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SHOLL(しょる)
皆さまこんにちは。“SHOLLWORKS”運営者のSHOLL(しょる)と申します。

1987年、山梨県甲府市生まれ。国内デザイナーズブランドを経て、ファッションコングロマリットのブランドでデザイナー職を経験。

現在は東京都在住、ブランディングとマーケティングを涵養させる活動も行っています。
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無染色カシミヤとは?希少価値が高い理由や選ぶべきカシミヤの色、実物レビューも紹介

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こんにちは、しょる(@SHOLLWORKS)です。

本日は「無染色カシミヤ」について、なぜ希少価値が高いのか&実物レビューをしたいと思います。

無染色カシミヤとは、読んで字の如く色を付けていないカシミヤ本来の色を活かしたもの。

カシミヤの柔らかで繊細な手触りを好む人は多いと思いますが、無染色カシミヤはカシミヤ本来の手触りや光沢感を最大限活かすことができます。

一方、無染色カシミヤを見たことがあるという人は決して多くないですし、なぜ良いのか気になる方もいらっしゃると思います。

そこで今回は、無染色カシミヤと通常のカシミヤとの違いや希少価値、そして実際に無染色カシミヤの素材感を活かした私物を紹介します。

SHOLL
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結論、上質な無染色カシミヤは、素材の良さを活かせるため良いことは間違いありません。

それでは本日もよろしくお願いします!

著者「SHOLL(しょる)」プロフィール

1987年生まれ。国内ブランドを経て、伊ラグジュアリーブランドのデザイナーとして4年間勤務。現在はデザイナーの他、日本の服飾産業を振興するため、マーケティング支援も行っています。

素材の機能性からパターンまで精通し、シンプルかつ素敵な服装の普及に努めています。


※当サイトのコンテンツは著者の知識と専門性、情報に基づき、完全に独自に制作しています。PRの有無に関わらず、メーカーはコンテンツや評価の決定に一切の関与をしていないことを宣言します。なお、この記載は景表法第5条第3号を遵守するためのものです。

目次

無染色カシミヤとは?特徴について解説

無染色カシミヤとは呼んで字の如く「染めていないカシミヤ」です。

無染色になると一体どんな特徴があるのか、カシミヤの特性を踏まえたうえでお話させていただきます。

傷めずにカシミヤの良さを存分に活かせる

まず、無染色カシミヤの良い点として、染色しないことで糸や生地の傷みを防ぐことができます。

カシミヤも羊毛も「毛」である以上、人毛同様「染めたら傷む」ことは避けられません。

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髪を染めたことがある方、パーマをかけたことがある方、ブリーチをしたことがある方は「髪が傷んだ」経験があると思います。

これは動物の毛素材も全く同じですし、人毛よりも細い分だけダメージを受けやすいです。

カシミヤは染色工程で傷みやすい

カシミヤは毛素材の中でも一際繊細であるため、毛素材の中でも染色工程で傷みやすい素材です。

「肌触りが良い」ということは毛が細い場合が多く、それだけダメージに弱いということに他なりません。

染色は染料と水、そして定着のために熱が重要ですが、高温で染めると硬化してしまい、風合いが失われる傾向にあります。

だからこそ、染色や漂白の工程を省くことで繊維そのものの柔らかさ・油分・光沢が保持され、素材本来の手触りを維持することが可能です。

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カシミヤ特有の「ぬめり感」や「空気を含んだ軽さ」は加工で損なわれやすいため、無染色の方が素材の純度が高く、触感が格別に優れます。

しかも色が抜けやすい

Image Photo by UTO

さらに、カシミヤはウールなど他の毛素材と比べて色が抜けやすい特徴があります。

毛の構造として細いだけでなくスケール(鱗状構造)が浅いため、染料が繊維内部に入り込みにくいことが理由です。

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その結果、カシミヤは「染着性は良いけれど色の保持力がやや弱い」という特徴があります。

なぜ、無染色カシミヤは貴重なのか?

無染色カシミヤは「染色する」という工程を省くため、一見するとそのまま出せて生産者的にも「お得」と思うかもしれません。

しかし、カシミヤの原料となるカシミヤ山羊の中でも「そのままで美しい原毛」は非常に限られるのが現状です。

実際、ほとんどのカシミヤは美しく見えるように漂白や染色で色を整えていますが、最初から素のままで毛の長さやヌメりといった美しさの条件を満たす毛は少なく希少といえます。

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染色することで工程の分だけ手間が掛かる一方で、染めれば色自体は揃いますよね。

