【評判】ブリドレン、脅威の一万円本格ビジネスシューズをレビュー!【靴界のユニクロ】
BRIDLEN 公式HPより引用
・定価わずか1万円(通常ライン)
・キップレザーのアッパー、レザーソール、360°マッケイ製法、丁寧な縫製と立体成形、正真正銘の本格紳士靴
・他の1万円ビジネスシューズとの違いを、具体的に比較する
こんにちは、しょるです。
今日は、ブリドレン(BRIDLEN)という、オンライン販売専門のシューズブランドの紹介記事です。
↑公式HPはこちらから(英語)
この靴ブランド、本当にすごい。
何がすごいかって、本格的紳士靴で見た目もカッコいいのに、なんと定価たったの1万円。
しかも、公式HPの他にヤフオク!でも販売されており、1円スタートで大体6,000〜9,000円程度で落札できるみたいです。つまり、実質もっと安い。
↑で、「ブリドレン」と入力すると、公式ショップが販売しています
デザイナー(兼靴マニア)として、沢山の靴を見てきた私ですが、ブリドレンを最初に見て触れたとき、本当に驚きました。確かに、5万円クラスの靴と互角とまでは言えません。
それでも、1万円でこのクオリティは、あまりにも凄すぎると思いました。
ファッションに興味がありつつも、“普段使いの靴は、ほどほどで良い”という方、多いですよね。また、普段はスーツを着ないけれど、冠婚葬祭など、急用で靴が必要になったりしませんか??
そして、同じ予算を掛けるならば、見栄えする物の方が良い。そう思いませんか?
手軽におしゃれを楽しみたい人、お金がない学生さんだけど、入学式やバイト、就活、卒業式などで、ちゃんとした靴を履きたい人。
今日は、そんな皆様のための記事です😌
このブリドレン、展開が始まってから約10年が経過しており、そこそこ年月が経っています。その割に知名度が高くないのは、ネット販売オンリー&あまり広告が打たれていないからだと思います。
だからこそ、私が購入してレビューしてみました。
SHOLLWORKSをご覧いただいている皆様だけに、お教えしちゃいます。普段同じくらいの価格帯の靴を履いている、パートナーをカッコよくするプレゼントとしても、悪くないですよ!
はじめに:ビジネスシューズは、ちゃんとした物を選んだ方が良いという事実 ・3万円台を中心に、どこへ行っても恥ずかしくない靴 ・色は黒、ストレートチップやプレーントゥなど、シンプルなものを中心に ・ベーシックなグレードか[…]
今回の主役:ブリドレン(BRIDLEN)パンチドキャップトウ
BRIDLEN 公式HPより引用
今回の主役は、パンチドキャップトウのシューズ。
ブリドレンのエッセンシャルコレクションから、ピックアップしました。上位ラインは30,000円を超えますが、こちらがスタンダードラインのようです。
公式HPの販売価格、なんと10,500円程度。
(その日の為替で若干の変動あり)
ちょっと安すぎませんか?
このブリドレン、シンプルなラウンドトウで足幅も狭すぎずと、見た目はいたってオーソドックスです。そして、土踏まずからソール前方に掛けての突き上げ感が凄い。高級紳士靴で味わえるような感覚を、10,000円の靴でも味わえるとは思いませんでした。
BRIDLEN 公式HPより引用
実際に届いた商品は箱は真っ白で味気なく、ツリーなどの付属品もありません。
しかし、中身は立体的な造形が非常に美しく、とても10,000円の靴には見えません。トウがすこーし磨かれていますが、この状態で届きました。
ちなみに、パンチドキャップトウとは、ストレートチップ(キャップトウ)のつま先のキャップ部分にのみ、穴飾りがついているものを指します。
ほぼストレートチップと同じフォーマル度で、無地のダークスーツと合わせて結婚式にも行けます。
プレーントゥよりプレーントウだし、なんならプレーントーだと思うんだけど、なぜこうなった感がすごい。
— SHOLL (@SHOLLWORKS) January 15, 2021
(toe→つま先)
外来語由来の日本語は面白いけれど、プレーントゥって冷静に読み上げれば読み上げるほど、結構めちゃくちゃだと思う。何より、粋も何も感じさせない。
また、サイズ感は、多くの方がネットで購入される際に気になるのではと思います。
私の場合ですが、ブリドレンはUK9(27cm)でジャストです。私は特徴があまりないギリシャ型(人差し指が一番長い形)の足で、足の長さ(踵~人差し指)なら27.5cm、親指までなら、27cmジャストくらい。親指~小指の付け根の幅が10cm。
