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SHOLL(しょる)
皆さまこんにちは。“SHOLLWORKS”運営者のSHOLL(しょる)と申します。

1987年、山梨県甲府市生まれ。国内デザイナーズブランドを経て、ファッションコングロマリットのブランドでデザイナー職を経験。

現在は東京都在住、ブランディングとマーケティングを涵養させる活動も行っています。
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三陽山長「零」シリーズ徹底解説|プロがゼロシーム製法やアッパー、ソールについて書き記す

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こんにちは、しょる(@SHOLLWORKS)です。

本日は「三陽山長」の新たな最高峰シリーズである「零」について紹介します。

三陽山長は、日本の革靴ブランドの中でも、既成の高品質を代表する存在であるブランド。

中でも「零」は、2025年春夏コレクションとしてブランド史上最高価格となる33万円(税込)誕生したシリーズです。

このシリーズは一切継ぎ目のない「ゼロシーム」仕立てを特徴とし、アッパーやアウトソールも通常ラインとは異なる革を採用しています。

SHOLL
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今回は三陽山長の「零」シリーズのラインナップ紹介と、どんな点が特別かを解説します。

ぜひ、よろしくお願いします!

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三陽山長(SANYO YAMACHO)革靴 ビジネスシューズ
created by Rinker

著者「SHOLL(しょる)」プロフィール

1987年生まれ。国内ブランドを経て、伊ラグジュアリーブランドのデザイナーとして4年間勤務。現在はデザイナーの他、日本の服飾産業を振興するため、マーケティング支援も行っています。

素材の機能性からパターンまで精通し、シンプルかつ素敵な服装の普及に努めています。


※当サイトのコンテンツは著者の知識と専門性、情報に基づき、完全に独自に制作しています。PRの有無に関わらず、メーカーはコンテンツや評価の決定に一切の関与をしていないことを宣言します。なお、この記載は景表法第5条第3号を遵守するためのものです。

目次

三陽山長の「零」シリーズとは?

三陽山長「零(ゼロ)」シリーズは、2025年春夏コレクションとして新たに登場した、ブランド史上最高峰の高級紳士靴ラインです。

税込33万円(シューツリー付属)という価格は同ブランド史上最も高額であり、その名の通りアッパー(甲革)に一切の継ぎ目がない「ゼロシーム」仕立てを最大の特徴としています。

ファーストコレクションとして用意されたモデルは、

  • ホールカット(プレーントゥ)の「壱」
  • ストレートチップの「弐」
  • タッセルローファーの「参」

という3種類です。

いずれもブラックのボックスカーフのみを用いて、一枚の革を形成し、吊り込んで作られます。

パーツを細かく裁断して縫い合わせる通常の靴とは異なり、一枚の革を丸々用いて吊り込むことは技術的にも、さらに非常に良い革の部位を使用しないとならないため、さまざまな点で難易度が高いことも特徴。

「零」シリーズ誕生の背景には、国内ブランドと海外高級ブランドの価格帯格差を埋め、国産靴の価値向上を図りたいという思いがありました。

三陽山長は2019年に「匠」シリーズ(12万円台)、2021年に「謹製」シリーズ(16~17万円台)、2023年に「極」シリーズ(約17.6万円)といった高価格帯モデルを次々に発表し、上質を求めるビジネスパーソンから好評を得ています。

