Y’s×テーラー東洋の「スカシャツ」再び|スカジャン魂とアメカジ、モードカルチャーに連なる系譜

Y’s(ワイズ)と、半世紀以上にわたりスカジャンを作り続けてきたテーラー東洋(TALOR TOYO)によるコラボレーションアイテム、「スカシャツ」が再び発表されました。
スカジャン特有の刺繍をオールブラックでシャツに落とし込み、Y’sならではのシルエットで再構築したスカシャツは、単なるコラボレーションを超え、日本のモード史とアメカジ史の系譜を感じさせます。
2025年6月6日(金)よりY’s直営店および公式オンラインブティックにて展開されるこのシャツは、両ブランドの個性が融合した、まさにスペシャルな逸品です。
Y’S SUKASHIRT
- 価格: 88,000円(税込)
- サイズ展開: 02 (M) / 03 (L) / 04 (XL) / 05 (XXL)
- 発売日: 2025年6月6日(金)
- 取扱店舗: 全国のY’s直営店、Y’s公式オンラインブティック
- 先行予約:
- 全国のY’s直営店:受付中(在庫状況により早期終了の場合あり)
- 公式オンラインブティック:2025年6月2日(月)より受付開始(在庫状況により早期終了の場合あり)
- 先行展開:
- Y’s新宿伊勢丹店、Y’s/Y’s for men/LIMI feu 渋谷PARCO店:2025年5月30日(金)より先行展開スタート
最寄りのY’sストアへのお問い合わせや、電話による注文・代引発送については、各店舗へご確認ください。
【Y’s×テーラー東洋】が解釈する、漆黒のスカシャツとは?
今回のコラボレーションで登場するのは、スカジャンの刺繍を纏ったシャツ。
通称「スカシャツ」です。
ドクロと蛇のモチーフ×オールブラックの刺繍
これは両ブランドにとって2回目の発表となり、2023年の秋冬コレクションで発表されたY’s × テーラー東洋のスカジャンに用いられた刺繍の中から、今回はドクロと蛇のモチーフが選ばれました。
これらのアイコニックな図案は、オールブラックの刺繍で再現され、スカジャンが持つ迫力や不良性を保ちつつも、Y’sらしい印象へと昇華されています。
光の当たり方によって微妙な陰影を生み出す点が、他にはないコラボレーションの魅力と言えます。
アクションプリーツ×リラックスフィット
古いスカシャツに見られるような後ろ身頃のアクションプリーツといった特徴的な要素はそのままに、シャツ全体のシルエットは丈を長めに設定。
身体と衣服の間に空気が流れるような、Y’s特有のゆったりとしたリラックスフィットに調整されています。
モチーフのハードなイメージを和らげ、ジェンダーレスで着こなせる現代的なバランス感覚が生まれています。
「港商レーベル」の証
今回のコラボレーションピースは、テーラー東洋のコレクションの中でも特に厳選した逸品を、ディテールにこだわり忠実に再現するスペシャルエディションである「港商レーベル」として製作されています。
シャツにはテーラー東洋の前身である「KOSHO & CO. 港商商会」のラベルがアタッチされており、このスカシャツが持つ歴史的背景とオーセンティシティを物語っています。
スカジャンのオリジン「テーラー東洋」|歴史とアメカジへの深い影響
テーラー東洋は、日本のファッション史、特に「アメカジ」カルチャーにおいて極めて重要な役割を果たしてきました。
「港商商会」から始まったスカジャンの物語
テーラー東洋の母体である東洋エンタープライズの前身は、1940年代に創業した「港商商会(KOSHO & CO.)」です。
当初は生地などの輸出入を主に行っていましたが、大きな転機となったのが第二次世界大戦後でした。
戦後日本のスーベニアジャケットとしての誕生
戦後、日本に駐留していたアメリカ軍兵士たちが、帰国の際の土産物として日本の伝統的な品々を求める姿を目にした港商の社員が、オリエンタルな刺繍を施したシルクやアセテートのジャンパーを考案しました。
当時、銀座で米兵向けの露店を視察していた社員が「ベースボールジャケット × オリエンタル刺繍」のアイデアを思いつき、桐生・足利の刺繍職人に外注したことで誕生し、お土産化したのが「スカジャン」です。
Image Photo by TAILOR TOYO
当時、これらのジャンパーは、横須賀(YOKOSUKA)の米軍基地周辺で特に人気を博し、「横須賀ジャンパー」➡「スカジャン」の語源の一つになったとも言われています。
龍、虎、鷹、鳳凰、鯉、日本地図、芸者といった日本的なモチーフが、兵士たちの故郷や所属部隊のエンブレムなどと共に、光沢のある生地に見事に刺繍されました。
横須賀と米兵、そして日本独自の刺繍文化
Image Photo by TAILOR TOYO
スカジャンは、日本の伝統的な横振り刺繍の技術と、アメリカ的なベースボールジャケットやMA-1といったフライトジャケットのフォルムが融合して生まれた、まさに日米文化のミクスチャーと言えるアイテムです。
兵士たちは、自分たちのジャケットや寝袋などに刺繍を施してもらうことで、日本での体験を形にして持ち帰ろうとしました。
その需要に応える形で、高度な刺繍技術を持つ職人たちが腕を振るい、数々の名作スカジャンが生み出されました。
テーラー東洋が受け継ぐクラフツマンシップ
港商商会から始まり、半世紀以上にわたってスーベニアジャケットを作り続けてきたテーラー東洋は、まさにスカジャンの創始であり、その文化と技術を現代に継承する稀有なブランドです。
ヴィンテージの忠実な再現とディテールへのこだわり
テーラー東洋の製品の大きな特徴は、ヴィンテージスカジャンに対する深い知識とリスペクトに基づいた、徹底的なディテールの再現です。
当時の素材感(特にアセテートレーヨンの質感)、色合い、刺繍の図案や技法、リブの編み立て、ファスナーの形状に至るまで、細部にわたり研究し、忠実に復刻しています。
これにより、現代にいながらにして、まるでヴィンテージの本物を手にしたかのような感動を味わうことができます。
スカジャン文化の継承者としての役割
テーラー東洋は、単に過去の製品を復刻するだけでなく、スカジャンというアイテムが持つ歴史的背景や文化的意味合いをも伝えていく役割を担っています。
スカジャンが生まれた時代の空気感や、そこに込められた人々の想いを製品を通じて表現することで、スカジャンを一過性のトレンドではなく、永続的なカルチャーとして次世代に繋いでいます。
スカジャンというアメカジカルチャー、Y’sのモードカルチャーの融合
テーラー東洋が生み出すスカジャンは、日本の「アメカジ(アメリカンカジュアル)」ファッションの形成において、計り知れない影響を与えてきました。
オリエンタルな刺繍や独特の素材感が、米兵を通じてアメリカに渡り、本国にはないエキゾチックな魅力として認識され、それが再び日本のファッションシーンに影響を与える。そんな、ユニークな文化的循環が存在していました。
また、言わずもがなY’sは、「強く自立した女性のための実用服」を提案し、「日常×モード」という新しい土俵を作り、女性像を更新するというカルチャーを構築したブランドです。
今回のY’sとテーラー東洋の「スカシャツ」は、
- 戦後の日本における状況から生まれた「アメカジ」カルチャーの一旦
- 高度成長期を経て、70年代からDCブームを支えたモールにおけるカルチャー
が融合した、日本(と、日本が海外へ与えた影響も含めた)ファッション史の生き字引のような存在の一品です。