こんにちは、しょるです。今回は、手持ちのヴァーシュ(VASS SHOES)のストレートチップをレビューします。
(ヴァーシュって何?という方は、こちらからお読みください)
ご紹介するのは、内羽根ストレートチップのAlt English。冠婚葬祭にも使える紳士靴の基本と位置付けられる靴で、私が一番最初に入手したヴァーシュです。
合わせるスーツやシャツは、冠婚葬祭ならダークスーツに無地の白シャツ。普段使いなら、無地~ピンヘッド、シャドー(ヘリンボーン)ストライプといった、(比較的)フォーマル度の高いorシンプルな柄や色。
特に、今回ご紹介するUラストは、セミスクエアトウ&ややロングノーズが特徴。中庸的なFラストと比べてアーチサポートも強く内羽根式ですので、脱ぎ履きしない環境での使用に向いています。
VASS(ヴァーシュ)Alt English Uをレビュー【ストレートチップ】
ややロングノーズ&セミスクエアトウのスタイリッシュな木型(ラスト)
2000年代の初頭にロベルト・ウゴリーニとのコラボレーションで大きな話題となったヴァーシュ。Uラストはコラボ後に誕生した木型で、ウゴリーニ(Ugolini)の頭文字を冠した木型になります。
Uラストは、(最も中庸的なFラストと比べて)ノーズがやや長め、ウィズやウエストは僅かに細め。ジョンロブの7000番ラストと同程度の細さです。
また、UラストはFラストと比べて履き口や一の甲が低め。その分、アーチサポートが強く、踵も極めて小さいので靴全体で適度にホールドしてくれます。指の付け根部分の甲が高めの方は、Fラストや3636ラストの方が良いと思います。
【ちなみに】緑箱時代の「旧ヴァーシュ」:もの凄くクオリティが高い
Uラストのストレートチップは、現行品のラインナップにも存在します。しかし、今回ご紹介しているものは、いわゆる“旧ヴァーシュ”。革質やつり込みの丁寧さなどのクオリティが、恐ろしく高いことが特徴。
現行品のヴァーシュも、最高峰の既成靴ブランドであることには間違いありません。しかし、旧ヴァーシュのクオリティはさらに群を抜いています。
革靴界のあらゆるブランドに該当することですが、革質、ステッチのピッチ、つり込みの丁寧さ、etc…。旧品の方が現行品よりも優れている場合が多いのは悲しいですね。
革靴に個体差が生まれてしまうことは避けられませんが、特にここ数年は、どのブランドもさらに個体差が大きくなっています。「これだからオンラインは・・・!」と思われるかもしれませんが、今は店頭販売でも同様です。
酷いものだとつり込みが歪んでいたり、パッとでは見えない部分の革が割れています。正直、革靴ってギャンブル性高いと思います。
ディテールが現行のストレートチップとは多少異なる
また、現行品とは全体的なステッチの掛かり方が異なります。例えば「旧ヴァーシュ」のストレートチップは、サイドから見た際のヒールカウンター部分に切り替え&ダブルステッチが掛けられています。
一方、現行品のストレートチップはヒールカウンター部分には切り替えがなく、履き口部分がダブルステッチに。現行品では、セミブローグタイプが、今回ご紹介している旧ヴァーシュとステッチの掛け方が近くなっています。
切り替え部分や革端は全てカールエッジ仕様。とてつもなく手が込んでいる製甲です。
ヒールの造形や、ソールの作り込も現行品より一層手が込んでいる
ヒール部分。この造形のレベルは、もはや既成靴ではありません。ビスポークでもこのレベルを実現することは難しいと思います。
ソールは(スタンプがありませんが)、ドイツ製のJR(ジョー・レンデンバッハ)ソール。最高級のオークバークソールですが、当時は今のレンデンバッハソール(倒産してしまいましたが)よりも更に硬質です。
また、今のヴァーシュでは見られない半カラス仕様。基本的にハーフラバーを貼りたい派ですので重視していませんが「ストレートチップには絶対にラバーを貼らない」という方もいらっしゃると思います。
半カラス仕様は、ドレッシーな感じを格上げしてくれます。ユニオンワークスなどで塗ってもらうことは簡単ですが、Uラストのシルエットとも非常にマッチしています。
撮影に使用したシューツリーは、コルドヌリ・アングレーゼ
菅原靴店 公式HPより引用
