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総裏/背抜き/半裏の違い!裏地の役割&スーツのジャケットはどれを買うべき?選び方も解説

服に詳しくなってくると何となく耳にする「総裏」「背抜き」「半裏」というワード。

それぞれ、どんな仕様なのでしょうか?プロのデザイナーが詳しく解説するとともに、オススメもご紹介!

こんにちは。本日は、テーラードジャケットにおける裏地につい「総裏」「背抜き」「半裏」という仕様についての話。

紳士服に詳しくなってくると、何となくジャケットの「総裏」「背抜き」「半裏」といった仕様を耳にするようになると思います。それぞれ、裏地の付き方に対する仕様なのですが、具体的に、どのような仕様を指すのでしょうか?

今回は、裏地の役割をおさらいした後に、ジャケットを選ぶ際、どの仕様を選べば良いかを解説。シチュエーションや素材ごとに最適解は変わりますが、それぞれ詳細をお話します!

目次

裏地の役割:なぜ裏地が付いているの?

まず、裏地の役割について。そもそも、なぜ裏地が付いているのか、不思議に思ったことはありませんか?

裏地の機能は、主に2点に大別されます。

  • 着心地を向上させる
  • 型崩れを防ぎ、見た目を整える

それぞれ、解説して参ります。

着心地を向上させる

 

着心地を向上させることは、裏地の非常に重要な役割。裏地には滑ることで、着脱を容易にするという役割が与えられています。

デザイナーズブランドのジャケットには例外も多いのですが、テーラードジャケットは本来、ジャストフィットで着用するもの。だからこそ、裏地がなく滑らないと、非常に着脱しにくい構造になっています。

だからこそ、裏地を付けることで袖を通しやすく、また、動く際に表地との摩擦が起きないように滑ってくれる。結果として着易く、着心地の良いジャケットにしてくれます。

スーツ全体の見た目を整える

裏地のもう一つの大きな役割としては、スーツ本体の「見た目を整える」こと。これは、保形という面と、防汗・防汚といった両方の役割があります。

保形に関しては、表地と縫い付けられることで表地の形を安定させています。裏地が表地との間にあることで、例えば、汗や汚れといったものが表地に移りにくくしてくれるという点も重要。

いずれにせよ、裏地はいざという際に表地の代わりとして犠牲になり、普段は表地を優しく支えています。

裏地の素材について解説!どんな素材が良い?

裏地の素材は、ポリエステルレーヨンキュプラなどが使用されます。

レーヨンとキュプラは近しい性質を持つため、ここでは3種類の裏地素材について言及します。

ポリエステル:耐久性◎、放熱性×、静電気防止×、廉価

ポリエステルは裏地の中で、最も一般的な素材。比較的廉価なだけでなく、縫いやすいので広く使用されています。

高い耐久性というメリットがある一方、吸湿性が低く、熱を身体に溜め込みやすいという欠点があります。

また、帯電もしやすいため、乾燥する季節だと特にバリバリしがち。

キュプラ:耐久性△、放熱性◎、静電気防止◎、比較的高価

キュプラは再生繊維の一種で、別名、銅アンモニアレーヨンとも呼ばれる素材。耐久性こそポリエステルに劣るものの、吸湿性が高く静電気防止力も高く、見た目もシルクに近くて美しい。

その他、土に埋めることで分解されるエコロジー素材でもあります。トータルバランスでは最も裏地に適した素材。

ちなみに、キュプラの中でも日本の旭化成のブランド「ベンベルグ」は非常に有名。

絹:耐久性×、放熱性◎、静電気防止×、高価

シルクは代表的な高級素材として、伝統的に和装の世界でも愛用されてきました。とにかく見た目の美しさと、シルクを使用しているという“高級感”がメリット。

一方、摩擦も起こり易く耐久性は低いですし、帯電もしやすい。その上、経年で黄変しやすく虫にも食われやすいので、裏地としての機能面でいえば、あまりいいところはありません。

高価な上に、機能的にも優れているわけではないため、裏地としてはほとんど見かけなくなりました。

ジャケットの「総裏」「背抜き」「半裏」について解説!

「総裏」とは

BEAMS 公式HPより引用

「総裏」とは、テーラードジャケットの裏地が袖だけでなく、身頃の前側、そして後ろ側となる背中側の裾まで付いている仕様のこと。

全部裏、だから「総」裏です。総裏はあらゆる箇所に裏地が付いているため、とにかく摩擦が起こりにくいことがメリット。裏地の役割からも、最も耐久性の高い仕様になります。

一方、裏地がポリエステルや絹などの熱を溜め込む素材の場合、上手く空気を入れ替えられないというデメリットもあります。また、素材次第では静電気も起こり易くなるので、着脱時のストレスの原因に。

「背抜き」とは

BEAMS 公式HPより引用

「背抜き」とは、(総裏と比較した際)背中の肩甲骨あたり~裾までの裏地が省略された仕様を指します。写真の通り、背中部分の大半に、裏地がないのがお分かりいただけると思います。

(僅かですが)総裏と比べ、通気性が高くなることが特徴。また、この部分は背中がジャケットに張り付かないため、摩擦にといった点では大差ありません。

とはいえ、裏地によって支えられる部分が少なくなるため、総裏と比べると型崩れはし易くなります。

余談ですが、「背抜き」は、ヨーロッパのテーラー(特に英国)ではほとんど見かけません。

基本的に「総裏」でないものは、後述で紹介している「半裏」仕様が中心。あるいは、身頃の裏側に表地の面積を大きく取って、裏地を身頃に使用しない「アンライン」仕様のものも存在します。