スタンスミスで27.5、スコッチグレインが27.0、クラークスのデザートブーツでUK8.5(US9)、チャーチは85F、チーニーはUK8.5サイズを履くことが多いです。ドクターマーチンは、UK9だとやや緩いけれど、UK8だと結構きついといった感じです。
実際に履いてみました。
内羽根の靴(靴ひもを通すパーツ=羽根が、甲部分の内側についている靴)は、写真のように羽根が1cm程、開くくらいがちょうど良い。
この羽根が閉じきっていたり、逆に開き過ぎていたりすると、ちょっとカッコ悪い。この部分のフィッティングは重視したいところです。
(メーカー名はテープで隠しています)
普通、一万円のビジネスシューズといえば、
「合皮かガラス革で、見た目も平面的。縫製も粗く、本体とソールを接着剤のみで圧着している。パッと見で、すぐに廉価なものと分かる」
靴です。つまり、写真のような靴ですね。
今回は、こちらの靴を同価格帯の比較靴として、ブリドレンと比較してみます。
とはいえ、10,000円なら全然おかしくありません。
しかし、残念ながら現在は、その2、3倍する”ブランド品”ですら、このレベルの靴が増えました。
私は、日本の産業維持の為にも“ブランド料”に関しては肯定的な立場です。しかし、流石に「どんな廉価な素材でも良い」とまでは思いません。(どことは言いませんが)20,000円、30,000円する有名DCブランドの中にも、“ヤバい”ものは沢山あります🙄
そして、それらは平面的な成形だから、どうしてもカッコ悪い。ビジネスシューズのカッコよさは、立体感で決まります。ブランド料が乗っているのにカッコ悪いくらいなら、こちらのブリドレン、検討してみてはいかがでしょうか。
ブリドレンの安さの理由:生産地と人件費、仕入れのコストカット
1番の理由は、やはり生産国の人件費でしょう。加えて、ブリドレンはインドのアファンシューズという企業が展開する、ファクトリーブランドです。
ファクトリーブランドとは、専門的な技術力を活かした工場が、(取引先ブランドのデザイン力を吸収し)新たにブランドを立ち上げたものを指します。デザイナーズブランドよりも人件費や広告費が抑えめな分、品質的なコストパフォーマンスが高いことが特徴。
特に、人件費の安い途上国のメーカーは、高いコストパフォーマンスを誇ります。技術力とコストパフォーマンスが合わさった場合、とても太刀打ちできません。インドの一人当たり名目GDPは、2020年時点で中国の約1/5、日本の約1/20です。一指標に過ぎませんが、その分、安く作れる訳です。
また、革製品を作るメーカーは、革素材をタンナーから購入するのが基本です。一方、ブリドレンはフランスやオランダから、原皮そのものを大量に購入し、現地のタンナーに鞣させているそう。革素材そのものまで”インド製”であれば、原価は更に安くなるというカラクリです。
靴のデザイン力:超有名ブランドの、アセンブリー生産を担当していた
BRIDLEN 公式HPより引用
デザイン面でも、かなり優秀。
これが30,000円なら分かります。しかし、忖度なしで10,000円には見えません。
いくら、ファクトリーブランドが安く品質の高いものを作れると言えど、見た目がカッコよくなかったら欲しくなりませんよね。実際、そういったファクトリーも沢山ありますし、ファッションは見た目も品質も、どちらも大事だと思います。
その点、ブリドレンがカッコいいのは、理由があります。超有名ブランドの靴の、途中工程(アッパー制作)を担当していた実績があるからです。
母体となる企業のアファンシューズ。ここは、有名な英国靴ブランドのアセンブリー生産(工程途中まで組み立て)を担っていました。それも、ちょっとやそっとのブランドではありません。
“ジョンL”です。
「え??」って感じですよね。
私も、目と耳を疑いました。
靴に詳しくない方に説明すると、日本では廉価ラインの既成靴ですら20万円くらいする、超有名”英国製”ブランドです。高級紳士靴を取り上げる雑誌でも、大体最初に出てきます。
ブログ内で、あくまで“ジョンLさん”と書かれているので私も伏せますが、写真はどう見てもエ◯メス傘下の最高級英国紳士靴ブランドの、ウィリ◯ムやフィリ◯プのアッパー部分にしか見えません。
ファッションに限らずですが、製品に表記される“MADE IN 〇〇”は、完成させた国を記載します。
だからこそ、「製造の大半を途上国で行い、仕上げ段階で運んで完成させイタリア製とする」などよくある話です。こういった行為は、皆様ご存知のハイブランドで横行しています。
確かに、”ジョンLさん”の既成靴は機械縫いですし、インドと英国の歴史的な繋がりを鑑みても、全然不思議なことではありません。つり込みからのソール付けをイギリスで行えば、“英国製”ですから。
