こんにちは、しょる(@SHOLLWORKS)です。今回は「アメカジ」の定義やスタイル、ブランドについて。
アメリカンカジュアル、通称「アメカジ」は、読んで字の如くアメリカのルーツや歴史に基づいたカジュアルファッション。
洋装文化の中心国であるアメリカの影響力も相まって、世界中で愛されている服や靴が目白押しなジャンルです。
アメカジの多くは軍や労働者階級のスタイルにルーツを持ち、それらが若者文化として取り入れられ、やがて国内外に広まることで「ファッション」として定着しました。
日本では戦後から高度経済成長期、70年代、80年代・・・と、豊かになっていく過程で様々な要素が絡み合い、そして、日本独自の文化や、却って国外へ出ていくカルチャーとも相まって「アメカジ」となっています。
この記事では、ファッションのプロである私しょるが、アメカジの歴史から年代ごとのトレンド、初心者から上級者までできる具体的な取り入れ方までを詳しく解説。
アメカジの魅力や、代表的なアイテムについて紹介していきます。
アメカジファッションの奥深さや日本のファッションとの関りを知ることで、日常のコーディネートがさらに楽しくなります。
まずは、アメカジの歴史と変遷から紹介します。それでは行きましょう!
「アメカジ」とは?起源や歴史、日本でのブームについて解説
アメカジ(アメリカンカジュアル)は、広義にはアメリカ風の衣料品、またはその着こなしのこと。
実は「アメカジ」という定義自体は日本独自のもので、戦後や1960年代から続く複数回のブームによって、今日のアメカジが構築されました。
元々は、第二次世界大戦後の進駐軍や洋画、音楽を通じて、徐々にアメリカのファッション文化が浸透し始めました。
多くは米軍の放出品がアメ横などに流れたところから始まり、日本国民が豊かになるにつれてジーンズ、Tシャツ、レザージャケット、スニーカーといったものが一般へと普及し、ファッションとして確立していきます。
「進駐軍」と「ブロンディ」が、アメリカへのあこがれを搔き立てた
戦後、日本の「敵国」だったアメリカの文化は、一転してあこがれの的になります。
進駐軍の影響や、「週刊朝日」「朝日新聞」に掲載されていた「ブロンディ(アメリカの漫画です)」は、日本人に服装を含めたライフスタイルを伝える役割を担っていました。
Image Photo by 4travel
写真は上野・アメ横の「中田商店」。
写真は現代ですが、戦後すぐの日本人には購入できず、1950年代に差し掛かるとアメ横などで放出品が販売されるようになったそうです。
1960年代の「アイビールック」も、広義の「アメカジ」
1960年代、日本で流行した「アイビールック」も、アメリカ(調)のブランドやアイテムが日本に広まる契機となります。
朝鮮戦争の軍需などによる復興から急速に成長を遂げていた時代、若者を中心に服装に対するルールという名の「スタイル」が取り入れられました。
それが、メンズにおいてアメリカに影響されたブランドによる、アイビールックでした。
アイビールック
中心となったのが、「ヴァンヂャケット」創業者にして、日本の“メンズファッションの神様”と呼ばれた故・石津健介氏でした。
「アメリカ東部のエリート大学生が何を好むか」を渡米して研究し、当時の雑誌である「男の服飾讀本(現在のMEN’S CLUB)」にて紹介していました。
石津氏は「TPO(タイム・プレイス・オケイジョン)」という言葉の発明者でもあり、ライフスタイルとしてTPOに合わせた服装を提案することで、若者の服装に彩りを与えようと試みた人物でもあります。
石津氏はアメリカ東海岸の「ブレザー」や「コインローファー」といったものを日本に伝えるだけでなく、「スイングトップ(英語圏ではハリントンジャケット)」や「トレーナー(英語圏ではスウェット)」を紹介し、これら和製英語の発明者でもあります。
東京オリンピックに沸き、急速に都市開発がされていた東京・銀座にある「みゆき通り」に集まる“みゆき族”にとって、ヴァンヂャケットはあこがれのブランドとして、「アメリカンなスタイル」を提供していました。
ちなみに、当時の本場「アイヴィー」たちの多くは、実際は「ヴァンヂャケット」といったブランドのスタイルよりも、もっとラフな格好だったようです。
1960年代~1970年代に「アメカジ」アイテムが普及
また、1960年代~1970年代にかけて、先述のアイビールックに追随するようにアメリカの「労働者階級」や「庶民」のファッションが日本に普及し始めます。
