ダウンの「フィルパワー」って何?品質と暖かさを左右する目安指標を解説する
最初にざっくり結論
ダウンの「暖かさ」は、シンプルに言うと「フィルパワー(質)× 内容量(量)」+ 服の設計で決まります。
- フィルパワー(FP)が高い:少ない量で膨らみやすく、軽く作りやすい
- 内容量(中に入っているダウンの量)が多い:空気をたっぷり抱え込めるので暖かくなりやすい
- 首・手首・裾がしっかり塞げる設計:隙間風を減らして体感温度を上げてくれる

「FPが高い方が良い」は半分正解ですが、それだけを見ると損もしやすいポイントです。
この記事では、そのモヤモヤを一緒にほどいていきましょう。

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ダウンジャケットやダウンコートを選ぶ際、品質指標として「フィルパワー」という言葉を耳にしたことはありませんか?
フィルパワーとは、羽毛のかさ高性を示す単位。
ダウンそのものの膨らみや弾力性を数値化したもので、軽さや保温性を知るための指標です。
ダウンの品質=フィルパワーではないものの、優れたフィルパワーを持つダウンは、少ない重量でより多くの空気を含み、暖かさと快適性を提供してくれることは間違いありません。
今回は、プロのファッションデザイナーである私しょる(@SHOLLWORKS)が、フィルパワーの測定基準や、ダウンの選び方、お手入れ方法まで解説します。

ちなみに「ダウン」とは、羽(フェザー)の下に生えている柔らかい綿毛(わたげ)のことで、外側の羽ではなく、その内側にある“ふわふわの断熱材”を使っています。
ダウン選びの一助となれば幸いです。それでは行きましょう!
フィルパワーとは何か?定義や測定方法を解説
フィルパワーは「30gのダウンがどれほど膨らむかを立方インチ(in³)で表した値」
まず結論からお話しすると、フィルパワーは「30gのダウンがどれほど膨らむかを立方インチ(in³)で表した値」を指します。
という式で算出され、数値が高いほど空気を多く含み、軽くて暖かいダウンに仕上がります。
ちょっとだけ専門的な補足
- 日本のダウン製品では、30gあたりの体積でフィルパワーを表示する方法(IDFBという国際ルールに近い試験方法)がよく使われます。
- 海外の解説では「1オンス(約28.35g)あたりの立方インチ」で説明しているものもあり、単位の置き方が少し違う場合があります。
- また、日本独自の「ダウンパワー(DP)」という試験結果で表記しているメーカーもあります。

ややこしそうに見えますが、初心者の方は「同じブランド・同じ表記同士で比べればOK」と覚えておけば十分です。
「フィルパワーが高いダウン」って何が違うの?

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フィルパワー値が高いということは、「同じ重さでももっふもふに膨らむダウン」ということに他なりません。
同じダウンでも“もっふもふ”になるダウンとそうでないものの違いとは、主に
- 全体における「ダウン」の比率
- 成熟している親鳥の羽毛を使用しているか否か
- どんな環境・品種の水鳥から採られたダウンか
- よく洗浄・乾燥された清潔な羽毛か
の、4点に集約されます。
全体における「ダウン」の比率

「ダウン(綿毛)」には保形性を確保するために「フェザー(羽毛)」などを混ぜます。

羽毛布団はフェザーをほとんど入れないものもありますが、あれは「着る」前提ではないためです。
(とはいえ、布団をそのまま羽織りたくなる寒い日もありますが・・・笑)

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ただし、フェザーはダウンに比べると“もふ度”が低いため、混ぜすぎると今度はフィルパワーが落ちます。
しかも、フェザーは保温性も低いため、フェザーを入れすぎると、今度は「重くて暖かくないダウンジャケット」になってしまいます。

服飾業界では「ダウン90%/フェザー10%が高品質」と言われたりしますが、これは一つのバランスの目安と考えてください。
比率だけでなく、フィルパワー(FP)・内容量(グラム数)・設計もセットで見ると、より納得感のある選び方ができます。
成熟している親鳥の羽毛を使用しているか否か

また、フィルパワーは、ダウンを提供してくれている水鳥(ガチョウやアヒルなど)の成熟具合にも影響されます。
グース(ガチョウ)やダック(アヒル)の場合、大人の個体の方がダウンボール(綿毛)が大きく弾力性があり、結果として膨らみが増します。
じっくりと飼育し、大きく成長させたグースやダックは羽毛がしっかり成熟し、質の高いダウンが採れるようになります。