今回のストレートチップに入れているシューツリーは、コルドヌリ・アングレーゼ。シューツリー界では有名です。純正のものも保管しているのですが、こちらが気に入っているので入れています。
シューツリーは履きシワが伸ばせることが重要。あなたの足の形やシワの入り方、靴の木型によっては、もちろん純正でなくとも良いですよ。
ただ、ヴァーシュは僅か24ユーロで純正シューツリーが付属します。クオリティも高いので、個人輸入など購入の際は必ず選ぶことをオススメします。
Uラストのサイズ感は?マイサイズや他ブランドと比較してみました
ラスト | マイサイズ | つま先 | ノーズ | 足幅 | 甲の高さ | 履き口 | アーチ サポート | ウエスト |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
Fラスト | 42.5 | クラシック | ミドル | 標準 | 標準 | 標準 | 標準 | 標準 |
FBラスト | 42.5 | クラシック | セミロング | 標準 | 標準 | 標準 | やや強め | やや細め |
Uラスト | 42.5 | セミスクエア | セミロング | やや細め | 低め | やや低め | やや強め | やや細め |
Kラスト | 43 | チゼル | ロング | 細め | 低め | 標準 | 強め | 細め |
Sラスト | 43 | スクエア | とてもロング | 細め | 高め | 低め | やや弱め | かなり細め |
BPラスト | 42 | ぽってり | ショート | やや広め | 標準 | 低め | 標準 | 太め |
3636ラスト | 42 | ぽってり | ショート | 広め | やや高め | 標準 | やや弱め | 太め |
Pラスト | 42 | ラウンド | ややショート | やや広め | 標準 | 低め | やや弱め | 太め |
P2ラスト | 42 | ラウンド | ミドル | 標準 | やや低め | 低め | 標準 | やや太め |
Rラスト | 42 | ラウンド | ややショート | 標準 | やや高め | 標準 | 標準 | やや太め |
ヴァーシュのラスト毎の特徴&私のサイズ感をまとめると、このような感じになります。ぜひ、ヴァーシュ選びの参考にしていただけると幸いです。
ちなみに私の足形は、人差し指の長いギリシャ型で、踵~人差し指の先端までが27.5cm、親指までが27cmで足幅の一番長い部分が10cm。甲も足幅もサイズに対して標準的~やや細い程度で、あまり特徴がありません。
スタンスミスで27.5cm、クラークスのデザートブーツやワラビーでUK8.5(US9)、チャーチの173で85F、チーニーの137ラストで8.5、ジョンロブの7000も8.5、スコッチグレインのオデッサやインペリアルは26.0EEE、リーガルが26.5cm、その他大体の英国靴で8.5サイズです。
ガジアーノガーリングやアンソニークレバリーなど、従来の武骨さを払拭するような、スタイリッシュなラストが中心の英国靴メーカーがあります。
一方、英国靴よりもさらに武骨なイメージがある東欧靴の世界ですが、その中でもヴァーシュのUラストは、もの凄く洗練されています。
さらに、造りの面でも英国靴ブランドを凌駕するという、欲張り過ぎな一足だと思います。
極力、是々非々の精神で書いているので正直に伝えると、残念ながら現行の既成靴ブランドでは、かつてのクオリティで販売することは極めて難しくなってしまいました。
例えば、ビームス取扱い時代の「旧ボノーラ」や、ビスポークを製造していた頃の「エドワードマイヤー」、アポロ時代の「ハインリッヒ・ディンケラッカー」などと同様に、「旧ヴァーシュ」の凄まじさは際立っています。
今では、これらの靴と同じようなクオリティを既成靴で出すことは、コスト的に不可能となっています。
ジョンロブやエドワードグリーンといった有名ブランドはもちろん、これはヴァーシュにも当てはまります。
とはいえ、現行のヴァーシュも(個体差はあれ)非常に良い靴であることは間違いありません。
ヴァーシュのUラストで作られたストレートチップは、カッコいい×スタイリッシュ×ストレートチップが欲しい人に、強くオススメできる靴ですよ。
おしまい!
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