特に、有名なのが今でもアメカジの象徴である「ジーンズ」。
元々は、戦後のアメ横にリーバイスなどの中古品は出回っていましたが、アイビーなどと同様にあこがれの的でありました。
あとは、1950年代に入り脱水機能付きの洗濯機、1960年代に二層式洗濯機が徐々に普及したことも、ジーンズが知られ、出回る切欠になったようです。
ジーンズの欠点である「渇きにくさ」が一転して、「気軽に穿けて洗える丈夫なズボン」として受け入れられるようになりました。
他にも、チノパン/カーゴパンツやミリタリージャケット、キャンバススニーカーなどが日本に紹介され、徐々に普及した結果、アメカジのアイテムとして定着していきました。
この時代は多くに共通して言えるのが「アメリカ文化へのあこがれ」と、学生運動に通じる「労働者意識」でした。
和服や背広しかない時代に新しく、楽で動きやすいんだけれど、労働者的でシニカルな部分もある。そんなスタンスが受け入れられたのがこの時代の定番たちです。
この時代は、後のユースカルチャーの発信源となる渋谷にパルコが開業(1973年開業)し、追うように原宿にBEAMS(当時は「アメリカンライフショップ ビームス」、1976年開業)がオープンしたことなども、独自の「アメカジ文化」を確立する切欠になりました。
また、70年代の末頃からは、日本メーカーによる高品質な「レプリカジーンズ」が誕生したことも、徐々に「日本式のアメカジ」を作り上げる下地となりました。
1970年代後半には「アウトドア」「アメトラ」も伝播する
1970年代になり、ヒッピーや反戦といったトレンドがベトナム戦争終結によって一段落すると、今度はアメリカの若者たちが「健康志向」「エコロジー」に傾倒します。
これらの結果、「アウトドアブーム」が巻き起こり、その影響は日本にも伝わります。
背景と広がり
同じく日本でも1970年代後半、高度経済成長期を経て人々の生活水準が大きく向上し、レジャーや趣味に割ける時間とお金が増えていきました。
そこにアメリカ発の意識が融合し、キャンプやハイキング、登山といった活動に興味を持つ層が急増します。
日本のアウトドア愛好家や若者たちは雑誌や海外旅行、テレビ番組などを通じて、機能性とデザイン性を兼ね備えた「アメリカ製の装備」に魅了されます。
特に1976年に登場した「ゴアテックス」のような新素材や、軽量化・耐久性の強化といった革新的技術が「本物志向」を後押ししました。
マウンテンパーカーやリュックが普及
結果として、この時期に「マウンテンパーカー」や「アウトドアリュック」「ダウンジャケット」が普及していきました。
例えば、アウトドア系の主なブランドとしては、
- The North Face(ザ・ノース・フェイス)
- Patagonia(パタゴニア)
- L.L.Bean(エル・エル・ビーン)
- Eddie Bauer(エディー・バウアー)
などが挙げられます。
これらのブランドは当時の若者にとって、ただ機能が高いだけでなく「アメリカらしい無骨さ」や「本物志向」のイメージを体現するアイテムでした。
やがてファッション雑誌「POPEYE」や「MEN’S CLUB」がこぞって取り上げ、アウトドア装備を日常のカジュアルウェアに落とし込むスタイルが広まり始めます。
日本の場合、コンパクトシティ構造や豊かな自然環境とも相まって、タウンユースとアウトドアギアの境界を曖昧にする、独特の日本的スタイルを形成していくことになります。
アメトラの概念と日本への浸透
一方、「日本人が豊かになったこと」は、違う路線をアメリカから呼び込む契機になりました。
アメリカントラディショナル、通称“アメトラ”は、ブレザーやボタンダウンシャツ、レジメンタルストライプのネクタイなどを組み合わせた伝統的な装いを指します。
1960年代にアイビールックとして日本に紹介され、一部の学生やファッション愛好家の間でブームとなりましたが、70年代後半になると“本場物”が上陸し、再び注目が高まっていきました。
「豊かになった」という威信から、欧や米の、いわゆる「上流階級」(に近い)スタイルが好まれるようになったのもこの時代です。
アウトドアブーム同様に「アメリカの本物を知りたい」「本場の雰囲気を味わいたい」という憧れの気持ちが根強く存在していたことも見逃せません。
Image Photo by BROOKS BROTHERS
主なアメトラブランドとしては、
- Brooks Brothers(ブルックスブラザーズ)
- J.Press(ジェイプレス)