一般的な傾向として、グースダウンの方がダックダウンよりも大きくて弾力のあるダウンボールになりやすいと言われています(とはいえ品種や品質にも依ります)。
そのため、多くの品種において、グースダウンの方が高価格帯に使われやすい素材ですが、最終的な暖かさはFP・内容量・設計で決まるイメージでOKです。

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中でも、「マザーグース」と呼ばれる、卵を産む親ガチョウから採れるダウンは、高品質な素材として扱われることが多く価格も高くなりがちです。

一方、量産型の工場飼育では早期出荷のために短期間で飼育されることが多く、ダウンの品質に差が出る場合があります。
どんな環境や種から採ったダウンか

また、同じダウンでも、「どの地域の水鳥か/どんな飼育環境で育てられた水鳥か」も、ダウンの品質を左右します。
歴史的に、東欧(ハンガリーやポーランドなど)のダウンが高品質として紹介されることも多いですが、産地の名前“だけ”で品質が決まるわけではありません。
ポイント1:寒い地域の鳥ほど、ふっくらしたダウンになりやすい
- 厚みのあるダウンが形成される:寒冷地の鳥は寒さから身を守るため、密度が高く膨らみの良いダウンを持つ傾向があります。これが、保温性の高さに直結します。
- 自然に近い環境での飼育:広い土地で放牧されているケースでは、健康的に育ち、結果として良質な羽毛につながりやすいと言われています。
ポイント2:品種による性格の違い
- ホワイトグース:羽毛が白く美しい見た目で、軽量かつ高いフィルパワーを持つ製品に使われることが多いです。白いダウンは染色の自由度が高いのも特徴です。
- グレイグース:若干重くなることもありますが、密度が高く耐久性に優れるため、アウトドア向けのしっかりしたダウンに用いられることもあります。
ポイント3:認証や品質管理の有無もチェック
- 動物福祉に配慮した認証:RDS(Responsible Down Standard)などの認証を取得しているブランドは、一定の基準に沿って原料を管理しています。
- 品質基準・試験情報を開示しているか:フィルパワーの測定方法や内容量を公開しているブランドは、比較しやすく誠実なケースが多いです。
といった「環境・品種・認証・情報開示」の組み合わせやブランド力によって、東欧産を含むさまざまなダウンが「高品質」として扱われています。

ただし、最終判断はFP・内容量・設計も合わせて、トータルで見るのがおすすめです。
ダウンがよく洗浄・乾燥された清潔なものか
そして、「ダウンがよく洗浄・乾燥されて清潔なものか」も重要な指標です。
これは臭いがするダウン(廉価なダウンだと、結構臭いがするものも販売されています)というものがシンプルに嫌という点もありますが、臭うということは、ほとんどの場合油分が残っているということ。
結論:暖かさの目安は「FP(質)× 内容量(量)」+設計
ここからは、実際にダウンを選ぶときに一番気になるであろう「どれくらい暖かいのか」という話に踏み込みます。
すでに触れた通り、フィルパワー(FP)は「羽毛1つ1つの膨らみやすさ」を表す指標ですが、FPだけを見ても、暖かさそのものは分かりません。
ざっくりとした目安
「暖かさ」≒ フィルパワー(FP) × 内容量(g)
※あくまで「同じような形・用途のダウン同士を比べるときの目安」として使ってください。
たとえば、同じような厚み・丈のダウンコートが2つあったとします。
- A:800FP × 120g(30g×4)=「膨らみ目安:3,200」
- B:600FP × 180g(30g×6)=「膨らみ目安:3,600」
この場合、FPが少し低くてもAよりBの方が中身が多いため、「Bの方が暖かく感じる」ケースは十分あり得ます(その代わり、Bの方が重くなる傾向があります)。
内容量(g)が書いていないときは?
ここでよくぶつかる壁が、「内容量(g)がどこにも書いていない・・・」というパターンです。
- まずは商品ページの仕様欄に「中綿重量」「ダウン量」「フィルウェイト」などの表記がないかチェックする
- 書いていない場合は、FPの目安と、のちほど紹介する「設計チェックリスト」をしっかり見る
- 店頭で試着できるなら、首・袖口・裾の隙間風がどれくらい防げるかを肌感覚でチェックする

