ゴアテックスの洗濯、正解はこれ|プロが教える頻度・洗剤・乾燥機まで【完全版】
そんな悩みを抱えたまま、ゴアテックス商品をそのままクローゼットにしまい込んでいないでしょうか。
あるいは、「汚れたら拭けばいい」「シーズン終わりにクリーニングに出せばいい」と考えていないでしょうか。
結論、ゴアテックス商品に限っていうならば、それらはあなたの愛用するウェアの寿命をかえって縮める行為です。

ゴアテックスなどの防水透湿素材にとって、実は構造上、最大の敵になるのは「洗濯」ではなく「汚れ(特に皮脂)」です。
正しい知識とケアを行えば、機能は驚くほど回復し、10年選手としてあなたの相棒であり続け得ることも押さえておいて損はありません。

というわけで今回は、ファッションのプロである私しょる(@SHOLLWORKS)が、「なぜ洗う必要があるのか」という構造的理由から「失敗しない洗濯の全手順」「洗剤の選び方」まで紹介します。
結論|ゴアテックスは「洗わない」が一番の劣化原因

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まず、多くの人が抱く、ゴアテックスは洗うと防水性が落ちるという誤解について。
これは正確には、「間違った洗い方をすれば機能は落ちるが、洗わなければ機能は死に、素材ごと劣化する」で、つまり「ちゃんとした手順で正しく洗うことが一番」です。

なぜ、ゴアテックスは洗わなければならないのか?
その理由は、この素材が持つ「防水透湿」のメカニズムを理解すれば、自ずと分かります。
透湿性の敵は「目詰まり」

ゴアテックスが雨を防ぎながら湿気を逃がす(透湿)のは、生地にラミネートされた「GORE-TEXメンブレン」という極薄のフィルムのおかげです。
このメンブレンには、水滴の2万分の1、水蒸気分子の700倍という大きさの微細な孔(あな)が無数に空いています。
- 雨(水滴):大きすぎて孔を通れない = 防水
- 汗(水蒸気):小さいので孔を通り抜ける = 透湿
という構造になっていることで、雨は弾き、体内の湿度は外へ逃がせる構造になっています。
しかし、着用によって付着する「皮脂」「汗」「泥」「大気中の塵」は、この微細な孔を塞いでしまいます。

こうなってしまうと網戸にホコリが詰まれば風が通らなくなるのと同じで、汚れて洗っていないゴアテックスは単なる「蒸れるビニール合羽」に成り下がります。
皮脂汚れによる「剥離」と「漏水」のリスク
さらに深刻なのが、目に見えない「皮脂汚れ」です。
人間の皮脂や汗は、時間の経過とともに酸化して素材を攻撃します。
特に、生地同士を貼り合わせている接着剤や、縫い目を塞ぐ「シームテープ」は、皮脂汚れが蓄積すると加水分解(化学的な劣化)を加速させ、最終的には剥がれてしまいます。
皮脂の油分によって生地が「水を引き寄せる性質(親水性)」を持たせたり、表面張力低下の原因になり、本来水を弾くはずの生地表面に水を染み込ませてしまいます。

「汚れていないように見えるから洗わない」は最悪手です。
目に見えなくても、首周りや袖口には確実に皮脂が付着しているため、定期的な洗濯こそが機能を維持する唯一のメンテナンス方法です。
洗濯頻度の最適解|シーン別、どのくらいの頻度で洗うべき?
では、具体的にどれくらいの頻度で洗えばよいのでしょうか?
メーカー推奨や私の経験則を統合すると、以下の頻度が「機能を維持するボーダーライン」です。
登山や汗をかくようなアウトドアシーンで使用した場合
- 頻度:使用後、毎回(できれば当日〜翌日)
- 理由:大量の汗と皮脂、泥汚れが付着しています。これらを放置すると、たった数日で生地の撥水基が寝てしまい、透湿孔が詰まります。
街着・通勤・軽いハイキングで使用した場合
- 頻度:1〜2ヶ月に1回、または「雨に濡れて水を弾かなくなった」と感じたとき
- 理由:目立つ汚れがなくても、排気ガスや微細な埃、襟元の皮脂は蓄積しています。「シーズン終わりに1回」では少なすぎます。