- Ralph Lauren(ラルフ ローレン)
といったものが挙げられます。
こうしたアメトラ系ブランドが人気を得た要因の一つは、当時の日本人が「きちんとした洋装=上質なもの」という認識を強く持っていたことにあります。
特にビジネスシーンでは、伝統的な仕立てや素材感が重視され、若手サラリーマン層にも憧れの的となりました。
この辺りは「アメトラ」であり、いわゆる「アメカジ」とはちょっとズレるのですが、アメリカの新たなカジュアルも上陸した時代です。
1980年代のヒップホップブームと「アメカジ」
日本では、1980年代前半~中盤にかけて、まだヒップホップ音楽そのものの認知度は高くはありませんでしたが、ブレイクダンスやDJ文化などの視覚的・体験的な要素によって徐々に注目されていきました。
加えて、すでにアメカジが定番となっていた日本では、「ヒップホップ=アメリカの最新ストリート文化」として捉えられ、両者の融合が自然に進んでいくようになりました。
テレビ番組でダンスバトルが特集されたり、ヒップホップカルチャーを紹介する雑誌が登場したりすることで、この時期にはアメリカのストリートシーンへの憧れが大きくなっていきます。
また、日本のファッション雑誌「POPEYE」や「Hot-Dog PRESS」などで、アメリカ西海岸・東海岸の若者スタイルをリアルな写真付きで積極的に取り上げていました。
そこにヒップホップやグラフィティに染まったニューヨークのカルチャーが登場すると、「アメリカっぽいラフさ」や「ストリートの無骨さ」を求める読者層を生むことになります。
ジーンズ、スニーカー、スウェットなどにヒップホップ的なオーバーサイズ感や派手なアクセサリー、キャップなどをプラスして「ラグジュアリーなヒップホップスタイル」を作り出していきました。
1980年代末~1990年代初頭の“渋カジ”ブーム
Image Photo by 繊研新聞
1980年代後半から1990年代初頭にかけて日本で興った“渋カジ”ブームも、アメカジから派生した若者カルチャーやファッションシーンを語る上で、欠かせないムーブメントのひとつです。
渋カジとは「渋谷カジュアル」の略称で、その名のとおり渋谷を中心に発信されたカジュアルファッションのスタイルを指します。
しかし、その背景には1970年代から続くアメカジやアメトラ、さらには東京のストリート文化が複合的に影響し合った歴史がありました。
まず、前段階として、1970年代後半から80年代前半にかけて日本では“DCブランドブーム”が大きな盛り上がりを見せていました。
これは「ビギ」や「コムデギャルソン」「ヨウジヤマモト」といったデザイナーズ&キャラクター(Designers & Characters)ブランドが、ファッションビルや百貨店などを介して若者たちに“モード系”や“個性派”のスタイルを提案していた時代でした。
派手な色使いや大胆なシルエットが目立った一方、同じ時期には先述の「アメカジ」も同時並行で人気であり、これらが徐々に交じり合うことで、“個性的なんだけれど、気取らないカッコよさ”への志向が徐々に広がっていました。
やがて1980年代半ばに日本経済はバブルの絶頂期を迎えると、果てしない消費意欲が高まる一方、ファッションの世界ではカウンターとして、単に高級ブランドを身に纏うことに一定の距離が生まれます。
手頃な価格帯のアイテムを自分なりに組み合わせて“ストリート感”を出すことがクールとされる風潮が加速し、こうした流れの中で、生まれたのが渋谷発のカジュアルスタイル、すなわち“渋カジ”でした。
日本が世界の最先端となった時代、スタジャンやスニーカー、ジーンズ、ネルシャツといった、アメカジ由来のアイテムがベースとなりつつも、そこに渋谷の若者らしい遊び心やストリート感覚が加わったのが特徴です。
カラーリングをやや抑え、“渋め”で落ち着いたトーンを意識しながらも、適度にロゴやワッペンなどの装飾を加えることでポップさを演出していました。
派手すぎないがどこか個性的であり、個々人のスタイルがメディアに取り上げられることによって広まる、ストリートからのファッションが誕生しました。
この渋カジスタイルを大きく後押ししたのが、当時のテレビや雑誌などのメディアです。
お笑いコンビ「とんねるず」がバラエティ番組で見せた私服スタイルが話題となり、彼らが着こなすスウェットやスタジャン、ジーンズなどが「ダサかっこいい」「粋な不良っぽさ」としてブームを巻き起こしました。
