 | クラシック | ミドル | 標準 | 標準 | 標準 | 標準 | 標準 |
| FBラスト | 42.5 | クラシック | セミロング | 標準 | 標準 | 標準 | やや強め | やや細め |
| Uラスト | 42.5 | セミスクエア | セミロング | やや細め | 低め | やや低め | やや強め | やや細め |
| Kラスト | 43 | チゼル | ロング | 細め | 低め | 標準 | 強め | 細め |
| Sラスト | 43 | スクエア | とてもロング | 細め | 高め | 低め | やや弱め | かなり細め |
| BPラスト | 42 | ぽってり | ショート | やや広め | 標準 | 低め | 標準 | 太め |
| 3636ラスト | 42 | ぽってり | ショート | 広め | やや高め | 標準 | やや弱め | 太め |
| Pラスト | 42 | ラウンド | ややショート | やや広め | 標準 | 低め | やや弱め | 太め |
| P2ラスト | 42 | ラウンド | ミドル | 標準 | やや低め | 低め | 標準 | やや太め |
| Rラスト | 42 | ラウンド | ややショート | 標準 | やや高め | 標準 | 標準 | やや太め |
ヴァーシュのラスト毎の特徴&私のサイズ感をまとめたのが上記で、ヴァーシュのサイズ選びにおける参考にしていただけると幸いです。
ちなみに私の足形は、人差し指の長いギリシャ型で踵~人差し指の先端までが27.5cm、親指までが27cmで足幅の一番長い部分が10cmほど。
甲も足幅もサイズに対して標準的~やや細め程度と、あまり特徴がありません。
スタンスミスで27.5cm、クラークスのデザートブーツやワラビーでUK8.5(US9)、チャーチの173で85F、チーニーの137ラストで8.5、ジョンロブの7000も8.5、スコッチグレインのオデッサやインペリアルは26.5E、リーガルが26.5cm、その他大体の英国靴で8.5Fサイズです。
英国靴的な見た目やフォルムですが、何かハンドメイドで違う感があるヴァーシュのFラスト。
個人的にはこちらのVフロントの他に、ストレートチップやブーツのラストとしても非常におすすめです。
おしまい!
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