私は製品さえ良ければ、産地はどこでも良い派ですが、現に産地もブランドになっていますよね。だからこそ、この事実にはショックを受ける方も、いらっしゃると思います。
もし、あなたが高級紳士靴を購入されるなら、こういった背景も飲める上で、愛用すると良いと思います。個人的には、原料、工程、仕上げ等、ちゃんと書いてくれても良いと思いますが・・・。そうでなければ、生産国表記など意味がないですからね😌
少々、話が脱線しましたが、ブリドレンはそういった蓄積もあり、インドのシューメーカーとしては卓越した製造技術と蓄積がある訳です。
技術力を活かし、ブリドレンのシューズは立体的な木型の上で縫製されます。結果、非常に立体的な靴が出来上がり、とても本格的なカッコいいシューズを、安価で生み出しているのですね。
評判のブリドレンの靴を、詳細レビュー!
アッパー→タンニン鞣しのキップレザー
まず、靴の中で最も目立つアッパーの革質から。
革質は概ね、キメの細かさ、傷や血筋、毛穴の有無、部位ごとのムラの少なさなどで、グレードが決められています。
極論、人間の皮膚と一緒です。
ちょっと残酷な、現実をお話します。
私のような成人男性の革はグレードが低く、美容化粧品のCMなどで言われている”赤ちゃん肌”のような若い女性が高級品種、リアル赤ちゃんの「革」が、最高級品種とされているのですね。
また、革は、食文化とリンクしています。フランスにはエルメスやシャネル、ルイヴィトンといった世界的ブランドがありますが、それらをはじめ、ハイブランドの革製品は、(一部の例外を除き)仔牛を使用しています。端的に言えば、フランスに仔牛の食文化があるために、流用して使用できる。
一方、日本では欧州先進国や米国と比べ、そこまで牛肉の消費量が多くありません。ましてや、仔牛を食べる機会なんてそうないですよね。牛肉同様、革もほとんどが輸入品ですから、コストが掛かります。(同価格帯であれば)国産靴よりも欧州産のプロダクトの方が、総じて革のグレードは高い傾向にあります。
食肉文化の旺盛な、フランスやオランダから原皮を輸入しているブリドレンに使用されている革は、1万円の靴の中では非常に良い部類といえます。まさしく、“靴界のユニクロ”です。
日本ではキップレザーと呼ばれる革で、およそ生後2年までの牛革を使用しています。繊細な仔牛革(カーフレザー)よりはキメは荒いが、その分耐久性に優れます。一方、生後2年以上が経過した成牛の革よりもキメが細かく、トータルバランスの良い素材ですね。
ブリドレンの革は、ベジタブルタンニンなめしという、植物の渋みを利用した鞣し工程が行われています。エジプト文明から存在する方法で、一般的にはミモザの樹のタンニンが使用され、数か月間という長い期間を掛けて鞣されます。
現在は一般的に、塩基性硫酸クロムを利用したクロムなめしが主流です。こちらは1858年、ドイツで発明されました。クロム鞣しの方がコストが抑えられ、また品質安定度も高い。鞣し工程も一日で完了します。
一方、タンニンなめしの方がより環境負荷度が低く、経年とともに奥行き深い色艶が得られます。近年では、どちらの特性も活かした革製品を作るため、タンニン鞣しとクロム鞣しを両方行う、コンビ鞣しの革を使用するメーカーも増えました。
また、この革は仕上げの段階で、手染めによる染色がされています。
染料は文字通り、革に”染み込む”ので、透明感ある表情は、手入れをすることで奥深い表情になってくれます。“真っ黒”という感じではなく、水彩絵の具のような感じのカラーリングが、10,000円の靴であることを感じさせません。
確かに、革質自体が、ビジネスシューズの記事で取り上げたジャランスリワヤや、ロイドフットウェアに使用されているものなどと互角のグレードとは言えません。しかし、これが30,000円の国産靴に使用されていても、全く驚かないレベルです。
一方の比較靴は、合成皮革です。軽量で水にも強いのですが、のっぺりとした真っ黒で革の表情に乏しく、数年でボロボロと加水分解したり、足に馴染まず擦過し易かったりするところが欠点。どうしても、見た目の高級感や履き心地には劣ります。
天然皮革の方が環境負荷も大きいと言われ、また、(食用牛の流用とはいえ)命をもらう産業であるため、センシティブな問題ではあります。
どちらにも良い点と悪い点がありますが、少なくともカッコよさや履き心地の良さで言えば、合皮はまだまだ、本革に及ばないのが現状です。個人的には、技術革新によるブレイクスルーを期待していますけれども!