「ちょっと着ただけだから」と洗わずにクローゼットに戻す行為は、ファンデーションを塗ったまま寝る肌と同じだと思ってください。
ゴアテックスは軽量・高機能な素材ですが、ちゃんと定期的にメイクオフしてあげる必要があります。
準備と洗濯手順|プロが教える「失敗しない」ゴアテックスの荒い方
ここからは、実際に家庭の洗濯機でゴアテックスを洗う手順を解説します。
特別な技術は必要ありませんが、「必ず守るべきルール」があります。
これを無視すると、生地を傷めたり、洗濯機を故障させたりする原因になります。
この5つの手順を参考にしてください
- 40℃で洗う(目安)
- 液体洗剤を少量(入れすぎない)
- すすぎは2回(洗剤残りを防ぐ)
- 脱水(スピン)は最小限(低回転・短時間)
- 乾いたら乾燥機でさらに約20分(または低温アイロン、スチームなし)
前処理:全てのファスナーを閉じる
洗濯機に入れる前に、以下のチェックを必ず行ってください。
- 全てのファスナー・ボタン・ベルクロを閉じる
フロントジップ、ポケット、脇下のベンチレーションなど全てです。開けたまま洗うと、ファスナーの金属パーツが生地を傷つけたり、型崩れの原因になります。 - ドローコード(ゴム紐)を緩める
フードや裾のゴムが縮まったままだと、その部分に洗剤が溜まりやすく、洗浄ムラになります。 - ポケットの中身を空にする
ティッシュ一枚でも残っていると大惨事です。
「裏返し」にしてネットに入れる
これには諸説ありますが、私的には「裏返してネットに入れる」をおすすめ(特にタウンユース用)です。
- 理由①:皮脂汚れへのアプローチ
最も落としたい汚れである「皮脂」は、肌に触れる内側に付着しています。裏返すことで洗剤液や水流が直接汚れに当たりやすくなります。 - 理由②:表地の保護
表地にはDWR(耐久撥水加工)が施されています。洗濯槽との摩擦によるDWRの摩耗を最小限に抑えるためにも、裏返しが有効です。
ただし、泥汚れが酷い場合は、表のまま泥をシャワーで洗い流してから、洗濯機へ投入してください。
「液体」の「中性」洗剤を投入する
洗剤の選び方については後述しますが、ここでは「液体の中性洗剤(または専用洗剤)」を使用する前提で進めます。
絶対NGなものとしては、
- 粉末洗剤:溶け残りがメンブレンの孔に詰まる可能性があります。
- 柔軟剤:これは「撥水を殺す毒」です。柔軟成分(界面活性剤)が生地表面に残り、水を吸い寄せてしまいます。絶対に使用しないでください。
- 漂白剤:生地を劣化させます。
が、挙げられます。
洗濯機の設定は「40℃」「すすぎ2回」「脱水は最小限」で
GORE-TEXの公式ガイドラインでも推奨されていますが、水温は「ぬるま湯(40℃程度)」が理想的です。
というのも、皮脂汚れは体温以上(約37℃以上)で溶け出しやすくなり、冷水では皮脂が固まったまま落ちにくいことが理由です。
設定コース
- 水流:「標準」または「弱水流(おしゃれ着洗いなど)」
- 脱水:最小限(低回転・短時間。無理に回し切らない)
防水素材は水を通しにくいぶん、濡れた状態だと偏って洗濯槽が暴れやすいです。もし揺れが出たら、そこで止めてOK。バスタオルに挟んで軽く押し、表面の水気を取ってから干せば十分です。 - すすぎ:「注水すすぎ2回以上」
洗剤残りは撥水性の天敵です。標準設定よりも多めにすすぎを行い、成分を完全に洗い流してください。
乾燥と熱処理|撥水を「復活」させる魔法の工程
洗濯が終わったら、次は「熱」を加えます。

どういうことかというと、ゴアテックスは熱を加えると「水玉がコロコロ転がる撥水性」を取り戻す性質があるためです。
なぜ「熱」が必要なのか?(DWRの科学)

