- <参考価格>
- 33,000円(ハンドソーン)
➡特徴&こんな人にピッタリ
・3万円の予算で丁寧に作られたハンドソーン(九分仕立て)の靴
・半カラスやヒドゥンチャネル、スキンステッチなどの意匠性
・やや幅広甲高な足形をしている
こんにちは、しょるです。本日はレイマー(Raymar)という、静岡県焼津市発の革靴ブランドについてご紹介します。
最初に申し上げておくと、レイマーは、
- 「甲が高くてヨーロッパの革靴ブランドは合いにくい」
- 「30,000円くらいで良い革靴履いてみたい」
という方にピッタリ。
間違いなく、めちゃくちゃ良い革靴ブランドです。特に、ソールの作りと革質のレベルは特筆事項なので、重視している方には非常にオススメ。
一方、甲の設計はやや高め。私のように甲が低い人は、ハーフサイズアップ&インソックを敷いてちょうど良い感じです。
また、代表的な木型である「5722」は、特に小指部分のフィット感が高めのラスト。「革靴を履くと小指が痛くなる!」という方は、「0401」ラストや他のブランドを選んだ方が良いかもしれません。
なんとなく「自分は甲が高いかも?」という方は、最後まで読む価値があると思います。もちろん、合う合わないは人それぞれなので、良い靴の定義というものは変わります。
今回は、「レイマーとは」から、1年ほど履いてみたサイズ感などの感想もお伝えさせていただきますね!ぜひ、最後までよろしくお願いします!
レイマー(Raymar)とは?特徴や取扱店を解説
2016年、静岡県焼津市にてローンチした革靴ブランド
Raymar 公式HPより引用
レイマー(Raymar)は、2016年に静岡県焼津市にて誕生した革靴ブランド。母体となる有限会社サンレイは、靴作りのOEMを請け負ってきた実績を基に、オリジナルブランドを立ち上げました。
レイマーはブランド創設後、僅かな期間で革靴好きの間で話題を集めました。決して超有名なブランドではないものの、ユーザーと寄り添う新たなスタイルは“新しい”日本ブランドとなっています。
創業者である、有限会社サンレイ代表取締役の大石裕介は営業マン時代、安くても満足いく靴に出会えなかったことが設立の切欠となったとのこと。そのためか、レイマーは耐久性や歩きやすさに優れる靴になっています。
「アノネイ」や「ワインハイマー」などのカーフレザーを使用
レイマーの特徴はまず、なんといっても革靴の顔である革質が良い点。特に、ブランドタンナーを使用した3万円台のラインは、既成靴全体を見渡してもかなり良い部類です。
また、レイマーは革の使い方にも工夫が見られます。比較的傷や毛穴が目立たない部分を目立つつま先(トウ)に持ってくる一方、端革やトラ、血筋のある部分を羽根や鳩目部付近に持ってくるなど、キチンとやれることをやっているという印象。
比較的当たり個体を引いているのかもしれませんが、私が所有する革靴の中でもかなり磨いて光りやすく、きめ細かな革靴であることは間違いありません。(あれ、“そんじょそこいら”の英国靴より良くないか・・・?)
ハンドソーン(9分仕立て)の靴を3万円で提供
レイマー第二の特徴として、3万円余というプライスレンジで「ハンドソーン・ウェルテッド製法」を採用している点(ハンドソーンウェルテッド製法のメリットは、こちらの記事もお読みください)。
底付けにおいても、レイマーは高級感溢れる革靴ブランドです。多くの国産靴ブランドは、3万円前後のプライスレンジではグッドイヤー・ウェルテッド製法であるものがほとんど。3万円台でハンドソーン・ウェルテッド製法を取り入れることは相当難しいです。
さらに、ソールの底面に出し縫いが見えない「ヒドゥンチャネル」や、非接地面を黒塗りする「半カラス仕様」を採用していることも特徴。底付けの技法とソールの高級感、どちらも優秀なブランドです。
購入は「Yahoo!ショッピング」のみ
また、レイマーは原則として一次流通の購入はYahoo!ショッピングのみ。お近くの百貨店やセレクトショップ、靴専門店などには、取り扱いがないブランドです。
これは、人件費や店舗維持費、広告費などを徹底的にカットしていることが理由。そうすることで、高いコストパフォーマンスの革靴を提供しています。また、修理専門のスタッフもいないため、補修はミスターミニットなどの近くの修理屋さんなどを利用する必要があります。
ネットでの購入が不安な方もいらっしゃると思いますが、レイマーの場合、商品到着後一週間以内であれば返品・交換可能。詳しい条件などは、https://store.shopping.yahoo.co.jp/raymar-shoes/guide.html#conditionをご参照ください。