確かにここ10年くらいの合皮の進化はなかなか凄いのですが、本革を使用した靴を、滅多にお目にかかれなくなる日がくるのでしょうか。
— SHOLL (@SHOLLWORKS) December 17, 2020
フェイクファーはエコファーに、合皮はエコレザーやサスティナブルレザーに。言いようは価値観の表れでもありますね。
ドクターマーチンの“ヴィーガンレザー”を試してみたレビュー記事(執筆中)
360°マッケイ製法と&本格レザーソール
靴は、アッパーとソールを接合する製法によっても、大きくコストが異なります。
製法は多用に存在するのですが、有名なものを列挙するなら、
セメンテッド製法
マッケイ製法
グッドイヤー・ウェルテッド製法
ハンドソーン・ウェルテッド製法
の4つではないでしょうか。
掛かるコストは概ね、
セメンテッド製法<マッケイ製法<グッドイヤー製法<ハンドソーン製法
といった感じです。マッケイとグッドイヤーの中間のようなブラックラピド製法や、ノルヴィージャンウェルテッド製法なども、よく見かけます。
MADRAS 公式HPより引用
ブリドレンの10,000円前後のラインは、マッケイ製法を採用しています。むちゃくちゃザックリとお話しすると、足を包むアッパーと中底、ソールを太い糸で直接縫い付ける製法です。写真の白い糸が、マッケイ縫いです。イタリア・マルケ地方にて、(奇しくもクロム鞣しと同年の)1858年に発明されました。
マッケイ製法の良いところは、直接縫い付けることでソールの返りが良く、軽く仕上がることです。一般的には、セメンテッド製法以上、グッドイヤー製法未満の価格帯の靴に採用されますが、ブランドによっては高級品でも使用されます。その他、回数に限度はありますが、ソールの交換修理にも対応。
更に、ブリドレンは360°マッケイ製法と称して、マッケイ縫いをヒール部分にまで一周して行なっています。普通のマッケイ製法はソールの前方だけを縫い付け、土踏まず〜踵部分に掛けては接着といった方法が採用されますが、手間が掛けられています。
通常、マッケイ製法(&ブラックラピド製法)は、靴の中底にステッチが表れています。ブリドレンの場合、中敷きを一枚敷いているため、この糸が隠れていますが、めくると現れます。
マッケイ縫いの中ではとてもステッチが細かく、丁寧ですね。胴元のスポンジの下部分にもマッケイ縫いが通っています。
コバ部分にも、ステッチが掛けられています。出し縫いといって、ここは本来、マッケイ製法の靴には必要がないステッチです。イミテーションを兼ねていると思いますが、この出し縫いによってグッドイヤー・ウェルテッド製法のように見えます。
マッケイ製法を採用しつつも、グッドイヤー製法の靴ような特徴を持たせた靴ですね。10,000円の靴で、ここまでやっていることに関心します。
(レザーソールを採用。通気性と高級感に優れます)
この価格で、なんとレザーソールが採用されています。形状もかなり土踏まず部分が絞られており、アーチを描いています。内振りもキチンとされており、ホールド感が高い。
ソール裏は、(通常のマッケイ製法の靴と同じく)中底と繋がるステッチが。ステッチの間隔は、グッドイヤー製法のように細かくしてしまうと耐久性が定価してしまうので、いた仕方ないところ。革も製法も水には弱いので、防水スプレーとビブラムハーフを張った方が良いと思います。
ちなみに、マッケイ縫いの方のステッチではなく、出し縫いのステッチがソール裏に表れているものが、ブラックラピド製法です。内部もちょうど、グッドイヤーとマッケイの中間のような構造になっています。
ROCKPORT 公式HPより引用
(比較している靴を含め)廉価な靴は主に、セメンテッド製法が採用されます。強力な接着剤を用い、熱活性によって接着する製法です。
簡易的な製法でコストは低いのですが、こちらにもメリットはあります。接着剤によって圧着するため水に強く、糸なども使用しないため軽量に仕上がります。