さらに、その無染色の原毛を糸にして一枚の美しい生地にするのは、毛の選定や組み合わせが非常に難しいものになります。

「選別工程」にかなりのコストが掛かる

「誤魔化しが効かないものを正直に揃える」というのは相当なコストが掛かります。

カシミヤはもともと1頭あたり年に100〜200gほどしか採れませんし、そのうち「無染色で商品化できるほど均一で美しい色の毛」はごく一部です。

つまり、一頭あたりごく僅かしか採れないもの同士を美しさを損なわずに量を確保しなければならないため、本当に上質な無染色カシミヤの選別工程は非常に難しいのです。

選別工程でコストが増える理由

  • 色ごとの仕分け:白・ベージュ・グレー・ブラウンなど、自然色を目視と経験で振り分ける工程が必要。
  • 不純物除去:草やほこり、粗毛(外毛)を取り除く作業に手間が掛かり、特に無染色品は微妙な色差もNGなので精度が高く求められます。
  • 歩留まりの悪さ:選別で弾かれる毛が多く、最終的に使える量が少ないため単価が跳ね上がる。
  • 産地・ロット管理:染色で均一化できないため、同じ色合いを揃えるためにロットごとに厳密に管理する必要がある。
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つまり、普通のカシミヤであれば、ここまで徹底してやるくらいなら脱色や染色したほうが「パッと見が揃うし遥かに低コストで楽」ということです。

カシミヤ製品の「望ましい色」

以上のことから、カシミヤには「望ましい色」というものがあります。

  • 「無染色カシミヤ」かつ「美しい生地」(原毛のクオリティが高く、キチンと選定されているもの)
  • 淡色のカシミヤ生地(濃色ほど熱に晒す時間が多く、さらに色も抜けやすいため風合いが失われやすい)
  • 「原毛染め」の生地(脱色しない分、傷みが少ない)

といったカシミヤほど、カシミヤの良さを活かせているため優先度が高いと言えます。

ここで要注意なのが、単に「無染色カシミヤです!」というだけでは不十分で、ただ染めていないだけでイマイチな見た目の生地なら、染めているカシミヤのほうがマシなケースも多々あります。

オフホワイトやベージュ、ライトグレー、ブラウンなど、カシミヤ本来の色の良さを活かすには、とりわけ原毛の質が良く、綺麗に選ばれ混ぜ合わされたものでなくてはなりません。

個人的には濃色のカシミヤ製品は避けている

個人的な好みではあるものの、以上の理由から濃色のカシミヤ製品は基本買いません

これは染料や工程そのものにも依りますが、基本的には濃い色ほど染色するために時間が掛かり、その分、熱や染料によって傷みやすくカシミヤの良さが活きにくいからです。

さらに、先述の通りカシミヤは色が抜けやすい性質があります。

例えば「黒のカシミヤコート」が合わせやすい色×魅力的な素材であることは分かりますが、着用やクリーニングを重ねる内にだんだん緑っぽくなってきたりします。

そのため、安易に手を出すのはあまりおすすめできません。

SHOLL
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黒やネイビーのような濃色であれば、ウールやアルパカ(元々濃色の個体が多く無染色で使えるものが多い)などの素材を選ぶ方が良いと思います。

パッと見や素材の希少度だけでなく、素材の特性や相性も鑑みたチョイスもファッションの一部ですよ。

「リングヂャケットマイスター」の無染色カシミヤジャケットを紹介

実際に、無染色カシミヤを用いた私物の「リングヂャケットマイスター」のジャケットをレビューしたいと思います。

2023年秋冬シーズンの商品で、定価は当時308,000円(税込)でした。

先述の通り、無染色カシミヤかつ美しい生地は非常に限られます。

そのため、トップグレードの生地に微妙な仕立てではせっかくの素材が台無しになるため、特にテーラードジャケットならば見合った縫製レベルが求められます。

リングヂャケットは日本の既成ブランドとしては圧倒的なクオリティを誇り、まさにこの生地を使用するに相応しい組み合わせです。

モデルはリングヂャケットを代表する「254」ドロップ8.25で胸板が厚め&ウエストが細めの体型の人に合います。

ちなみに、近年はウエストの絞りをやや抑えた「254IN(インターナショナルモデル)」も展開しており、こちらはドロップ7.5と比較的抑えめ(それでもメリハリは強い方ですが!)です。

全体的には青み掛かったベージュで、白系とブラウン系の原毛が混ざり合っています。

カシミヤ原毛の中でも相当なランクの高さを感じさせますし、襟の吸い付き、胸の張り方、前肩、アームホールの形状といった仕立ての良さと相まって極上の着心地を提供してくれる1着です。

