スピングルから「折り鶴スニーカー」の新作が登場、広島の祈りを纏う折り鶴再生糸モデル
スピングルカンパニーが、広島に寄せられる折り鶴を再生した糸で作るスニーカーの新作2品番「SP-1005」および「SP-1005D」を、2025年6月25日より順次発売することを発表しました 。
この一足は、単なるサステナブルな新製品というだけでなく、「平和の象徴」が抱える現実的な課題と、ものづくりの地としての広島の文脈、そして日本の実直なクラフトマンシップが交差する意味を宿したプロダクトです。


「折り鶴スニーカー」の概要|祈りを込めて作られたスニーカー

まずは、今回発表されたスニーカーの具体的な特徴を見ていきましょう。
折り鶴再生糸から生まれるキャンバス生地
スニーカーのアッパーに使用されているのは、折り鶴から再生された「折り鶴レーヨン糸」を12%含む、特製のキャンバス生地です。
この糸は、株式会社カミーノによる折り鶴再生プロジェクト「ONGAESHI」のプロダクトであり、届けられた祈りを新たな形へと生まれ変わらせています。
糸の紡績や製織、生地の染色は、スピングルカンパニーの拠点に近い広島県福山市内の工場で行われています。
広島の自然を映した2品番・8色の展開
製品は、2品番・計8色で展開されます。
一つは、糸が持つそのままの色を活かした生成り色の「SP-1005」。そしてもう一つが、平和を象徴する虹をモチーフに、広島の自然から着想を得た7つのカラーを持つ「SP-1005D」です。
撫子や萱草、葵といった、日本古来の伝統色から引用された色名も特徴的です 。
バルカナイズ製法とサステナブルな仕様
製造は、現在では国内の数社でしか行われていない、スピングルカンパニーの代名詞でもある「バルカナイズ製法」が用いられています。
アッパーとゴム製の靴底を、熱と圧力で強力に結合させるこの製法は、丈夫で型崩れしにくいという利点があります。
また、ライニング(内張り)には、防臭・抗菌・防カビ機能を持ち、吸汗性・拡散性に優れた機能性素材「COOL MAXIM」を採用。
その55%がペットボトルや繊維くずなどの再生素材で構成されており、細部にまでサステナビリティへの配慮がなされています。
プロダクトの背景にある「広島」という文脈
このスニーカーが生まれた背景を理解することで、このプロダクトが持つ本当の価値が見えてきます。
平和の象徴「折り鶴」が抱える現実的な課題
広島の平和記念公園には、今もなお、世界中から平和への祈りを込めた膨大な数の折り鶴が届けられています。
それは間違いなく尊い行為の集積ですが、同時に「受け取った後、どうするのか」という現実的な課題も内包しています。
祈りが込められた鶴を、単に「紙」として処分することへのためらい。
この、多くの人が抱くであろう複雑な感情と、物理的な保管・処理の問題というジレンマに対し、近年、広島では様々なアップサイクルの試みが行われており、今回のプロジェクトもその流れを汲むものです。
広島の企業だからこその着想と技術
このプロジェクトが持つ意味の深さは、スピングルカンパニーが広島に根ざす企業であるという事実と不可分です。
この地域の課題に、自分たちが持つ「ものづくり」の技術で向き合い、折り鶴を「糸」へと再生し、自社の根幹である「スニーカー」へと昇華させるという着想が生まれています。
次世代へ繋ぐ平和へのメッセージ
この取り組みは、製品の販売だけに留まりません。
スピングルカンパニーは、国連訓練調査研究所(ユニタール)広島事務所が実施する研修に参加する、国内外の若者たちへスニーカーを寄贈することも発表しています。
これは、被爆・終戦80年の節目にあたり、広島から世界へ平和のメッセージを発信する次世代の活動を、文字通り「足元から支えたい」という姿勢の表れと読み取れます。
「折り鶴スニーカー」の製品詳細
- 品番:SP-1005
- カラー:Kinari
- 価格:20,900円(税込)
- 品番:SP-1005D
- カラー:Nadeshiko, Kanzou, Soga, Asamidori, Tsuyukusa, Konjyou, Aoi
- 価格:22,000円(税込)
- 共通仕様
- アッパー:折り鶴から再生したレーヨンを12%含むキャンバス生地
- サイズ:XS~XLの7サイズ展開(ユニセックス)
- 発売日:2025年6月25日から順次
社会的な課題、精神的な価値、地域性、そしてものづくりの技術。
これら全てが、一足のスニーカーという日常的なプロダクトの中に織り込まれていることと、その多層的な意味の重なりこそが、このスニーカーを、あらゆる点で「日本らしい」と感じさせる理由と考えます。