ただし、ソールの修理が困難な点と、通気性が悪い点が気になるところ。更に、アッパーが合皮だと余計に靴の中の水分が逃げないので、特に連日履くのはオススメできません。ちなみに、「セメンテッド製法はソール交換ができない」という誤情報が出回っていますが、実際は出来ます。
(耐久性も耐滑性も優れる合成ソール)
また、こちらのシューズには、合成底という、合成ゴムを使用したソールが採用されています。レザーソールと比べ滑りにくく、耐摩耗性にも優れます。消耗しやすい地面や、雨の日に使用するには悪くない。
ただ、合成底は加水分解と言って、空気中の水分によって経年劣化するものが大半です。近年では耐候性に優れた素材や、通気性まで考えられているものもありますが、コストの問題などで、まだまだ普及しきれていない現状もあります。
合成底は、機能面ではかなり優秀ですが、どうしても見た目の高級感には欠けます。個人的には、半カラスのレザーソールにビブラムを張ったものなどが、バランスが良くて好きです。
(比較靴のコバ。イミテーションステッチ?)
マッケイやセメンテッド製法の靴は、グッドイヤーやハンドソーン・ウェルテッド製法と異なり、コバを張り出さずに作ることは出来ます(接着したり、靴の内側で縫い合わせるので)。
ただ、コバにはアッパーの革を守るという重要な役割もあるので、結局コバが張り出していないと、アッパーの革に傷が入ってしまいます。そういった機能的な部分も含め、グッドイヤーの方が格上感があります。
そんな訳で、製法に関わらずコバは重要な役目を果たしています。この出し縫いステッチ風のイミテーションは、流石に要らないと思いますが・・・。
圧倒的立体感と、細かな縫製
革や製法に関しては、あらゆるシチュエーションで機能的に優れるものはありません。最も大きな差と感じたのは見た目。靴のカッコよさを、大きく左右する立体感です。ブリドレンがたったの1万円で、この形状をしているというのが、ただただ驚きです。
① 踵の大きさについて→優秀過ぎる成形、高級紳士靴にも全く劣らない
踵が小さい。とても小さい。
靴の中でも、踵のフィッティングはとても重要です。特にアジア系は踵が“絶壁”になっている人が多く、ヒールの大きな靴を履いてしまうと、踵がカパカパしてしまう人が特に多い。英国靴だからって踵が大きいものを履くくらいなら、きちんとフィット感のあるものを選んだ方が良いと思います。
そして、踵は成形が難しい部分です。個人差や程度問題はあるものの、基本的には踵の作りが小さい既成靴ほど、構造面では優秀と言えます。平面的な革を木型に入れて時間をかけて沿わせ、つり込む。かなりの手間とコストを掛けないと、足型に合ったヒールカップが出来上がりません。
踵の形状が、違い過ぎる。
比較靴があり得ない!というよりも、ブリドレンがこの形状をしていることが異常です。
比較靴は、踵で十分にホールド出来ないので、(欠点を補うために)紐で縛る甲部分が上まで来ていますよね。履き口を狭くして、紐でがっちり縛って脱げないようにしています。
脱ぎ履きが面倒で大き目を選び、更に合皮&踵の大きい靴を履けば、開帳足や外反母趾、タコ、靴擦れの原因になります。実際、足のトラブルの多くは、大き目(≒踵の大きい靴)のサイズ選びが原因です。
踵をホールド出来ないと、人はつま先から突撃するようになり、足を運ぶ際には引きずる歩き方になります。これは姿勢を悪くする上に、肩こり、腰痛の原因にもなります。
また、このブリドレン。例えばジャランスリワヤ(写真右)と比べてもいい勝負。
こちらのロングウイングチップは、定価37,400円です。インドネシア製のコストパフォーマンスが高いブランドと比べても、ご覧の通りです。
ジャランスリワヤの方がアッパーのグレードが高く、製法も360°グッドイヤー製法で作り上げられていることもあり、総合的には軍配が上がりそうですが、10,000円の靴があまり見劣りしないことに驚きです。
② ツイステッドラスト(風)!
