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【コラム】バブアーに学ぶ伝統と変化、アウターの“不便益”【Barbour】

【コラム】バブアーに学ぶ伝統と変化、アウターの“不便益”【Barbour】

・バブアーは“田舎であること”を活かした、地域性に特化した商品を開発した

・歴史と伝統、時代を経たストーリー性の構築、国を挙げた協力といった背景を経て、ブランディングに成功している

・日本にバブアーは“ない”:地方創生、特に「東京でないこと」を活かすモデルがあってもよいのでは

今回は“手間のかかる”“愛おしい”バブアーという、見事なブランドを通じたコラムです

バブアー公式HPより引用

こんにちは。

本日はバブアー(Barbour)をご紹介させていただいた上で、コラムを書いてみようと思います。

全く知らない方に向けて簡単に説明させていただくと、バブアーは綿生地にオイルを染み込ませた生地、オイルドクロスのアウターが非常に有名な英国ブランドです。生地にオイルを含ませることで、防風性や防水性を確保しているのですね。

本格的に寒い冬はもちろんのこと、生地感的に春秋にも着られます。ゴアテックスやダウンといった機能的なアイテムが普及した現在、比較すると何とも“ローテク”ですが、そこがまた、魅力的な選択肢の一つになっているブランドです。

 

バブアー公式HPより引用

クラシックなトレンドが席巻している現在、バブアーもまた、勢いに乗るブランドのひとつです。近年では、エンジニアードガーメンツマーガレットハウエルといったブランドとのコラボレーションや、大手セレクトショップの別注品も多数揃えられる一方、ヴィンテージマニアの心もくすぐり続ける。

着用したことがある方の中には、“オイルドクロス”の手間が愛おしい。愛着が長年の支持へとつながっています。。一方で、“そんなことをしていられない、忙しい現代人”もいらっしゃるでしょう。そんな人向けにも、現在はオイルを使用しない、化繊やウールのモデルも多数揃えられています。

万人に向いているとは言い難いブランドですが、少なくともファストファッションにはない、一定の魅力を備えたブランドと言えるでしょう。本日は、バブアーの魅力のご紹介と、あなたの価値観やライフスタイルに則した選択、そして最後に、“ブランディングの価値”にも触れたいと思います。

それでは、本日も宜しくお願いします。

 

バブアーの背景、歴史、そしてブランドとしての繁栄について

バブアー公式HPより引用

バブアーが誕生したのは英国、イングランドの北東部にあるサウスシールズという地域です。

このサウスシールズを含む英国東海岸から、北ヨーロッパの北海を囲む地域は、中世からタラやニシン漁が盛んでした。英国の代表的な料理である“フィッシュアンドチップス”も、これらのフライ料理です。

 

15世紀頃になると塩漬け製法が確立され、魚の保存食が長期航海を可能にしました。

大航海時代の幕開けは、まずスペインやポルトガルを、続いて英国を世界の覇権国に押し上げました。この時代は漁業が、国力に対して非常に大きな貢献を果たしていたのですね。

そして、衣類もまた、地域産業と深く結びついています。産業革命を経た近現代。漁師や港湾労働者のために考案された、綿生地に油を染み込ませた防水性に富む生地が、オイルドクロスでした。

ナイロンタフタゴアテックスが生まれる前に考案された、歴史に培われた製法です。

 

そんな地域で、バブアーが誕生したのが1894年。ジョン=バブアーという人物が開業しました。

この頃のデザイナーやメゾンといったものは、まだ女性のものでした。“紳士服”はスーツなどが形作られると同時に、「モード」とは別の、特定の気候や条件に対応した製品を提供するメーカーが誕生します。バブアーも、そんな実用的メーカーのひとつでした。

やがて、“ファッション”とは無縁であったバブアーの、耐久性や防水性といった機能面が広く注目されるようになります。狩猟などのアウトドアやモータースポーツ、そして、二度の世界大戦でも使用されていくことで、やがて国内外にその名が知れ渡るようになりました。

 

また、バブアーを語る上で欠かせないのが、ロイヤルワラントと言われる英王室御用達の認可です。

この認可を与えられるのは現在、エリザベス二世(英国国家元首)、エディンバラ公フィリップ(女王の配偶者)、チャールズ英皇太子の3人ですが、バブアーはこの3人全員から認可を受けていますこの事実は、バブアーのブランドイメージを大きく向上させました。