「FPが高いのに寒い・・・」という不満の多くは、内容量の少なさか、後ほど触れる隙間風の入りやすい設計が原因です。
この2つを意識するだけで、かなり失敗しにくくなります。
フィルパワーと「良いダウン」の目安
| フィルパワー値 | 特徴 | 活用シーン |
|---|---|---|
| 400~500台 | あまり保温性が高くなく、やや重め | 日常使い、ライトアウトドア |
| 600~700台 | 標準レベルで軽く暖かい | 都市生活 |
| 700~800台 | 上質で非常に暖かい | 本格的な冬のアウトドア、旅行 |
| 800~900台 | 超高品質。軽量かつ極上の暖かさ | エクストリーム環境、長期使用 |
※この表はあくまで「FPの目安」です。暖かさはFP+内容量+設計で決まるため、ここに書いているシーンは参考レベルと考えてください。
そして、皆さんがダウンジャケットやコートを選ぶ際、「どのくらいのフィルパワーを目安にすれば良いのか」という一例が上記の表です。

もちろん、フィルパワーが異なればグラムあたりの暖かさは変わりますが、1000フィルパワーの極薄ダウンジャケットよりは、800フィルパワーの厚手ダウンジャケットのほうが保温性は高いです。
つまり、単純なフィルパワーの強さだけでなく、「どのくらい中身が入っているか」と「どんな設計か」で暖かさは変わる、ということを念頭に置いてください。
買う前チェックリスト|暖かさは「隙間風」と「中身の安定」で大きく変わります
数値の話をしてきましたが、実際の着心地(暖かさ)を左右する要素としては「隙間風」と「中身が偏らないかどうか」も重要です。
ここを押さえておくと、買ってからの満足度がかなり変わります。
熱が逃げる場所(首・手首・裾)が塞げるか
- 襟が高く、首元を包んでくれるか
- 袖口がリブやベルクロなどで絞れるか(手首からの冷気を防げるか)
- 裾にドローコードなどがあり、必要に応じてキュッと締められるか
- フードが実用的(深さと調整コードがあり、しっかり被れるか)
中身(ダウン)が偏りにくい構造か
- キルティング(ステッチ)で部屋が分かれ、中綿が一箇所に寄りにくいか
- 表側にステッチが少ないデザインでも、内部で小さな部屋に仕切られているか(商品説明で確認)
- 羽毛の吹き出しを抑える「ダウンプルーフ」などの表地が使われているとより安心
サイズ感(空気層+隙間風のバランス)
- 小さすぎると中の空気層が作れず、身体にピタッと張り付いて逆に寒くなりやすい
- オーバーサイズすぎると、首や裾から隙間風が入りやすくなる
- 暖かさ重視なら、ショート丈よりお尻が隠れる丈を優先すると体感が変わる

「数字」と「設計」の両方を見られるようになると、試着のときに“本当に暖かそうな一着”がかなり見分けやすくなります。
ダウンのメンテナンス方法|フィルパワーを維持するためのお手入れ方法は?
注意:ダウンの洗濯・乾燥は、必ず製品についている洗濯表示に従ってください。洗濯不可のマークがあるものや、不安な場合は無理をせず専門クリーニングの利用がおすすめです。

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どんなに高フィルパワーのダウンでも、適切なメンテナンスを怠れば性能は低下してしまいます。

正しい手入れによって、ダウンの膨らみを長期間保つことが可能であるため、基本的なダウンとの付き合い方も学んでいきましょう。
汚れを早めに落とす
これは服全般に言えることですが、汚れはなるべく早く落とすこと。
ダウンに付着した汚れや皮脂が中まで入り込むと羽毛が固まり、ふんわり感がなくなってフィルパワーが落ちてしまいます。

家庭科の時間で習うレベルの話ですが重要です。
汚れが広範囲になる前に、即座にケアするのが長持ちのコツです。
洗濯は適切な方法で行う
また、ダウンを自宅で洗濯する場合は、まずは洗濯表示を確認しましょう。
- 「手洗いモード(デリケート洗い)」が使えるかどうか
- 水洗い可能か、ドライクリーニングが推奨されているか
を必ずチェックしましょう。
そして、もし手洗いが可能なダウンなら、
- ダウン専用洗剤または中性洗剤を使用する
- 洗濯機なら「ダウンウェア用コース」や「手洗いコース」を選ぶ
- 他の衣類と一緒に洗わず、単独で洗う
- 脱水は短時間、または極力弱めに行う(長時間脱水は羽毛が偏る原因になる)
といった点を意識しましょう。