とはいえ、イタリアブランドの日本市場に向けたものの中では稀に見かけることも。写真はアットリーニですが、背抜き仕様になっていますよね。

「半裏」とは

BEAMS 公式HPより引用

「半裏」とは、「背抜き」の裏地をさらに減らした仕様。写真を見ると、前身頃についている脇の下から裾にかけて、裏地がカットされているのが分かると思います。

基本的には、背抜きよりさらに涼しくしたい「盛夏用のジャケット」という位置づけ。

裏地だけでなく、表地や中に入っている芯地も薄手であったりと、全体的に軽やかな造りになっているものが多いです。

とはいえ、近年は冬用のコートでも「半裏」仕様を見かけます。

芯地や肩パッドなどを省略したアンコンジャケットが受け入れられるようになったことや、ウォッシャブルな化学繊維による機能性素材が普及したことなどが理由。

いずれにせよ、「半裏」は夏だけのものではなくなりつつあります。あくまで季節感は、表地の素材感で判断するべきもの。表地がオールシーズン用であれば「秋冬でも背抜きが一概におかしい」とはいえません。

「総裏」「背抜き」「半裏」どれが一番良いの?

ウール素材の場合、裏地がキュプラなら「総裏」

裏地素材がキュプラなら「総裏」がオールラウンドにはベターなぜなら、キュプラの場合は放熱性に優れているため「総裏」でも通気性の悪さがあまり気にならないからです。

日本の都市部は夏が長い地域が多いため、一見「背抜き」「半裏」が適していそうではあります。確かに「真夏でも意地でもジャケットを羽織る!」という方は「総裏」である必要はありませんが、一方でクールビズも普及してきました。

クールビズの導入によって、5月~10月までジャケット自体を着用しない方が多くなりました。そういった方の場合、オールシーズン用は春、秋、冬を意識したものをチョイスすると思います。静電気防止力の高いキュプラが裏地の場合、「総裏」でもバリバリしにくいため、(他の条件が同じならば)オススメ。

耐久性の高い表地&裏地がポリエステルなら「背抜き」

裏地がポリエステル素材の場合、「背抜き」がオールラウンドには良いと思います。むしろ、裏地がポリエステルの場合、「総裏」である方がメリットが小さいと思います。

なぜなら、ポリエステルという素材は放湿・放熱性に劣る素材だから。「熱を溜め込む」というと暖かそうですが、湿気も溜め込むため、あまり気持ちの良いものではありません。適度に逃がしてあげる方が、衣類としては快適です。

「背抜き」仕様は「耐久性重視の表地」×「裏地がポリエステル」の場合にオススメします。ユニクロのオールシーズン用「オーダーメイド感覚スーツ」も「背抜き」仕様になっています。

「半裏」がオススメのシチュエーションは?

「半裏」がオススメのシチュエーションは、

  • 温帯な地域のオールシーズン用にしたい
  • 表地が綿や麻、ソラーロのようなジャケットで、春夏の素材感を内側からも演出したい
  • 秋冬用でもアンコン性を前面に出したい

など。

軽やな雰囲気や、秋冬用の表地の場合も、あまりがっしりとした雰囲気を与えたくない場合に採用されます。

(同じ表地で「総裏」仕様と比較するなら)「どちらかというと春夏に近い」くらいのニュアンスで、半裏=春夏物ではないのですね。あくまで、表地の素材感で季節感を考えるのが正解です。

オールシーズン用の3ピーススーツの場合は?「総裏」「半裏」どちらでも良い

3ピーススーツ(「テーラードジャケット」「パンツ」「ベスト」のセット)の場合、「総裏」「半裏」どちらでもOK

ベスト自体は防寒のためのものですが、ベストの背中部分に裏地素材が使用されている筈なので、ジャケットが「半裏」でも滑ってくれます。

また、ジャケットの背中部分を覗いても透けにくい点も◎。冬も比較的温暖な都市部であれば、「夏はベストを着ないで、秋冬はベストを着用して3ピーススーツにする」という着方も良いですね。

終わりに:身も蓋もない話をすれば、あまり大差ない

今回は以上となります。

正直、裏地の仕様が「総裏」か「背抜き」か「半裏」かで劇的にスーツの耐用年数が10年上がったり、体感温度が5℃異なるなどといった「大差」はありません。

そもそも、ジャケットの季節感は表地の素材感で選びますし、裏地の仕様で悩むのは「オールシーズン向けで、これ一着でスーツは大丈夫なものを購入したい人」だと思います。

個人的には、「総裏」の方がカッコいいと思えますし、源流的であることも事実です。クールビズが導入されている企業にお勤めなら「総裏=暑い」という欠点自体も気になりません。

ただ、先述の通り、「3ピーススーツ」×「半裏」でオールシーズン対応というのは大いにアリですし、機能的にも十分説明が付く組み合わせでもあります。

少なくとも、「裏地が総裏/背抜き/半裏だから・・・」といって購入を諦めるのは、ちょっともったいないかな?と思えるくらいの違いでしかありません。

とはいえ、裏地の役割は大切です。着用していく内に、裏地が擦り切れて交換して、お気に入りの仕様に変更して・・・そして、長年のパートナーになる。

裏地には、そんな名脇役的な役割が与えられています。

そんなことが出来るような、お気に入りのジャケットに出会えることは、とても良いファッションの楽しみ方ではないでしょうか。

おしまい!

SHOLL(しょる)
皆さまこんにちは。“SHOLLWORKS”運営者のSHOLL(しょる)と申します。

1987年、山梨県甲府市生まれ。国内デザイナーズブランドを経て、ファッションコングロマリットのブランドでデザイナー職を経験。

現在は東京在住、デザイナー含め様々な事業に携わっています。





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