(靴紐の横、足の外側がキッチリとくびれています)
ここの成形も、素晴らしい。
人間の脚は、足首に対して直下しておらず、外側から内側に向かって湾曲し、足へと繋がっています。くるぶしも、外側が内側よりも位置が低いですよね。
靴も、立体成形によって履き口部分の外側がくびれ、人間の足に対して面で包み込む形状が理想です。踵の小ささと同様に、この部分の成形も実に大したものだと思いました。
ツイステッド(ねじれた)ラストといって、既成靴の中でもヴォーシュやステファノベーメルといった一部のブランドや、ビスポーク(注文靴)であれば、もっと攻めることが出来る部分です。しかし、革質こそ違うものの、C&JやジョンLさんですら、これと同程度ですので、かなりレベルが高いと言えます。
(上の写真と比べると、全然くびれていない)
比較靴は、殆どされていません。流石に微妙に外側がくびれてはいるのですが、本当に微妙にですよね。というより、されていることがおかしい。
合皮は曲げることも難しく、そもそも足に馴染まないので、履き口の狭さと紐で締め付けるしかありません。踵の項でも述べましたが、低予算の靴は単に見た目だけの問題だけではなく、健康にも関係するトピックです。注意した方が良いかもしれません。
③ 縫製の細かさにも、圧倒的な差が
(ご覧の通りの縫製ピッチの差です)
一応、比較靴は“日本製”なのですが、日本製であれば、何でも良い訳ではありません。
同様に「イタリア製だから高品質」というのも幻想で、私自身、担当ブランドで散々経験しました。ただ、イタリア製には、「これには訳がある!」と言い聞かせられるくらい、ブランド力がありますよね。
そんな訳ないですよ。
目の前の現実を受け入れて下さい。
ブランディングを尊重しつつも、一方でキチンとした目を向ける必要はあります。
もちろん、ブランディングビジネスは今後、一層重要になると私は思っています。分かった上で、選択出来れば良いのではないでしょうか。
まとめ:ブリドレン【BRIDLEN】は「コスパ」を求める人にとって、買いのメーカーです
・とにかくコスパ重視で行きたい!
・ナメられない靴は履きたいけど、正直そこまでファッションに興味ない
・靴好きだけど、普段から5万も10万もする靴は履きたくない
いかがでしたでしょうか。
特に、上記に当てはまる方は、絶対に買いです。
とにかく1万円のビジネスシューズ界で、断トツでカッコいい。
ここまでやるかという程に立体的で、形状が完全に高級紳士靴です。
4、5万円の靴との差は、やはり革質です。左右差も若干あるようですし、革のバリのようなものも見られます。そして、どうしてもタンニン鞣しの革&マッケイ製法ということで、雨に弱めです(大体の革靴は雨に弱いですけどね)。
とはいえ、履き潰すには気にならないレベルだとも思います。雨対策にはビブラムハーフを張り、防水スプレーを使用すると、かなりバランスの良い靴になるんじゃないかなと思います。
Amazonで販売しているビブラムラバーを自分で張ってみた!記事(執筆中)
ちなみに、ブリドレンには上級ラインとして、360°グッドイヤー・ウェルテッド製法の上級ラインの“Bespoke Grade”、さらに、レンデンバッハソール&名タンナーのカーフレザーを使用した、最上級ラインの“Founders Collection”もあります。
定価はそれぞれ、30,000円前後と35,000円前後。
ソールの底付けを日本で行うらしく、価格も大分高くなりますが、1万円のスタンダードラインでこの出来ならば、こちらにも相当期待が出来ますね!折を見てレビューします。
それでは、次回の記事でまたお会いしましょう。
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