こうした実績を踏まえ、2020年頃から世界に示せる新たな製品の開発に着手し、5年の構想期間を経て辿り着いた答えがこの「ゼロシーム」仕立ての靴でした。

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卓越した「ゼロシーム仕立て」の詳細

「零」シリーズ最大のトピックであるゼロシーム製法とは、靴のアッパーを一枚革だけで仕立てる非常に特殊な手法です。

一般的な靴づくりではデザインごとに複数のパーツを裁断し縫い合わせてアッパーを形成しますが、ゼロシームではそれを行いません。

一足あたり楕円形にカットされたたった一枚の革だけを用意し、それを木型に吊り込んで(引っ張りながら形作って)靴の形状にしていきます。

当然ながら、一枚革で完璧な立体を作り出すのは極めて困難です。

通常のホールカット靴でさえ踵や内側に小さな継ぎ目を設けてフィット感や強度を確保しますが、「零」シリーズの靴にはそうした逃げ道が一切ありません。

木型への吊り込み後、革にシワや歪みが生じないよう長時間かけて形状を安定させる必要があり、さらに履き口部分やローファーのモカ(甲飾り)の位置決めのために一度吊り込んだ革を外して裁断・縫製し、ライニング(裏革)を取り付けてから再度吊り込むというプロセスを踏む必要があります。

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アッパー/ライニング/ソールの素材への妥協なき美学

最高級シリーズを名乗るにふさわしく、「零」シリーズではアッパーやソールにおいても通常ラインとは一線を画します。

アッパーにはHAAS(アース)社製「アニキス」を採用

まず、アッパーに採用されている革はフランス・HAAS(アース)社製のボックスカーフ「アニキス」です。

アニキスはアニリン仕上げの革。染料が中まで浸透しきっており、マットで厚みがあるけれど、クリームの入りが凄いことが特徴です。

そのため、ノーメンテ状態からクリームを入れると、一気に輝きを放つ面白く上質で、本当の意味で長年付き合える革です。

SHOLL
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三陽山長のサイト写真からも異様な雰囲気を放っており、モチっと感&シワっぽいものが見えますが革の特性と吊り込みからくる仕様です。

「品質が低い」ということではないので、どうぞご安心ください。

ライニング(裏革)にはデュプイ社製レザー

足が直接触れるライニング(裏革)には、革好きにはお馴染みのデュプイ社製レザーを使用しています。

フランス・デュプイ社はエルメス傘下として高品質カーフで名高いタンナーであり、その滑らかな質感は足当たりを非常にソフトにしてくれます。

ソールはJ.&F.J.ベイカー社製オークバーク

アウトソール(靴底)には英国老舗タンナーJ.ベイカー社製のオークバークレザーを採用しています。

樫の木のタンニン(渋)によってじっくり鞣された伝統的なソール用革で、繊維が緻密に引き締まっているため耐久性に優れるのが特徴です。

さらに、土踏まずからヒールにかけてのウェスト部分を黒く染める「半カラス仕上げ」が採用されており、横から見た際に靴底がエレガントな曲線を描くよう工夫されています。

従来の三陽山長モデルではウェストの形状を直線的・角張った意匠で塗り分けていましたが、「零」シリーズではあえて曲線を強調するデザインに改められているとのこと。

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その他、ディテールも紹介

また、三陽山長および零シリーズは、素材だけでなくディテールや製法においても魅力的なポイントがあります。

インソール(中敷き)にはシリーズ専用の「零-ZERO-」ロゴが金色の箔押しで記され、高級感を添えています。

また、このモデルを含め零シリーズ共通のこだわりとして、ウェルト(コバ)周りの「目付け」と呼ばれる刻み模様が挙げられます。

目付けは、ウェルト上に走る出し縫い糸に沿ってギザギザ状の模様を付ける工程ですが、「零」シリーズでは通常使われるローラーではなく職人が一本一本手作業で刻みを入れているため、細部まで手の込んだ仕上がりになっています。

パッと見では気づかれにくい部分にもクラフトマンシップを注入する姿勢に、靴好きを唸らせる矜持が感じられます。

さらに、ソールの底付け方法は、三陽山長おなじみのフレキシブル・グッドイヤーウェルト製法

通常のグッドイヤー靴にある硬いリブ(中底と本底を繋ぐテープ状部材)を排し、返りの良い柔軟な足馴染みを追求しているため、外観の美しさだけでなく履き心地の快適さにも追求しています。

SHOLL
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ちなみに、三陽山長の場合はグッドイヤー製法と言っても吊り込みは手作業で行っています。