レイマーの革靴は年に数回、一度にドバっと品が入荷する傾向にあります。常に補充されているというわけではないので、気長に待ちつつチャンスを伺いましょう。
基本的に、価格に対して良すぎる革靴ブランドなので、人気モデルはすぐに売り切れてしまいます。レイマー公式ブログにもアナウンス情報があるので、定期的にチェックすることをオススメします。
他の革靴ブランド同様、一般的にはストレートチップなどが人気の模様。加えて、革靴愛好家の中では、上記写真の「Uチップ」や「レイジーマン」などの靴もポピュラーなので、ぜひお気に入りの一足を見つけてくださいね。
「アシーレ」という無料の計測サービスがある
Raymar 公式HPより引用
また、レイマーは、アシーレ(足入れ?)というサービスも展開していることが特徴。これは、ビニールの足袋を試すことで、レイマーのベストサイズが把握できるというもの。
アシーレは、レイマーの公式HPから無料で注文可能です。写真の通り、ローテクで見た目は素敵とは言えないかもしれません。しかし、足長だけではなく、ボールジョイントの位置なども分かるので結構有用な侮れないサービスです。
ちなみに、アシーレは「ややキツイかな・・・?」くらいのサイズ感を選ぶことをオススメします。アシーレで余裕があるサイズを選んでしまうと、実際の商品が“ゆるゆる”な場合が多いようです(私もそうでした)。
レイマーの木型は?ラストは「0401」&「5722」がメジャー
レイマーの木型は主に「0401」と「5722」というラストが代表的(ハンドソーン・ウェルテッド製法のシリーズの場合)。
上記二つにも当然、差はあります。しかし、どちらも比較的、
- 甲はやや高め
- 足幅は普通程度〜きもち細め
といった特徴があります。また、全体的にフィット感は強め。
「0401」ラスト
- ややロングノーズ&スタイリッシュ
- アーチサポートはやや強め
- かかとは(5722と比べれば)やや大きめ
まずは、「0401」ラスト。レイマーの基本となる木型で、気持ちロングノーズ&ラウンドトウのラストです。
ウィズは標準程度ですが、ロングノーズと併せて“シュッと”していることが特徴。
トウやサイドウォールの立ち上がりもメリハリあるシェイプを描き、先述の通り甲はやや高め。厚みがある足の方向けです。
私のように、ユニオンインペリアルくらい甲が低い革靴ブランドが合う人にとっては、レザーフルソックが一枚必要なほどには甲が高めに設計されています。
踵の描くカーブも、3万円の革靴のレベルではありません。
物凄く小さいというほどではないのですが、丁寧な底付けが光ります。ちなみに、後述の「5722」の方が踵は小さいので、よく踵が抜けるという方は「5722」向き。
ソールのウエスト部分が、かなり絞られて細くなっています。3万円の革靴でここまで出来るのは本当に凄いと思います。
また、「0401」ラストは、アーチサポートも強めに設計されていることも特徴。ソール部分の突き上げ感も強いので、心地よい刺激も得られる木型です。
「5722」ラスト
- 足幅は0401よりもゆとりあり、ただし小指部分のカーブはきつめ
- アーチサポートはやや弱め
- 踵はやや小さめ
「5722」は、レイマーを代表するもう一つのラスト。クラシックで英国的、ノーズの長さも中庸的なエッグトウの木型です。
ウィズは「0401」より同程度〜若干広めで、ゆとりがあります。ただし、小指部分からつま先にかけてキュッと曲がるので、「革靴を履いると小指が痛くなる!」という方は、「0401」の方がオススメ。
また、全体的に適度なタイト感があります。多くの方は、リーガルなどの他ブランドから、ハーフサイズアップして選ぶことが多いのもポイント(私もそうでした)。
また、踵は「0401」と比べるとやや小さめ。30,000円の靴の中では非常に優秀な部類だと思います。10万円程する英国靴でも、ここまで絞り込まれていないものも多いですからね。
アーチサポートはやや弱め。上述の小指の当たりも併せて、内反小趾気味の方には合わないことが多いラストです。「革靴を履くと、いつも小指が痛くなるんだよね・・・」という方は、「0401」ラストか他のメーカーが良いかもしれません。
とはいえ、エッグトウのつま先に向かって描くカーブのバランスが美しいラストと思います。英国的でクラシカルな雰囲気を好みつつ、健康的な足の方にオススメ。
レイマーはその他、「0027」「2005」「6673」などのラストがあります。とはいえ、これらはほとんどがグッドイヤー・ウェルテッド製法で作られたライン向けの木型。
