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SHOLL(しょる/今宮章宏)
ファッションブロガー・デザイナー・服飾評論家
1987年生まれ。国内大手アパレルメーカーのデザイナーズブランドを経て、伊ファッション・コングロマリットでデザイナー職を4年間経験。

現在は日本の服飾産業を振興するため、SHOLLWORKSを運営する傍ら、ファッション分野を中心にマーケティング支援も行っています。

素材の機能性からパターンまで精通し、シンプルかつ素敵な服装の普及に努めています。
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あなたはなぜスーツを着るのか?歴史と変遷、その理由

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こんにちは、しょる(@SHOLLWORKS)です。

今日は、「あなたがスーツを着ている理由」について。

私たちは、なぜスーツを着るのでしょう?

昨今はスーツを着ない人も増えましたが、大多数のビジネスマンは未だにスーツを着ています。

考えてみれば、とても不思議ではありませんか。

皆、なんとなく「そういうものだ」と捉え、入学式や卒業式、成人式、冠婚葬祭と、スーツを着る機会を得ていきます。

「洋服だから?」「ちゃんとしてそうだから?」「カッコいい(とされている)から?」

一応、どれも正解です。

しかし、それ以上に、私たちは歴史に培われた社会的価値観に囚われて生きているからです。

SHOLL
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理由を紐解くに、まずはスーツの成立から押さえます。

「スーツの神話」 中野香織 著(文春新書)
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著者「SHOLL(しょる/今宮章宏)」プロフィール

1987年生まれ。国内大手アパレルメーカーのデザイナーズブランドを経て、伊ファッション・コングロマリットでデザイナー職を4年間経験。現在は日本の服飾産業を振興するため、SHOLLWORKSを運営する傍ら、ファッション分野を中心にマーケティング支援も行っています。

素材の機能性からパターンまで精通し、シンプルかつ素敵な服装の普及に努めています。


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目次

あなたはなぜスーツを着るのか?歴史と変遷、その理由

スーツの成立|貴族装いと変化

 

現代スーツの直接の祖先は、19世紀半ば以降に英国で広まったラウンジスーツにあります。

服装の変化は有史以来連続したものだからこそ、「厳密にいつから」と言うことは難しいです。

ただし、現在のビジネススーツに近い「短めの上着と共布のパンツ」は、19世紀後半に形を整えていきました。

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ニューヨークにあるメトロポリタン美術館は、英国で「ラウンジジャケット」と呼ばれたゆるい上着とストレートパンツの組み合わせが、1860年代に田園滞在やスポーツ用として広まったと説明されています。

モーニングを着用した昭和天皇(写真右)と、
ロナルド・レーガン元米大統領(写真中央)

男性の上着は、長い丈のコートから少しずつ活動しやすい形へ変わっていきました。

フロックコートは19世紀の男性服を代表する上着で、18世紀のドレスコートよりも簡素な形として広まりましたが、やがて、長い上着の系譜は現在の正装であるモーニングコートにつながります。

さらに、モーニングコートから日常や活動に向く短い上着として発展したものが、テーラードジャケットです。

このような流れで「テーラードジャケット」の誕生と、上着とパンツが共布(ともぬの)で仕立てられる流れが重なり、現代的なスーツの形が整っていきました。

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では、どのような時系列で今のテーラードジャケットやパンツ、そしてベストが誕生したのでしょうか。

時系列に沿うと、スーツが「貴族の装い」から「仕事着」へ移る流れがつかみやすくなります。

時の英国王、チャールズ2世

歴史が近世に突入する17世紀頃まで、貴族の服装は豪華絢爛さが身分そのものを表していました。

当時の男性貴族は、女性よりも華やかな装いをしていた人もいたそうですが、1666年、時の英国王であるチャールズ2世が、宮廷服に新しい「vest(ベスト)」を取り入れました。

この「vest」は、現在のベストやウエストコートへつながる服です(ただし、ベストそのものがこの年に英国で発明されたわけではありません)。

サミュエル・ピープスの日記には、チャールズ2世が服装の新しい流行としてvestを定め、貴族に倹約を教える意図があったことが記されています。

1666年の服装改革は、豪華な宮廷服からシンプルなものへと舵を切るきっかけとなり、コート・ベスト・ズボンを軸にした男性服へ移っていく節目のひとつです。

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いずれにせよ、英国の上流階級の装いは、装飾の多さだけで身分を示す方向から、より構築的で抑制された服装へと向かっていきました。