ヘビーウェイトの生地を採用し、前身頃全体に芯地を添えることなくアンコン仕立てにしているのもカシミヤの柔らかさが活きる采配です。

今回のジャケットに使用されている生地
染色されているカシミヤ生地

ちなみに、こちらの記事で紹介している同ブランド(厳密にはリングヂャケットナポリレーベル)のダブルフェイスコートは色されたカシミヤです(写真2枚目)。

生地をアップで比較すると、無染色カシミヤの生地は色のムラ感を感じさせます。

もちろん、淡色に染色したハイグレードのカシミヤをダブルフェイス仕立てでふっくらと仕上げるのも、カシミヤの良さを活かす有効的な方法です。

淡色生地に合わせて飴色の本水牛ボタンが用いられていますが、こういう系のボタンは基本的にブリーチしています。

「ここは脱色してるんかい!」というツッコミが入るかもしれませんが、個人的には綺麗だと思うので好きです。

ちなみに、リングヂャケットマイスターのボタンは一つ一つ手で削って触り心地を調整しているそうです。

\ リングヂャケットの購入はこちら/

リングヂャケット(RING JACKET)カシミヤジャケット
created by Rinker

【Q&A】無染色カシミヤの疑問に答える

そして、ここまでの内容やその他をまとめて、Q&A形式にしました。

無染色カシミヤとは?

染色や漂白をせず、原毛そのままの色・質感を活かしたカシミヤです。

加工を最小限にすることで、繊維本来の柔らかさや油分、自然な光沢が残ります。

無染色にするとどんな特徴がある?

手触りと光沢がよりリッチになります。

熱や薬剤によるダメージが少ないため、カシミヤ特有の“ぬめり感”や軽さが損なわれにくいからです。

カシミヤはなぜ染色で傷みやすい?

繊維が非常に細く、熱によって硬化するからです。

高温染色で風合い低下が起きやすく、細い繊維ほど影響が顕著です。

カシミヤは色が抜けやすい?

相対的に抜けやすいです。

スケール(鱗)が浅く染料が奥まで入りにくいため、染着はしても保持力が弱めです。

なぜ、無染色カシミヤは貴重なのか?

素のままで美しい原毛がごく少ないからです。

色・長さ・質感が揃う原毛は限られ、多くは漂白や染色で整える必要があるため、無染色で成立する素材は希少です。

無染色カシミヤの選別工程でコストが掛かるのはなぜ?

仕分け精度と歩留まりが厳しいからです。

自然色を目視で色分けし、不純物や粗毛を徹底除去、ロット管理で色差を抑える必要があり、使える量が少なく単価が上がります。

無染色カシミヤの手入れ方法は?

カシミヤ用ブラシでブラッシングし、必要時は生地に優しいクリーニングに出すのが基本です。

着用後はブラッシングと風通しの良い場所で保管、防虫対策も大切です。

江戸屋 洋服ブラシ カシミヤ用
created by Rinker

カシミヤ製品はどんな色を選ぶべき?

無染色(オフ白・ベージュ・ライトグレー・ブラウン)や淡色のものが有利です。

濃色ほど染色時間・熱負荷が増えることによる風合い低下、また色抜けも起きやすいため、素材の良さを活かしにくいからです。

濃色のカシミヤは避けた方がいい?

個人的には避けるのが無難と考えています。

黒は経年で退色・変色(緑っぽさ等)が出やすく、同系色ならウールやアルパカの方が相性が良い場合があります。

終わりに|「無染色カシミヤ」はカシミヤの能力を100%引き出す

今回は以上です。

カシミヤの素材の特性から無染色カシミヤの長所、逆に無染色カシミヤの生地として成立するためには非常に選ばなければならない、という話をさせていただきました。

私たちは製品タグに「カシミヤ」と書かれていると、つい嬉しくなる一種の魔法に掛けられています。

しかし、実態としてカシミヤにも千差万別ありますし、カシミヤだったら何でも良いわけでも、何色でも良いわけでもありません。

マーケティングによって掛けられた魔法はときに、本来の「カシミヤらしさ」や「奥行き」を奪うこともあるのです。

そして、「本当にそれ、カシミヤである必要ある?」ということも併せて投げかけたいです。

毛素材はカシミヤだけではなく、ウールやアルパカ、キャメル、モヘアなどあって、それぞれに良さがあります。

だからこそ、そういった特徴や特性を知ることで、単に「売られているから」「パッと見が良さそうだから」だけではない、服の選び方ができると思うのです。

SHOLL
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ぜひ、「カシミヤだから」という動機に付け加えていただいて、「これはこういう理由でカシミヤ」「これはこうだからウール」というようなチョイスをしていただけたら幸いです!

おしまい!

(少しでもお役に立てられたなら、SNSに拡散していただけると嬉しいです!)

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本当に良い、ブランドを。

SHOLLWORKSは、プロの目線からファッションに関する情報と価値観をお届けします。

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1987年生まれ。国内ブランドを経て、伊ラグジュアリーブランドのデザイナーとして4年間勤務。
現在はデザイナーの他、日本の服飾産業を振興するため、マーケティング支援も行っています。
素材の機能性からパターンまで精通し、シンプルかつ素敵な服装の普及に努めています。



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