やはり、レイマーは九分仕立てあってのブランドだと思います。可能であれば「0401」「5722」のどちらかから選ぶことをオススメします。
【評価レビュー】実際に持っている靴のクオリティは?各部位の特徴など
おはようございます。今日はスーツの日。先日ブログにしたレイマー履いてます。https://t.co/zsQbDVTAxJ pic.twitter.com/hg9r0OOKsD
— しょる | ファッションのプロ (@SHOLLWORKS) January 17, 2023
ここでは、私のレイマー“KEVIN”(クォーターブローグ)をご紹介します。月に2、3度程度の頻度で1年程履きました。
価格は29,500円(税込)、アノネイ社の「ボカルーレザー」を使用しているモデル。木型は「5722」です。
とにかく革質が良い
まず、レイマーを手に取って思ったのが、噂通り革質が良い。先述の通り、3万円クラスの中では相当に良い部類だと思います。
どうしてもこの価格帯の革靴ブランドだと、アッパーの表面がザラザラしている個体がほとんどです。むしろ、レイマーが異常過ぎるとも言えます(レインシューズのラインなどは、そこまで良い革ではないのですが)。
ラインナップや個体差によって違いはありますが、基本的に3万円台の「アノネイ」や「ワインハイマー」の革を採用しているモデルは、非常に上質なカーフが使用されています。
もちろん、厳密にはもっとグレードの高い革はありますが、本当にどこに履いていっても恥ずかしくないレベルのアッパーです。あっぱれ。
正面のつま先~甲部分の革には毛穴やトラ、虫刺されなどが見えず、「この靴、10万円します」でも十分通るレベル。
先述の通り、レイマーは革の場所や「トラ」「毛穴」などの有無によって革靴のどこに使用するかを賢く配分しています。
トウには綺麗できめ細かい部分を使用しており、一方で写真の羽根部分には少しシワや血管跡が感じられるものを使用しています。
もちろん、「全身傷のない革が良い!」という人もいることは理解できます。しかし、今はどの革靴ブランドも、限られた革を有効活用する方向にシフトしている時代。(商品なので個体差や限度はありますが)私としては、この工夫は好印象です。
ソールの内振りもしっかりと採用されている
ソール部分に関しても紹介して参りましたが、只者の靴ではない感が溢れています。全体的なシェイプはクラシックでありつつ、ソール周りはドレッシーな仕様がてんこ盛り。
レイマーの場合、ソールの見た目だけではなく(人間の足の骨格に沿って)内振りの角度もキチンとついています。
内振りとは、靴の中心線からどれだけ内側に入っていくか振られている仕様。基本的には内振りは足の形に合っているため、一般的には歩行がしやすくなると言われています。
ただし、内振りは必ずしも「付けられていれば良い靴」というわけではありません。人のバランスや骨格、歩き方によっては、内に振られている結果、親指側や小指側に荷重が寄って痛くなるということもあり得ます。
先述のアーチサポートなども同様ですが、「採用されていれば正義」というわけではないのですね。あなたのバランスの取り方によって、各部分の形や仕様の最適解は異なります。
足が痛くなる方は、内振り角度がつき過ぎていない方が良い場合もあります。あくまで、「一般的なバランスの方には、ある程度内振りされていた方が良い(場合が多い)」とお考えください。
やはりハンドソーン、サイズ感の変化が小さい
あとは、購入後のサイズ変化が小さいこともレイマーの特徴。特に、コルクが敷き詰められたグッドイヤー・ウェルテッド製法と比べると、購入後初期からほとんど変わらない点は良いと思います。
もちろん、グッドイヤー・ウェルテッド製法特有の“コルクの沈み込み”で、ハーフサイズ程変化することに愛着を沸かせられることも理解できます。しかし、人によっては「サイズミスしてしまった」と思ってしまったり、初期段階でかなり痛い思いをしなくてはなりません。
そこまで含めて楽しめるならまだしも、基本的にはサイズ変化の小さい方が良いことは間違いありません。
踵はまずまずの及第点
踵の大きさ&フィッティングに関しては、及第点だと思いました。他のネット上の情報では「踵が小さい」といった評判をよく聞くのですが、流石に「サンクリスピン」や「ヴァーシュ」と比べると大きいです。
とはいえ、踵がかなり小さめな私が履いても極端にズレることはありません。100点ではないものの、英国靴でもバーカーなどと比べると小さいので悪くはありません。
ひとえに「踵が小さい」といえど、様々な商品や履く人の事情があるので難しい部分ではあります。総合的には“まあまあ”だと思いました。
レイマーのサイズ感&フィッティングは?