エリザベス二世からは1982年、エディンバラ公からは1974年、英皇太子からは1987年に認可を受け、ワラントの数でヴィンテージ品の製造年代も大別されます。そういったマイルストーンもまた、マニアの心をくすぐる要素ですね。

英国王室御用達-知られざるロイヤルワラントの世界 長谷川 喜美 著 (平凡社新書)
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地域の環境から生まれ、英王室御用達という背景も活かし、国際的なブランディングに成功した。私たち日本人が苦手とするブランディングが、バブアーには凝縮されているように思えます

経済的な停滞と、今後の人口減少。少なくとも2つの面で斜陽国家となる日本において、私は、文化的な魅力度や、それに基づいたビジネスの展開は、非常に重要な産業となり得ると思います。

 

バブアーの代表的モデルを、歴史的背景を交えて紹介します

バブアー公式HPより引用

続いて、バブアーの代表的なモデルをご紹介

バブアーはモデル数も多いので、代表的なものに絞った上で、それぞれのモデルの特徴と背景を中心にお話しさせていただきますね。

 

ビデイル(BEDALE):1980年に“乗馬用として”発売された、バブアーの代表的モデル

バブアー公式HPより引用

・バブアーで最も有名な定番モデル

・オイル/オンオイルなど、様々な素材が発売されている

・スーツスタイルにも、カジュアル使いにもおすすめ

まずは、最も有名なビデイル(BEDALE)から。

バブアーと言えば、このビデイルを思い浮かべる人は非常に多いと思います。

初登場は1980年と、後述のヘイドンインターナショナルと比べれば新しいモデルです(とはいえ、一般的には40年に渡って発売されてるというのは、相当なロングセラーな部類ですが!)。

バブアー(Barbour)ビデイル(BEDALE)オイルドクロスジャケット
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ビデイルは元々、乗馬用のジャケットを想定して制作されました。比較的に短い着丈、背面の両側にサイドベンツ(スリット)は、元々は馬に跨るためのディティールです。また、袖の隠しリブが設けられていることで、防風性能を重視。

近年はスリムなモデルであるビデイルSLや、オーバーサイズビデイルも登場しています。ちょうどスーツと同じような丈になっているので、通勤時のアウターとしても優秀です。カジュアルにカットソー1枚の上に着るも良し、重ね着するも良しですね。

 

本来の用途とは裏腹に、ビデイルは都市部のビジネスマンが通勤時に羽織るジャケットとして、世界的にヒットしました。

私も含め、皆さんの99%が日常的に乗馬をしないと思います。バブアーは実用性を兼ね備えたメーカーですが、言ってしまえばそのリアルさが、“そそる”のだと思います。

“あえて、都会のビジネスマンが着る”。実用的なものを生み出し続けてきたバブアーが、高級なライフウェアとしてファッションにも切り込んでいる部分を、垣間見られているように思えます。

 

ビューフォート(BEAUFORT):ビデイルと似て非なるハンティングジャケットは、人気を二分する

バブアー公式HPより引用

・ビデイルと双璧をなす定番

・腰丈のブルゾン、スーツのアウターとしても◎

・背面のゲームポケットや、袖の捲りやすさが特徴

続いては、こちらのビューフォートをご紹介。

ビデイルに遅れること3年。“2クラウン時代”の1983年に発売されたビューフォートは、一見、ビデイルとよく似たモデルです。

しかし、乗馬用のビデイルに対し、ビューフォートはハンディングジャケットのディティールを採用しています。大容量のポケットや袖を捲りやすくしている点が、ビデイルとは似て非なる特徴に。丈もビデイルと比べて、やや長めに作られています。

バブアー(Barbour)ビューフォート(BEAUFORT)オイルドクロスジャケット
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膝上丈のため、スーツのアウターとしても優秀です。

捲りやすい袖はスーツの上からでも着やすく、元々、捕らえた獲物を入れるゲームポケットには、新聞紙を。

バブアーの背景から来る機能的なリアルさと、都会では手に入らない生活のイメージ。ロイヤルワラントを獲得したブランドの何となく格上げ感がありつつも、共通言語になり得る手の届く価格帯。