渋谷のストリートやライブハウス、クラブシーンに集う若者たちが“自分なりにアレンジしたカジュアル”を発信し、ファッション雑誌が取り上げることでさらに一般層へと波及していきました。
こうして確立された渋カジは、アメカジやアイビーテイストを土台にしながらも、渋谷らしい“ほどよい軽さ”と“リアルクローズ”感覚が融合したスタイルとして1980年代末から90年代にかけて人気を博します。
カジュアルでありつつも、当時の若者らしいエネルギーと自由なアレンジ精神が詰め込まれたファッションとして、後のストリートカルチャーにも多大な影響を与えました。
1990年代のスニーカーブームと「アメカジ」
Image Photo by ISETAN MENS
90年代に入ると、ナイキの「エアジョーダン」や「エアマックス」、アディダス「スーパースター」や「スタンスミス」といったモデルが、爆発的な人気を得ました。
それまでもスニーカーはカジュアルシューズの定番でしたが、スポーツ選手やヒップホップ文化との結びつきが強まったことで、ファッションの象徴として確立された点が斬新でした。
Image Photo by FORZA STYLE
一方、80年代後半から続いていた「渋カジ」以降のアメカジスタイルは、ゆったりめのデニムやミリタリージャケット、白Tシャツなどの組み合わせが主流でした。
こうしたアメカジ特有の“ラフさ”は、ハイテクスニーカーやバスケットシューズのボリューム感と好相性で、ストリート感を一層引き立ててくれました。
90年代のスニーカーブームに乗る形で、アメカジコーデにエアマックスやエアジョーダンを合わせるスタイルが若者を中心に大きく浸透していきました。
さらに、ヒップホップやR&Bシーンがアメリカのストリートファッションと結びついたことで、日本でも音楽とファッションが融合した新たなカルチャーが展開されます。
アメカジテイストのワークウェアやバギーパンツ、オーバーサイズのTシャツに、最新モデルのハイテクスニーカーを合わせる、といったコーデが90年代後半に広がりました。
2000年代の「アメカジ」とストリート要素の融合
2000年代に入ると、90年代ほどの派手なスニーカーブームは落ち着きを見せますが、アメカジとストリートの融合が一層進みました。
特に顕著だったのが、「裏原系」や「アメ村系」などのカルチャーとの融合でした。
そして、今度は日本からBAPE®のような、海外のストリートシーンへ「逆輸入」するような影響を持ったブランドたちが登場します。
また、木村拓哉さんがドラマやバラエティで来た、通称「キムタク着」と呼ばれた服にプレミア値が付くなども、アメカジそのものや「裏腹系」を押し上げた社会現象として挙げられます。
その他にも、
- タウンユースにオーバーサイズの服やアウトドアアイテムを取り入れるコーディネートが広まる
- ハイテクスニーカーを卒業し、再びレトロスニーカーやクラシックモデルが注目を浴びる
- 高品質な「日本製デニム」「ユニクロ」が国内外で受け入れられる
といったトレンドが、2000年代のアメカジ界隈で興りました。
ハイテクスニーカーからレトロスニーカーへの回帰が進んだことで、コンバース「オールスター」やナイキ「コルテッツ」、ニューバランス「990シリーズ」などのシンプルなデザインが注目されました。
さらに、スポーツブランドのウェアやキャップを取り入れ、個性的でカジュアルなスタイリングが楽しめる点も特徴です。
あとは、モノの良さを求めての「日本製デニム」や、不況や経済格差の深化でリーズナブルなユニクロのジーンズが支持を集めていきます。
2010年代の「アメカジ」ファッション
そして、2010年代に入ると、アメカジは確立されたスタイルの上で、新しい潮流や他ジャンルとの融合によって多様な展開を迎えました。
具体的には、2000年代の終わりに高まりを見せていた“プレミアムデニム”や“ヘリテージ(伝統回帰)”の流れを引き継ぎながら、「よりミニマルで実用性を重視する動き」「ストリートとの本格的なクロスオーバー」などが、同時進行的に起こっていきます。
2010年代になると、インターネットだけでなく二次流通やSNSも盛んになるため、「一つのムーブメントに皆が足並みを揃える」という動向ではなく、より複雑で同時多発的なトレンドが発生します。
「ヘリテージリバイバル」の継続と深化
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2010年代前半は、「レッドウィング」や「オールデン」といったアメリカの老舗シューズブランドが根強い人気を維持しました。