これが、他のヨーロッパ諸国に先んじて、英国がスーツを誕生させた土壌になったと言われています。

さらに、18世紀末になると、長ズボンも政治的な意味を帯びるようになります。

それまで、フランスの上流階級の男性は半ズボン(キュロット)を穿くことがありました。

フランス革命期に登場した「サン・キュロット」は、絹の半ズボンを身につける上流階級に対し、長ズボンを身につけた民衆や急進派の象徴でした。

フランス革命の原動力となった
サン・キュロット

「サン・キュロット」たちは、単なる服装の呼び名ではなく、革命期の民衆運動と結びついた存在でした。

そのため、長ズボンは機能的な服装であるだけでなく、身分差への反発や新しい市民社会の価値観とも結びついていきました。

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貴族は労働者階級となる“平民”に迎合し、また、社会の合理化に並行してシンプルな服装を心掛けるようになります。

革命の余波を受けて、英国でも貴族が長ズボンやブーツを着用するようになったことも、現代のスーツに“近づいた”出来事です。

一方、上着に大きな変化が起きたのは、先述のとおり19世紀の中頃から後半にかけてです。

この時代に、正装よりも動きやすく、くつろいだ場面や屋外活動に向くラウンジスーツが広まっていきました。

英国で「ラウンジジャケット」と呼ばれたゆるい上着とストレートパンツの組み合わせは、1860年代に田園滞在やスポーツ用の服として登場したと説明されています。

この時代にはスモーキングジャケットも誕生しましたが、こちらは“くつろぎながらタバコを吸う(smoking)ためのジャケット”という意味です。

「正装に対する楽なウェア」としての位置付けが、ラウンジスーツやスモーキングジャケット本来の役割でした。

いずれにせよ、シンプルなフロックコートやベスト、長ズボン、そしてテーラードジャケット。

これらが、19世紀の英国やフランスにおける上流階級の装いと結びつき、現代のスーツがほぼ完成しました。

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ここからさらに、「くつろぐための服」だったジャケットが、動きやすさから仕事着へと転用されるようになったことで、現在の「仕事着としてのスーツ」が確立されました。

(上流階級と装いを近づけることで)身分を誇示して「強さ」を示してきた

 

ここまで紹介してきたとおり、スーツは時代と共に簡略化されて誕生した「くつろぐため」のウェアでした。

しかし、ここから仕事着(ビジネスウェア)としてのポジションを確立したのは、スーツが(平民に迎合したルーツを持ちつつも)上流階級の装いだったからです。

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この上流階級の装いが、産業革命と資本主義経済の広まりによって誕生した「ブルジョアジー」たちが着用したことで、経済的強者の装いから一般化してスーツが仕事着として定着しました。

資本主義が社会に浸透し、中流階級からも「資本家」という存在が生まれた近現代。

日本よりも遥かに階級意識が社会に根付いている英国において、家柄とは違う資本主義社会でのパワーである「富の力」を持った彼らが、次に目指したものが社会的権威でした。

要するに、お金は持っているけれど階級社会における“生まれながらのステータス”を持っていない「ブルジョアジー」たちがスーツを身に纏うことで、スーツは社会階級制度からの脱却というテーマが与えられるようになりました。

だからこそ、スーツは(元々は貴族階級の装いでありつつ)、平民も着ることで広く社会における「ちゃんとしている」「身分が高い」「信頼がおける」象徴となりました。

日本でも第一次世界大戦後に誕生した「成金」
この風刺画の人もスーツを着ています

長い人類の歴史において、常に服装は身分を表すツールでもありました。

見た目そのものが、その人のステータスを表しており、貴族は貴族の格好をして、平民は平民の格好をする。

だからこそ、経済的な力を持った資本家にとって上流階級と装いを近づけられることは、資本を持ち、身分を持たざる彼らの悲願でもありました。

いくら経済的な自由を得たとしても手に入らない「生まれながらの身分」というステータスのギャップを埋めるための画一化された服装こそが、「スーツを着ること」だったのです。

階級という社会に深く根差した障壁に対し、(ぱっと見だけでも)同一化することを目的にジェントルマンという概念が作り出されました。

そして、彼らの服装にスーツが選ばれたことが今日、スーツがここまで普及した理由です。

狩猟の時代における保証であった肉体的な強さに代わり、スーツを着るということは、資本主義社会下における強さの象徴となりました。

今の私たちにどれほどの階層意識があるのかは分かりませんが、この意識こそ、スーツが普及した理由であることは間違いありません。

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つまり、結局はまだ有史以来の「身分を表す」という服装の使命は、スーツを経ても本質的に変わっていないということでもありました。

日本の洋装の伝来と、スーツの普及

スーツの文化が日本に伝わったのは、現代型のスーツが確立されて間もない19世紀後半のことでした。

19世紀、世界の覇権国であった英国の価値観は世界の諸地域に波及しましたが、英国と比して階層意識が希薄といえる日本においても、急速な文明開化と“列強国”としての立ち振る舞いが求められた時代です。