多くの点で、痒いところに手の届くポジションですよね。

 

ヘイドンジャケット(HAYDON JACKET)&ウィットレイ(WHITLEY):1910年発売のリバイバル

バブアー公式HPより引用

・初期モデルを復刻、歴史的なモデル

・長丈のAライン&トレンチコート

・フォーマルのアウターや、レインコートとしても優秀

3番目に紹介するのは、へイドンジャケット&ウィットレイ。ロングコートの類です。

有名モデルという程ではないかもしれませんが、2018年にリバイバルを果たした、ダブルブレステッドのAラインコートです。ボタン列幅の短い、なんともクラシックな雰囲気です。私は、ロング丈のコートの方が好きです笑

バブアーのオイルドクロスは実際に手に取ると、思ったよりも生地が柔らかくて繊細と思われる人が多いようです。ビデイルやビューフォート同様、軽量な6オンスのエジプト綿を使用しており、耐久性を確保しつつ、こういったロング丈のコートにすると高級感も増します。

 

バブアー公式HPより引用

こちらのヘイドン、なんと最初の発売が1910年。

実際には80年以上に渡って保管されていた個人所有のヘイドンが、バブアー社に寄贈されたことを切欠に、再販が実現しました。このストーリーが物語るのは、歴史あるメーカーの蓄積は、決してブランドだけのものではなくなるということ。この様なストーリー性もまた、歴史ある有名メーカーにのみ許された特権です。

バブアー(BARBOUR)ヘイドンジャケット(HAYDON JACKET)Aラインコート
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バブアー公式HPより引用

ヘイドンは今シーズン継続されていませんが、やや丈を短くしたトレンチコートタイプのウィットレイは、継続発売されています。丈の長さ的にも万人に合わせやすい印象があるのでしょうか。

ウエストベルトやラペルの返り部分までコーデュロイ素材になっているので、防寒性も高そうです。

 

インターナショナル(INTERNATIONAL):1936年発売、かつてモータースポーツを席巻したアイテム

バブアー公式HPより引用

・軽量ライダースジャケット

・40年に渡り、モータースポーツの第一線で活躍した機能性

・今日に却って目立ちたい、個性派の人におすすめ

最後に、インターナショナル

元々は軍用として作られたジャケットをルーツに、1936年に登場しました。

インターナショナルは、現代のモーターサイクルスポーツと共にありました。1920年代頃から都市部は徐々に自動車やバイクが普及し始めましたが、上流階級のスポーツとしてモータースポーツが確立。

ハーレーダビッドソンに始まるライダースジャケットも同時期に誕生したアイテムですが、比してバブアーのオイルドクロスは軽量で防風性に優れています。

 

バブアー公式HPより引用

インターナショナルはその後、1970年代ころまで実際のレースで使用されていました。スティーブ=マックイーンが愛用していたことでも、非常に有名です。

現在では、身に着けている人をあまり見かけませんが、個性派のあなたにとっては良いかもしれません。

バブアー(BARBOUR)インターナショナル(INTERNATIONAL)ライダースジャケット
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オイルドクロスの扱いと変化、ノンオイルのアウターは果たして“バブアー”か?

オイルの臭い問題は、概ねクリアされている

(こういう生活もしてみたくなります)

ここまでご紹介した通り、バブアーは大半の製品にオイルドクロスが使用されています。オイルドクロスが良い!という人もいれば、オイルを使用していることが、若干気になる方もいらっしゃると思います。

まず、気になるオイルの臭いについて

結論から申し上げると、今現在、バブアーで使用されているオイルの臭いはほぼありません。100人中90人は気にならない程度だと思います。

成分の詳細は企業秘密だそうですが、高粘度、高抗酸化といった特性のあるものが使用されており、人体への影響も極めて少ないオイルです。

 

バブアーに使用されるオイルに関しては、時代と共に改良が重ねられてきました。

誕生した19世紀末期当時、使用されていたオイルは魚の肝油だったそうです。魚の油は不飽和脂肪酸のため、空気に触れると酸化してしまい、時間が経過すると強烈な臭いを発していたそう。暴風雨吹き荒れる寒冷地ならいざ知らず、温暖な都市部でそんな臭いがしたら、ちょっと耐えられないかもしれませんね。