Image Photo by GORE-TEX
ゴアテックスの表地には、DWR(耐久撥水)加工という、微細な産毛のような柱が無数に立っています。
その寝てしまった柱たちに熱を加えると、倒れた柱が再び起き上がって整列する(=撥水復活)という性質があります。

この「熱による再活性化」こそがメンテナンスの肝で、自然乾燥だけでは柱が寝たままになってしまいます。
ケース1:乾燥機が使える場合(ベスト)
ゴアテックス商品の洗濯表示を見て、タンブル乾燥(乾燥機)のマークにバツ印がなければ、迷わず乾燥機を使ってください。
- 設定:低温(Low / 60℃以下)
高温は厳禁です。シームテープの剥離や生地の収縮を招きます。 - 時間:20分〜40分程度
乾いた状態で、さらに20分ほど温風を当てるのがコツです。この「乾いた後の熱風」が撥水基を立たせます。
ケース2:乾燥機NGの場合(ベター)
洗濯表示で乾燥機が禁止されている、あるいは自宅に乾燥機がない場合は、以下の手順で「熱入れ」を行います。
- 陰干し:まずは直射日光を避け、風通しの良い場所でハンガーにかけて完全に乾かします。
- アイロン(低温):ここが重要で、乾いたウェアの上から、当て布(手ぬぐいや薄手のハンカチ)をして低温(スチームなし)で優しくアイロンをかけます。ジッパーや硬いパーツを避け、生地全体に熱を伝えてください。これだけで驚くほど水弾きが戻ります。
- ドライヤー(緊急策):アイロンも怖いという方は、ドライヤーの温風を10〜15cm離して当てるのも有効ですが、ムラになりやすいのであくまで簡易的な処置と考えてください。

洗濯は必ずウェアの洗濯表示(ケアタグ)とメーカー案内を優先してください。
素材やモデルによって、乾燥機・アイロン・撥水剤が使えない場合があります。
例外:GORE-TEX SHAKEDRY™など、熱入れや撥水剤がNGのモデル
SHAKEDRYのように、「膜そのもの」が外側になっているタイプはケアのルールが別物です。
見た目が似ていても、やることが変わります。
- 乾燥機:NGの場合があります(タグ優先)
- アイロン:NGの場合があります(タグ優先)
- 撥水剤:不要、またはNGの場合があります(タグ優先)

洗濯は必ずウェアの洗濯表示(ケアタグ)とメーカー案内を優先してください。
素材やモデルによって、乾燥機・アイロン・撥水剤が使えない場合があります。
洗剤の選び方|「専用品」は高いだけなのか?
ゴアテックスには専用洗剤もありますが、決して専用洗剤は必須ではありません。
大事なのは、液体洗剤を少量にして、すすぎをしっかりして、成分を残さないことです。
ただし、洗濯に不安がある人は(多少お金を掛けてでも)専用洗剤を選ぶのは合理的でもあります。
余計な添加剤が少なく、失敗しにくい設計のものが多いため、確実に数万円のウェアを守る「手間と不安の削減コスト」だと思えば、十分に元が取れます。