もちろん洗濯可能でも不安な方や、ドライクリーニング指定の製品であれば、プロのクリーニング店に依頼するのが安心です。

乾燥はしっかり時間をかける
また、洗濯後にしっかり乾燥させることも重要。
そうしないと、ダウンが固まったりカビの原因になったりします。

また、乾燥機を使う場合は必ず洗濯表示で「タンブル乾燥可」になっているかを確認し、OKであれば「低温モード」にしましょう。
乾燥用のテニスボールや専用の乾燥ボールを一緒に入れると、羽毛が偏りにくくなりフィルパワーを維持しやすいです。
長期保管前には必ず清潔な状態に
オフシーズンにダウンを長期保管するときは、必ず汚れを落としてから収納するのが鉄則です。
分かっちゃいるけど、意外と徹底できない人が多いのがこれです。
- 洗濯をして完全に乾燥した状態にする
- 表面を柔らかいブラシや生地用の粘着ローラーなどで、ほこりをしっかり取り除く
といったことが重要です。

収納の際は、通気性の良い不織布カバーや布袋を使うと、湿気がこもりにくくダウンの状態を保てます。
ビニール袋に入れて保管すると、通気不足や結露によってカビや嫌なニオイの発生につながるため避けましょう。
圧縮しない
分かります。めちゃくちゃしたくなるんですよね、圧縮。
でも「圧縮」はダウンの大敵です。
よくある「圧縮袋」を使ってコンパクトにすると羽毛が潰されてしまい、かさ高性を回復させるのが難しくなります。

基本はハンガーにかけて吊るしましょう。
もし、どうしてもスペースを節約したい場合でも、なるべく軽くたたむ程度にして、しっかり膨らむ余裕を与えてあげてください。
定期的なリフレッシュケアも
シーズン中に着ている間も、ときどき風通しの良い場所で陰干しをするなど、軽く乾燥させる習慣をつけるとフィルパワーが保ちやすくなります。
たとえば、着用後の帰宅時にサッとホコリを払い、湿気を飛ばしてからクローゼットに収納するようにします。
すると、次回の着用時にダウンがふわっとして気持ちよく着ることができますよ。

・・・といったことなどに気を付けて、お気に入りのダウンを大切に愛用してくださいね!
終わりに|フィルパワーを重視し、トータルも重視したダウン選びを
今回は以上です。
フィルパワーは、ダウンにとって重要な要素であることは間違いありません。
フィルパワーが高くて悪いことは基本ないので、可能であれば高フィルパワーのダウンを手に入れたい気持ちは理解できます。
とはいえ、ダウンの出来はフィルパワーだけですべて決まるわけでもありません。
この記事でお伝えしたように、「FP(質)× 内容量(量)」に、首・袖口・裾の設計や丈、サイズ感といった要素が加わって、ようやく「あなたにとっての良い一着」が決まってきます。
どんな用途で、どのくらい見た目や価格、中身、そしてブランドネームを重視するのかは個々人の価値観に依ると思います。
フィルパワーの基準や目に見えない中身の品質について知りつつ、「それだけが全ではない」ということは覚えておいていただけたら幸いです。
おしまい!
(少しでもお役に立てたなら、SNSに拡散していただけると嬉しいです!)
参考文献・出典
- QTEC(フィルパワー:測定方法・ダウンパワーとの違い):
https://www.qtec.or.jp/search/test/umou/umou02/ - REI Expert Advice(フィルパワーの考え方と暖かさとの関係):
https://www.rei.com/learn/expert-advice/what-is-down-fill-power.html - IDFL(フィルパワーのコンディショニング方法や測定条件について):
https://idfl.com/info/conditioning-methods-evaluation-warm-and-soft/ - カケン(ダウン混用率の試験例・表示の丸め方):
https://www.kaken.or.jp/test/search/detail/95 - 消費者庁(ステルスマーケティング規制について):
https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/stealth_marketing/ - 消費者庁(繊維製品の表示・混用率の考え方など):
https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/household_goods/guide/fiber/fiber_show.html - Textile Exchange(Responsible Down Standard の概要):
https://textileexchange.org/responsible-down-standard/