基本的には、リーガル+0.5cm程度が目安
レイマーのサイズ感が気になる方は多いと思います。ネットショッピング限定とはいえ、状態を悪くしなければ1週間以内の返品が可能なのです。しかし、出来れば一発でベストサイズを選びたいですよね。
私の場合、レイマー「0401」「5722」共に27cm(US9)を履いています。足長的には26.5ですが、「0401」はつま先全体が、「5722」は小指の当たりがキツいので27cmにしています。また、私はやや甲が低いので、ハーフサイズアップ&レザーのフルインソックを敷いて履いています。
参考までに、私の足形は、人差し指の長いギリシャ型で、踵~人差し指の先端までが27.5cm、親指までが27cmで足幅の一番長い部分が10cm。甲も足幅もサイズに対して標準的~やや細い程度で、あまり特徴がありません。
レイマーは履いていて「小指への当たりがやや感じるかな?」くらいですが、痛くはならないので許容範囲です。
確かに、私の足形にはベストブランドとは言えません。しかし、足の甲がそれなりにある方&革靴を履いても小指が痛くならない方にとっては本当に良いブランドです。ぜひ、トライしてみてください。
甲が低い人は、このブランドもおすすめ
とはいえ、明らかに甲が低い人は、最初から他のブランドをトライした方が合う可能性が高いことは間違いありません。
甲の低い有名ブランドでレイマーの競合メーカーといえば、なんと言ってもユニオンインペリアル。日本の革靴ブランドの中でも甲が低いことで有名です。
レイマーは決して、ウィズ自体が狭いブランドではありません。しかし、小指部分のカーブはキツめなので、「ウィズが狭い」と思ってしまう方が多くなる木型です。
また、甲は良いけれど「幅全体や、小指部分が狭くて痛い」という場合は、
- リーガル(ウィズは同じEEだが、トウの形や内振り角度が浅いため余裕がある)
- スコッチグレインにはEEEや4Eモデルが販売されている
などの選択肢も検討してみてください。
確かに、これらのブランドはレイマーほど「コストパフォーマンスが高い」とは言えません(ユニオンインペリアル、スコッチグレインともに+1万円以上で互角くらい)。
とはいえ、履いていて痛くなるくらいなら、10,000円程度プラスして合うブランドの方が絶対に良いですよ。
日本の有名革靴ブランドでは、甲が低い順に概ねユニオンインペリアル→スコッチグレイン→リーガル=レイマーとなっています(固有の木型にも拠りますので、あくまで目安程度にしてください)。
ハーフサイズ大きめ&レザーの中敷き(インソック)を入れるのもオススメ
私の場合、レイマーの靴は
- 26.5cm(8.5)・・・羽根は開くけれど、小指が痛い
- 27.0cm(9)・・・ほとんど痛くないけれど、甲が高くて内羽根が閉じてしまう
という悩みを持っていました。
「甲が高くて羽根が閉じる」「革靴で小指が痛くなる」という悩み対して、ハーフサイズ大き目&革の中敷きを入れるという対応がもっとも廉価&私に合いました。
せっかく買ってみたのに甲が高くて羽根が閉じ切ってしまった場合、こちらの方法を試すのも良いかもしれません。
中敷きの場合、例えば上記の「サフィール」や「ミスターミニット」などから本革のインソールが販売されています。
ちなみに、中敷きは本革のものを選ぶことを強くオススメします。合成皮革は吸湿性がないものが殆どなので、履いている内にムレてしまうので避けた方が良いでしょう。
もちろん、インソールはレイマー以外の革靴にも使うことが可能です。あるいは、ユニオンワークスなどの靴修理店では、その靴にピッタリ合ったレザーインソールを作成してくれます。時間が掛かっても良い方はこちらも◎。
今回は以上です。
レイマーは、間違いなく非常に良いブランド。30,000円の革靴としては非常に上質で、(原則オンライン限定ではあるものの)買い物をする際の対応もとても丁寧で、真摯に対応していただけます。
今回の説明の上で「自分に合いそうだな、合うかもしれない」と思った方には、ぜひトライしてほしい革靴です。
また、レイマーも年々ラインナップが豊富になりました。今回ご紹介したハンドソーンの革靴シリーズ以外にも、2万円余のグッドイヤー・ウェルテッド製法や、雨に強い仕様の靴などもあります。
しかし、フルソック仕様でサイズ感が微妙に異なったり、革質があまり良くなかったりします。レイマーの良さを体感できるかといえば、少し微妙かもしれません。
個人的には、レイマーは九分仕立てのハンドソーン・ウェルテッド製法で、「アノネイ」や「ワインハイマー」などの革を使用した革靴をオススメします。
ぜひ、レイマーを検討している人に有益な情報となれたら嬉しいです!
おしまい!
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