基本的に、市販の家庭用洗剤(ア〇ックやアリ〇ールなど)は、「白く、ふわふわに、良い香りにする」ために設計されているものが多いです。
蛍光増白剤、柔軟成分、香料などは、ゴアテックスの「透湿孔を目詰まりさせる接着剤」として作用してしまうため、可能であれば専用洗剤が良いとは思います。
プロが選ぶ、ゴアテックス向けの専用洗剤を紹介
数あるテックウォッシュの中から、私が(実際に使ったことがあって)信頼できると判断したものを厳選しました。
【迷ったらこれ】Nikwax(ニクワックス)テックウォッシュ
- 特徴:世界的なド定番。水性で環境に優しく、強力な洗浄力はないものの、DWRを傷つけずに汚れだけを落とすバランスが絶妙。
- おすすめな人:初めて専用洗剤を買う人、失敗したくない人。
- SHOLLの視点:独特の酢酸のような匂いがありますが、乾けば消えます。撥水剤(TX.ダイレクト)との相性が抜群に良く、セット使いが鉄板です。
【機能美重視】Grangers(グランジャーズ)パフォーマンスウォッシュ
- 特徴:アクリルポリマー系で、Nikwaxよりも匂いが少なく、低温での熱処理でも撥水効果が出やすい設計。
- おすすめな人:街着としての利用が多く、匂いに敏感な人。
- SHOLLの視点:Patagoniaなどが推奨していることもあり、ブランドとの親和性が高いです。ボトルデザインも洗練されており、ランドリールームに置いても様になります。
【無臭派の別解】STORM Apparel Wash(ストーム アパレルウォッシュ)
- 特徴:pHニュートラル、無臭、蛍光増白剤不使用を明記し、GORE-TEX等にも対応すると説明されています。
- おすすめな人:とにかく無臭がいい人、洗剤の香りが残るのが嫌な人。
- SHOLLの視点:無臭・増白剤なしを明記している時点で「余計なものを残さない」方向性がハッキリしており、街着運用のハードシェルと相性が良いタイプです。
【最後の手段】家庭用洗剤を使うなら
どうしても専用洗剤がない場合、以下の条件を全て満たすものだけが代用可能です。
- 液体の「中性」(弱アルカリ性は生地への負担増)
- 「柔軟剤」が入っていない
- 「蛍光増白剤」が入っていない
- 「漂白剤」が入っていない
これらを満たすのは、いわゆる「おしゃれ着洗い洗剤(エマール等)」の一部など。
ただし、成分表示を睨めっこする手間とリスクを考えれば、Amazonで専用洗剤をポチる方が遥かに合理的です。
撥水剤(スプレー)は必要か?
洗濯して熱処理をしても、どうしても水が弾かない(ベタッと濡れる)場合、DWR加工自体の寿命か摩耗による剥離が起っている可能性があります。
この場合、どうしても撥水機能を取り戻したければ「撥水剤(リペア剤)」の出番となります。
撥水剤には主に「漬け込みタイプ」と「スプレータイプ」がありますが、ゴアテックス商品の場合はスプレータイプがおすすめです。
「漬け込みタイプ」vs「スプレータイプ」
- 漬け込み(Wash-in):洗濯機に入れて回すだけ。簡単だが、ウェアの内側(裏地)まで撥水加工されてしまい、汗を吸わなくなる欠点がある。
- スプレー(Spray-on):濡れたウェアの表地だけに吹きかける。透湿性を損なわないため、こちらを強く推奨します。

洗濯直後の濡れた状態で、表面全体にスプレー➡余分な液を拭き取る➡乾燥機またはアイロンで熱処理します。
上述した洗剤のメーカーはいずれも撥水スプレーも販売しているので、必要あればセットで選んでみてください。
【Q&A】ゴアテックス洗濯の疑問に答える
そして、ここまでの内容やその他をまとめて、Q&A形式にしました。
終わりに|ゴアテックスは正しい方法で積極的にLet’s洗濯
今回は以上です。
ゴアテックスに洗濯が必要な理由と、洗濯の手順、そしてケアグッズについて理解していただけたでしょうか。
今日のポイント
- 洗わないのは悪:皮脂と汚れこそがゴアテックスを殺す。
- 頻度は「汚れたらすぐ」か「月1回」。
- 洗剤は「専用品」がベスト:柔軟剤は絶対NG。
- 「熱」を加えるまでが洗濯:乾燥機かアイロンで撥水を起こす。
「高い服だから大切にする」=なるべく洗濯しないで着る、保管するではありません。
少なくともゴアテックスに関しては、本当の意味で大切にするとは、ガシガシ着倒して、その都度正しいケアをして、新品同様の機能を取り戻してやることです。

これからゴアテックスを購入しようと検討している方も、すでに所有しているけれど、いまいちどうすれば良いか分からないまま着ていた方も。
ぜひ、正しい付き合い方と共に愛用してくださいね。
おしまい!
(少しでもお役に立てたなら、SNSに拡散していただけると嬉しいです!)