これには、「2nd」や「Lightning」「Begin」などのメンズ誌が、ヘリテージやヴィンテージ感を推すスタイルを特集した影響も大きく、クラシックな魅力を重視したファッションが定着しました。
また、日本のデニム製造技術は海外からも高い評価を受け、岡山・児島発のブランドがセルビッジデニムや特別なコラボ商品で支持を拡大。
一方で、ユニクロやGUなどのファストファッションもセルビッジ風ジーンズを展開し、高品質と手頃な価格の両極でジーンズ市場が多層化しました。
ミニマル路線・ノームコアとの接点
2010年代半ばになると、“ノームコア”がファッションキーワードとして注目を集めました。
このスタイルは、無地のTシャツやシンプルなスニーカー、オーバーサイズのスウェットなど、主張を抑えた着こなしで“こなれ感”を演出するもの。
アメカジでも、デニム×白T×スニーカーといったベーシックな着こなしが“無駄のないファッション”として再評価され、アイビールックやワークウェアをノームコア風にアレンジするスタイルも見られました。
また、ユニクロやGUといったファストファッションが手軽にベーシックアイテムを提供したことで、アメカジ“風”の普及がさらに進展。
そして、リーズナブルなアイテムをヴィンテージジャケットやブーツと組み合わせるミックスコーデが一般化しました。
ストリート&ヘリテージの本格的なクロスオーバー
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その他、また、WTAPSやSupremeなどのストリートブランドが、DickiesやCarhartt、Championといったアメリカの老舗ブランドとコラボレーションを展開したことも特筆事項です。
結果として、ワークウェアやミリタリーテイストがストリートファッションに取り入れられる流れが加速し、ヴィンテージ感と実用性を兼ね備えたスタイルが支持を集めました。
購入経路や市場の多様化による、組み合わせの複雑化
最後に、2010年代はフリマアプリやオンラインオークションの普及により、ヴィンテージ市場が大幅に拡大しました。
国内外のヴィンテージデニムやミリタリージャケットなど、レアアイテムを手軽に探し、個人間で取引できる環境が整備され、価格帯も幅広く提供されました。
この流れの中で、古着と現行品を組み合わせた“新旧融合スタイル”が定番化。
たとえば、古着のリーバイス501をファストファッションのトップスと合わせたり、古着のネルシャツにハイブランドのスニーカーを組み合わせるコーデが一般的になりました。
アメカジ好きにとって、80年代から密かに涵養されていたヴィンテージの一点ものを活用した個性的なスタイリングが、ファッションの楽しみの一環として広まりました。
現代に戻ってきた感ありますね。ここまでくると、「現在もそうしているよ!」という方も多いのではないでしょうか。
定番そのものは確立され、さらに半世紀以上の歴史が積み重なることで、アメカジは時代という「縦軸」にも、スタイルという「横軸」にも多様化した時代を迎えています。
「アメカジ」の代表的なアイテムを紹介
ここでは、アメカジの代表的なアイテムについて、改めて紹介します。
ジーンズ
Amazonより引用
アメカジの中心と言えば、なんといってもジーンズです。
戦後しばらくは輸入品が中心で、1960年代に日本で国産ジーンズが登場します。
マルオ被服(現ビッグジョン)やエドウィンが製造を開始し、岡山県児島を中心に染色・織物技術が発展して「ジャパンデニム」の基盤を築きました。
1953年公開の「乱暴者(邦題:あばれもの)」でマーロン・ブランドがリーバイスを着こなす姿や、1956年公開の「エデンの東」でジェームス・ディーンがLeeのジーンズを穿いた姿は、アメカジの象徴として熱狂的な支持を集めました。
さらに、1968年のフランス五月革命や学生運動の時代には、ジーンズが「反体制的」な象徴として広く普及し、日常的なファッションとして定着しました。
ネルシャツ
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ネルシャツは1930年代にBIG MACなどのワークブランドが製造を開始し、アメリカファッションの象徴的アイテムとなりました。
当初は労働者やアウトドアマンの服としてのイメージが強く、山登りやキャンプなどのレジャーシーンや労働者階級の象徴的ウェアとして活用されました。