このことによって木型を忠実に再現可能で、返りの良さも相まって、十分仕立てのハンドソーン・ウェルテッド製法さながらの機能性を誇っている点も見逃せません。

「零」シリーズのラインナップ|「壱」「弐」「参」3つの個性

 

「零」シリーズにラインナップされた3モデルは、いずれもゼロシーム仕立てという共通点を持ちながら、それぞれ異なる見た目の個性があります。

以下では各モデルの特徴を解説します。

壱(ICHI)|パーフェクト・ホールカット

壱(ICHI)は、つま先から踵まで一枚革で包み込まれた、まさに究極のホールカットシューズです。

通常のホールカット靴では避けられない踵部や内側の継ぎ目すらも排しており、どの角度から見ても一切の途切れがない意匠性を誇ります。

シンプルだからこそ誤魔化しが利かず、アッパーの立体的なメリハリ付けや甲の形作りには高度な技術が要求されますが、仕上がりは圧巻の一言です。

SHOLL
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靴全体が一つの曲線で描かれたような美しさで、ゼロシームの真価をストレートに体現したモデルです。

弐(NI)|ステッチで描くストレートチップ

弐(NI)は、一見するとクラシカルな黒のストレートチップ(内羽根のキャップトウ)に見えますが、その実態は「壱」をベースにデザインされた擬似ストレートチップです。

アッパー前部に横一直線のトウキャップがあるように見えるのも、羽根まわりでパーツを切り替えているように見えるラインも、実はすべて一枚革の上にステッチワークで“描かれた”ディテールです。

SHOLL
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ゼロシームという特別な仕立てを、あえて最もオーソドックスなドレスシューズの意匠に落とし込んだ遊び心が光るモデルです。

実際にはホールカットだけれどもストレートチップとして使用可能で、もちろん、いわゆる冠婚葬祭に対応できるモデルです。

参(SAN) |エレガンス薫るシームレス・ローファー

参(SAN)は、スーツからデニムまで合わせやすい定番デザインのタッセルローファーを、ゼロシーム仕立てで再構築した意欲作です。

ローファー本来のカジュアルさが、一枚革ならではのシャープさによって引き締まり、格別のエレガンスを宿した一足に仕上がっています。

SHOLL
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木型(ラスト)は他の2モデルと異なり、ローファー専用に設計された「R2010S」ラストを採用ているそう。

甲を低めに抑え、ヒールカップを小ぶりに設計することで、靴紐が無いローファーでも足に吸い付くようなフィット感を実現しています。

終わりに|三陽山長「零」シリーズの展開店舗と購入方法

今回は以上です。

個人的な感想を言わせてもらうと、今回の3商品はどれも素晴らしいと思います。

既成靴のレベルとしては確かなものがありますし、今回の「零」シリーズは3商品とも価格や素材の品質だけでなく、意匠性も含めて忖度なしに素晴らしいです。

SHOLL
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一つ選ぶとするとメチャクチャ迷いますが、個人的には参(SAN)推しです。

私は甲が低く踵も小さいので、ローファーでこの木型はかなり有難い点で加点という感じです。

「零」シリーズの各モデルは、2025年3月21日より下記の一部店舗&オンラインストアで発売されています。

三陽山長の最高峰ラインのため生産数は限られていますが、。遠方の方や在庫状況が気になる方は、公式オンラインストアも利用可能です。

  • 三陽山長 直営店:日本橋髙島屋S.C.店(東京)、東京ミッドタウン八重洲店、東京ミッドタウン日比谷店、玉川髙島屋S.C.店、ミッドランドスクエア店(名古屋)、グラングリーン大阪店(大阪)
  • 百貨店:伊勢丹新宿店 メンズ館紳士靴売場
  • 公式オンラインストア:SANYO ONLINE STORE(三陽商会公式通販)

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1987年生まれ。国内ブランドを経て、伊ラグジュアリーブランドのデザイナーとして4年間勤務。
現在はデザイナーの他、日本の服飾産業を振興するため、マーケティング支援も行っています。
素材の機能性からパターンまで精通し、シンプルかつ素敵な服装の普及に努めています。



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