是非はさておき、それが当時の倣うべき価値観だったことは間違いないでしょう。

日本では、明治4年(1871)に服制を改める方針が示され、明治5年(1872)の太政官布告第339号で大礼服・通常礼服に洋服を用いる制度が整えられました。

男性の断髪や洋服姿は、文明開化のシンボルにもなりました。

国民全体にまで洋装が普及するのは戦後の話ですが、公的な礼装としての洋装化は、明治政府が西洋の制度や価値観を取り入れていく流れの中で進みました。

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(神道行事を除き)皇族が現在も公務でスーツを身に纏うのは、こうした近代以降の礼装規範とつながっています。

一方、日本にも素晴らしいメーカーやテーラーが存在しますが、公平意識の強さが産業を支えました。

象徴的だったのが、高度経済成長期に皆が買えるよう、全国の国道バイパス沿いに洋服の青山紳士服のコナカなどのスーツ量販店が計画的に構えられた点です。

こういった国民性や普及の仕方は「一億総中流」的なスーツの普及に貢献しました。

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英国のサヴィルロウやイタリアのナポリのような都市や地域単位のブランド化よりも、「皆が廉価でそこそこの物を」という階層意識の低さは日本らしさの一端と言えるのでしょう。

高度経済成長期からバブル崩壊までの日本は「最も成功した社会主義モデル」とも形容されます。

これは、矛盾した「社会的階層からの脱却」に対して、最も成就させていた“スーツ的社会モデル”だったのかもしれません。

しかし、そういった“スーツ的社会モデル”は既に過去のものとなりました。

同時に、「スーツを着ない仕事はまともな仕事じゃない」という価値観や「ブルーカラー」「ホワイトカラー」といった意識も薄れたことも間違いありません。

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スーツの役割は終わりを迎えるのか?

スーツを着ないことでブランディングする人も増えている

スーツの歴史と変遷を語りつつ、「なぜ、あなたはスーツを着ているのか?」というテーマでお話しさせていただきました。

少なくとも、仕事着としての「純粋なスーツの比重」は、今後も少しずつ下がっていくでしょう。

大手スーツ専門店も、オフィススタイルの多様化に対応してビジネスカジュアルの品揃えを強化していますし、スーツが誕生した19世紀半ばとは異なり、今はもっと機能的で合理的な服が沢山あります。

また、普及し過ぎたことで却って「没個性的」と感じられたり、「労働者として囚われている」というネガティブなイメージを抱いている人も多いのではないでしょうか。

今や、インフルエンサーをはじめ「あえてスーツを着ない人」も多い時代です。

彼らにとってスーツは権威を示すものでも、説得力を増すものでもない。

むしろ着ていたら、違和感すら感じさせるような存在です。

SHOLL
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「スーツを着ないこと」自体が自由な生き方を連想させる。

だからこそ、私はスーツの役割が今後大きくなることはないと思います。

「否応なしにカッコいい」という価値観に、どう向き合うか

 

しかし、それでもスーツはなくなりません。

なぜなら「スーツはカッコいい」からです。

普段着にはない色気や魅力、場を作る力があることは間違いありません。

見た目が良ければ能力は高そうに見え、受ける評価は高く、人生も総じて有利に動きます。

これは、良くも悪くも事実です。

「スーツが好き!カッコいい!」という人がいる限り、その需要は尽きません。

着用しているから、その歴史や階級意識も背負わねばならないというものではありませんし、身の引き締まる気持ちも、相手から得られる信頼感も決して侮れないものです。

たとえ仕事では着なくなろうとも、重要な局面でのスーツスタイルおよびその着こなしは、あなたの人生を輝かせる可能性を秘めています。

スーツ自体の着られ方が変化をしていくことすら、恐れなくて良いのだと思います。

仕事で着させられる服から、勝負服に、週末のデート着に、相手を「落とす」服に。そんなスーツの未来を私は予感しています。

今私たちが生きるこの時代において、歴史としての変化も見てみたくありませんか?

「ひとはなぜ服を着るのか」 鷲田清一 著 (ちくま文庫)
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これからのスーツというもののポジション。それは個々人の選択の連続が決定します。

だから、あなたが明日クラシカルにスーツを着るのも良し、世の流れに身を任せてカジュアル化するのも良いでしょう。

セットアップスタイルでTシャツにスニーカー。それもOKです!

あなたは、スーツという存在や歴史、今後にどう向き合いますか?

ご自身の価値観、そして環境を見つめ直した上で、選択してみてください。

(少しでもお役に立てたなら、SNSで拡散していただけると嬉しいです!)

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本当に良い、ブランドを。

SHOLLWORKSは、プロの目線からファッションに関する情報と価値観をお届けします。

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1987年生まれ。国内大手アパレルメーカーのデザイナーズブランドを経て、伊ファッション・コングロマリットでデザイナー職を4年間経験。現在は日本の服飾産業を振興するため、SHOLLWORKSを運営する傍ら、ファッション分野を中心にマーケティング支援も行っています。

素材の機能性からパターンまで精通し、シンプルかつ素敵な服装の普及に努めています。



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