60年代以降、アメリカンカルチャーへの憧れが高まる中で、日本の若者にも普及。
ネルシャツは“ラフで日常使いできるシャツ”として人気を集め、アウトドアファッションやワークウェアの一部として定着しました。
レザージャケット
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「ライダースジャケット」も当初、ハリウッド映画の影響で注目を集めました。
特に、マーロン・ブランドが「乱暴者(邦題:あばれもの)」で披露したSchott(ショット)のレザージャケット姿は、日本の若者にも強烈な印象を与え、不良やヤンチャ系の象徴として人気が高まりました。
さらに、1960年代にはエルヴィス・プレスリーやビートルズ、ローリング・ストーンズといったロックスターがライダースジャケットを愛用し、音楽シーンとの結びつきが強化。
1970年代には、拡大するバイクカルチャーとともに、その防風性や防護性が評価され、実用性とファッション性を兼ね備えたアイテムとして広く認知されるようになりました。
キャンバススニーカー
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Converse(コンバース)やKeds(ケッズ)は、在日米軍関係者が履いていたことから「アメリカらしい靴」として注目を集め、日本でも徐々に認知されました。
1950年代から1960年代にかけて、学校体育シューズとしてキャンバス地のスニーカーが普及し、アシックスなど国産メーカーも製造を開始。
実用性とコストの低さから大衆的に定着しました。
1970年代以降は、コンバースの「オールスター」やバンズ(Vans)が人気を博し、白・黒・赤のベーシックカラーのハイカットやローカットスニーカーが、アメカジの定番アイテムとして足元を彩る存在となりました。
ワークブーツ
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ワークブーツは、工場や農場などでのハードな作業の安全性を確保するために開発された頑丈な靴です。
その実用性と耐久性が評価され、こちらも映画「乱暴者(あばれもの)」や「エデンの東」にて、ハリウッドスターがジーンズと共に履く姿が注目され、一気にファッションアイテムとしての地位を確立しました。
ワークブーツは丈夫なレザーとグッドイヤーウェルト製法などにより、長く履き込むほど味わいが増し、“一生モノ”として愛用し育てる楽しみがあることも大きな魅力です。
スタジャン(バーシティジャンパー)
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スタジャン(正式名称「バーシティジャンパー」)は、袖がレザー、身頃がウールという定番デザインが特徴です。
チームロゴやワッペン付きのデザインも人気を集め、着こなし次第でポップにも大人っぽくもなる汎用性が支持されました。
1950年代からハリウッド映画やアメリカのポップミュージックの影響で、「アメリカの学生スタイル=スタジャン」というイメージが日本に浸透。
60年代後半にはアイビールックの流行とともにスタジャンが取り入れられ始め、70年代には「おしゃれな大学生のスポーツジャケット」として雑誌で紹介され、一般的なアイテムとして認知されました。
チノパン
Image Photo by BEAMS
チノパンは、元々米軍将校の制服として着用されていたミリタリーウェアから派生したカジュアルパンツです。
「綿パン」や「軍パン」と呼ばれ、シンプルなデザインと丈夫な素材が実用性重視のアイテムとして支持されました。
70年代から徐々に普及し、ジーンズと並ぶスタンダードな「ズボン」として定着。
同時期に普及したミリタリージャケットやネルシャツと組み合わせるスタイルが古着好きや若者の間で広まり、カジュアルファッションの一部として確立されました。
スウェットシャツ
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スウェットシャツもまた、アメカジの原点として米軍の放出品から日本に広まりました。
60年代以降、アメリカンカルチャーを取り入れたい若者や古着好きの間で人気が高まり、ラフで機能的なウェアとして「気取らないアメリカの若者文化」の象徴となりました。