また、石油由来のオイルに関しても、近年までなかなかの臭いでした(尤も、その臭いが良いという方もいらっしゃいますが・・・)。

バブアー(BARBOUR)ソーンプルーフ オイルドクロス用リプルーフオイル
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私自身、父がバブアーのコートを愛用していたのを、臭いで記憶しています。生まれてから数年間をバンクーバーで過ごしていたのですが、英国同様に雨量の多い地域で、オイル缶の臭いの記憶が未だにあります。それが1990年ごろの話ですので、そのころのオイルはまだ、臭いが強かったのだと思います。

いずれにせよ、現在は臭いに関して、概ねクリアになっていると思います。“昔はこうだった”と言えるストーリー性もまた、長年続くブランドの特権であり、魅力の一部ではないでしょうか。

バブアー(BARBOUR)ビデイル(BEDALE)レディース向けジャケット
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都会にオイルドクロスは向かない?

そんなバブアーのオイルドクロスですが、臭いは解決されていても、若干向いていない場面があることは否めません。

例えば、着たまま満員電車に乗ったり、会社の共用ロッカーに入れたりするのは憚れますよね。使用環境は若干限定されると思います。

また、実際には生地に染み込んでいれば易々と付着しないものの、オイルドクロスの製品自体、ずぼらな人には向きません。普通のクリーニングでは対応していないため、ブラッシングと固く絞った布でのメンテナンスが必要になります。油を入れ直すリプルーフも、数年に一度は必要になります。

それらを加味して、愛着を湧かすことができるか否か。ご自分の性格や、諸々の環境祖考慮してみた上での判断が、オイルドクロスと向き合うか否かの第一歩になると思います。

 

まとめ:ファッションの“不便益”と使用環境、そして独自性を考える

今回は、バブアーについてご紹介を経て、させていただきました。

実際、機能的な部分だけを切り取るのならば、マッキントッシュのゴム引きコートも、バブアーのオイルドクロスも、総合的にはゴアテックスには敵わないと思います。

しかし、バブアーにはブランド力の背景たるストーリーがあります。アイテム自体にも、他のブランドにはない魅力もあります。

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個人的には、バブアーからは“不便益”を学びました。オイルドクロスの手入れからは素材の知識を、背景にある歴史からブランドの意味を学びました。手間が、知識を与えてくれました。

不便益という発想 -川上浩司-
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そして、バブアーは本国や日本直営店に持ち込むと修理も対応してくれます

数十年分の生地がストックされており、顧客に長く着てもらえるサービスも充実しています。こういう行為やライフスタイルもまた、“ただ着て捨てるだけ”という人の生活スタイルでは、到達できません。

新しさや思想を追求・表現するデザイナーズブランドも良いけど、こんな歴史と伝統に育まれたブランドも素敵だと思います。ストーリーはそれ自体にも価値があるし、それもまた信用対価たる“ブランド力”です

ファッションは基本的に「都会へのあこがれ」を産業にしてきました。ファッション業界の人間に、地方出身者が非常に多いことを感じているのは、私だけではない筈です(かくいう私も、その一人です)。

現状、日本は東京以外、都市としてファションを確立させている地域はないと言って良いと思います。これは都市環境整備の過程で、大阪も名古屋もその他の都市も、東京に追随してきた結果です。

経済成長に全力を注いできたモデル自体や、その恩恵を決して否定しません。しかし、これからの地方がブランディングとして目指すべきは、むしろ“東京ではない”独自性ではないでしょうか。

 

バブアーは都市部はもちろん、田舎の風景にもよく似合います

都会へのあこがれを目指さない生き方、独自性を確立する生き方もあって良いですし、あえての地方在住をもって、自己実現する人も出現しています。

日本は、世界中どの地域でも着られるユニクロを生みました。素晴らしいことですが、ヒストリーや圧倒的な格に裏打ちされた、エルメスは生めません。それ以上に、バブアーのように地域に根付いた地域の独自性とブランディングを両立させたものを生めないことを、とても残念に思えます。

ものを纏うのか、歴史からの変化を纏うのか、それとも、それらを一切捨て、コスパや機能を追求した合理性を纏うのか。

絶対的な正解・不正解はなくとも、何が私たち自身に、この国の将来にとって良い選択になるのか。

一度立ち止まって考えて、そして選んでいただけたら幸いです。

 

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