中でも、チャンピオンのスウェットシャツは代表的なアイテムで、無地やカレッジロゴ入りデザインが注目されました。
カレッジファッションやアメリカンスポーツへの憧れが背景となり、特に大学生を中心に広まりました。
特に、裏起毛のスウェットシャツは機能性と着心地の良さから、現在でも支持を集めています。
ミリタリージャケット
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ミリタリージャケットは、B-15から派生した「M-51(モッズコート)」や「M-65 パーカー」など、主に1950年代以降~に米軍で採用されたアイテムが中心です。
こちらも第二次世界大戦後、米軍放出品として出回り、ファッションへと昇華しました。
1960年代半ばには、欧米のヒッピームーブメントやユースカルチャーの影響を受け、古着(ヴィンテージ)を好む風潮が日本にも伝わり、アメリカの若者文化に憧れる層が米軍古着を取り入れるようになりました。
1960年代後半には、ミリタリージャケットが「反戦・反体制」を象徴するアイテムとしても着用され、文化的・政治的背景を持つ服装として定着しました。
マウンテンパーカー
Image Photo by Rakuten Fashion
マウンテンパーカーは、アメリカのヒッピーや大学生を中心に“自然回帰”や“自由”を象徴するアイテムとして広まりました。
ハイキングや野外活動の写真、映画での登場を通じ、その機能性とカジュアルなスタイルが注目され、メディアを通じて一気に普及しました。
防風・防水といったアウトドアスペックを備えつつ、シンプルで着回しやすいデザインが特徴。
ジーンズ・スニーカー・ネルシャツなどとの相性も良く、機能性とファッション性を兼ね備えたアイテムとして支持を集めました。
初心者から上級者までできる「アメカジ」の取り入れ方
ここまで、時代の流れと共にアメカジを解説してきましたが、
といった声も聞こえてくると思います。
そこでここでは、アメカジのベーシックな着こなしについて紹介します。
「基本となるコーディネート例」「季節ごとのスタイリングのポイント」「コーデの際、気を付けたいポイント」をご紹介します。
2025年の「アメカジ」基本の型を紹介
ジーンズ×白Tシャツコーデ
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- トップス:白Tシャツ(柄はあってもなくても◎)
- ボトムス:テーパードからルーズシルエットまで、なんでもござれ
- シューズ:「髪の色」「デニムのステッチの色」「グレーなどの中間色」といったカラーだと調和しやすい
- その他:必要に応じてアクセやビスチェ、腕時計などのワンポイントや、タックインで「ベルト見せ」などもアリ
世界で最も多い組み合わせの服装かもしれませんが、究極にシンプルだからこそ、上下どちらか(どちらも)の服におけるシルエットやディテールに工夫を持たせると、納得感あるコーデになりやすいです。
あとは、必要に応じてワンポイントアイテムを追加したりしてバランスを整えましょう。
チェックシャツ×ルーズシルエットのパンツ
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- トップス:チェック柄のネルシャツ
- アウター:都会的でクールな印象を与えるもの
- ボトムス:ルーズシルエットのチノやカーゴパンツなど
- シューズ:清潔感あるコインローファーやクラシックスニーカー
相当な“シブオジ”オーラが出ていないと、コテコテのアメカジ定番品だけで雰囲気を出すのは難しいと思います。
ダサ感あると思われがちなチェックのネルシャツに「あえて着ている感」を出すために、アウターや靴、小物で補うイメージです。
スウェット×デニムジャケットのコーデ
Image Photo by WEAR
- トップス(インナー):無地またはワンポイントロゴのスウェットやパーカー
- アウター:デニムジャケット
- ボトムス:スウェットパンツ
- シューズ:丸みを帯びたシルエットのスニーカーやカジュアルシューズなど
上下デニムにすると、特に初心者にとっては難しいコーデになりがちです。
スウェットパンツを上手く活用してデニムジャケットと着合わせると、「だらしなさすぎず、デニムマンにならない」塩梅にできます。
ミリタリージャケット×パーカ×カーゴパンツ
Image Photo by WEAR
- トップス(インナー):スウェットやフーディ(パーカー)
- アウター:M-65やMA-1などのミリタリージャケット
- ボトムス:ベージュや白など、ナチュラルカラーのチノ/カーゴパンツ
- シューズ:キャンバススニーカー、ワークブーツ、ミリタリーブーツなど
一口に「ミリタリージャケット」といってもタイプはさまざまですが、アウターの色を活かしてトップスやボトムスの色を選ぶとハマりやすいです。
足元は警戒感を出すならキャンバススニーカー、重厚感を出すならワークブーツも良いですね。
季節ごとのスタイリングのポイント
春
Image Photo by WEAR
- 軽めのアウター:デニムジャケットやナイロンパーカーを取り入れる。
- カラー選び:明るめのチェックシャツや淡色デニムで爽やかさを演出。
- 足元:スニーカーなどキャンバス地のシューズを選ぶと季節感が出やすいです。
夏
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- Tシャツ&ショートパンツ:Tシャツにデニムショーツやカーゴショーツを合わせる。
- 小物:キャップやサングラスでストリート感をアップ。
- 素材感:薄手のコットンやリネン混アイテムで通気性を確保しつつ、軽快な印象に。
秋
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- フランネルシャツやスウェットシャツ:ブラウンやオリーブなど落ち着いたアースカラーが季節感を高める。
- レイヤード:Tシャツ+ネルシャツ+ライトアウターなど、重ね着で温度調整もしやすい。
- 足元:レザーブーツやハイカットスニーカーも似合う季節。
冬
Image Photo by WEAR
- アウター:レザージャケットやダウンベスト、N-1デッキジャケットなどを取り入れる。
- 防寒対策:厚手のデニムやコーデュロイパンツ、ウール素材のマフラー・ニット帽をプラス。
- カラーコントラスト:アウターに濃い色を持ってきて、インナーを明るくするとメリハリが出ます。
その他、ちょっとしたコツ
サイズ選び
アメカジではオーバーサイズも魅力ですが、初心者にはジャストサイズ~ややゆるめ程度がおすすめ。
トップスをややゆったり、ボトムスをスッキリとしたYラインや、全体を丸みのあるOラインに整えると、バランスよく今っぽい印象になります。
カラーのバランス
カーキ、ベージュ、グレー、ネイビー、白、黒などのアースカラーやベーシックカラーを基調にすると統一感が生まれ、失敗しにくいです。
差し色を入れる場合は、キャップやスニーカー、ソックスなどの小物で赤やイエローを取り入れると、おしゃれ上級者の印象に。
小物使い
シンプルになりがちなアメカジには、腕時計(ミリタリーウォッチやダイバーズウォッチ)、キャップ、レザーブレスレットなどでアクセントを加えるのがおすすめ。
ただし、1~2点に抑えることで、適度な存在感を保てます。
これらも参考にした上で、アメカジの世界にどっぷりつかってみてください!
終わりに|時代を超えて愛され続ける、日本式「アメカジ」スタイル
今回は以上です。
日本という国は、ファッションに限らず、戦後から一貫してアメリカに強い影響を受けています。
アメリカの動きは大体数年後に日本でも同じ動きをすることが多く、これは企業の動向然り、紹介してきたファッションのトレンドも然りです。
その中でも、特に80年代以降の日本における「自分たちのものにしてやろう」というムーブメントが、私はとても好きです。
ダルチザンをはじめとする「レプリカジーンズ」であったり、BAPE®のような「ストリートブランド」の発生であったり。
アメリカのものに、日本独自のコンテンツがプラスされる様が、とても素敵な文化の蓄積だと思うのです。
古臭い、オーセンティックなレザージャケットやデニムを愛する一方で、リーズナブルで真新しい服も取り入れる。
とても複雑化したアメカジジャンルもまた、ファッションを無限に楽しめる土壌が出来上がっていると思います。
アメカジは、ベーシックなアイテムを押さえるだけで誰でも気軽に始められます。
経年変化や素材の良さを実感しながら教科書を参考にしつつ、「これとこれを着合わせたら似合うかな?」といった自分流を見つける過程こそ、ファッションの醍醐味なのだと思います。
ぜひ、ルーツや歴史に思いを馳せながら、あなたのファッションライフを豊かにしてみてくださいね。
おしまい!
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